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第50話 3人でお茶することになってしまいました

そういうアレイダは顔は笑っていたけれど、目は笑っていなかった。それに、アレイダの眉が怒りでピクピク震えているんだけど。一瞬私に向けられたその顔には後で覚えていなさいよって書かれていた。

そう、思わず、私が後ずさりしたくなるほどの怒りを感じていた。


でも、文句は私を強引に誘ったフェルディナントに言ってほしい。私は乗り気で無かったのだ。なのに、強引にフェルディナントが誘ってきたのだ。それに、私には白い騎士様がいるのだ。とても迷惑なんだけど……


もつとも父やサーヤは全然そうは思っていないみたいだけれど……


私はフェルディナントがどう出るかお手並み拝見としたのだ。


「どういうことですの? フェルディナント様。私には忙しいからカフェに行く時間が無いとおっしゃりながら、カーラ様をお誘いする暇があるなんて」

アレイダの目が釣り上がってきた。


「いやあ、アレイダ嬢。嫌だな。少し宜しいですか?」

そう言って、フェルディナントはアレイダを強引に外に連れ出したのだ。


ええええ! どういうこと?


「わんわん」

怒ったころちゃんが吠えだした。

これは様子を探るしか無い。


「しぃぃぃぃ」

私はころちゃんに指を当てると、ころちゃんは判ってくれたみたいで、静かにしてくれた。


そのまま、ころちゃんを抱っこしてそっと扉の陰から外をうかがうと声が聞こえてきた。


「アレイダ嬢。私にも立場という物があるのです。父からは、アレイダ嬢を大切にするようにと言われておりますが、王家も蔑ろにしてはいけないと釘を刺されているのですよ」

言い訳するフェルディナントの声が聞こえてきた。


「それは、私では無くてカーラ様を連れてこのカフェに来る理由にはなりませんわ」

私はアレイダの声に大いに頷いたのだ。


「それは当然ですよ。ただ、カーラ様と話している間にたまたまこのカフェのことが出ましてね。行ってみたいといわれては断れなかったんですよ」

なんてことをフェルディナントは言うのだ。

私は一言も行きたいなんて言っていない。

言い出したのはフェルディナントだ。

私は完全に頭にきて飛び出そうとしたのだ。

「くうううう」

でも、その私の前にころちゃんが首を振ってくれたのだ。


そうだ。ここで、私とフェルディナントの二人の間を完全にご破算にしてしまうと、お父様とサーヤは悲しむかもしれない。ここは黙っていようと私は思った。


「だから、アレイダ嬢はここは機嫌を直して。また、アレイダ嬢には機会を作って来ますから、今日はお引き取りください」

フエルディナントの言葉が聞こえた。

「まあ、何をおっしゃっていらっしゃいますの。未来の婚約者がお困りなんですもの。私もご一緒いたしますわ」

アレイダが言い出したのだ。


「えつ、いや、アレイダ嬢!」

「何か問題がございまして。男と女が二人で個室に籠もるのはよろしくありませんのよ」

「いや、アレイダ嬢、中には私の護衛もおりますし……そうだ。アレイダ嬢はカーラ様のペットの犬ががお嫌いでしょう。そう、そのペットがいるのです」

フェルディナントは必死にアレイダを追い返そうとしていた。

「何をおっしゃいますの。愛しのフエルディナント様がお困りなんですもの。私も犬くらい我慢いたしますわ」

そう言うと、アレイダは強引に扉を開けて入ってきたのだ。


その前に私は慌てて椅子に戻っていた。


「カーラ様。失礼いたしましたわ。そこのあなた。私の椅子を持ってきて」

店員にフェルディナントの横に椅子を持ってこさせると、平然とカーラは座ってくれたのだ。


「フェルディナント様。お二人の邪魔はしたくありませんから、今日は帰らせてもらった方が……」

私が言い出したんだけど、


「何をおっしゃるのです。今日はカーラ様とアレイダ嬢という、モルガン王国のなかでも、お美しいと評判のお二人と席を共に出来るなんて、サウス帝国の皇子としてこれほど嬉しいことはございません。今日の事は必ず、父に報告させていただきます」

そういう風に言われると、私としても席を立つ訳にも行かなくなった。


「まあ、陛下にご報告して頂けるの? 出来たらサウス帝国の皇帝陛下にも一度お目にかかりたいと存じ上げますわ」

いきなりアレイダが、挨拶させろとねだり始めた。


「まあ、さすがに、父にこの国に来るようにとは申せませんからね。我が帝国にお越し頂ける時は是非に」

フェルディナントが誤魔化そうとしたが、

「そうなのですね。私はいつでも、サウス帝国へお邪魔するのはやぶさかではございませんわ。出来たらフェルディナント様とご一緒頂けたらこれほど嬉しいことはないんですけれど」

猛烈にアレイダはフェルディナントにアピールしているんだけど。


「そうですね。カーラ様もいらっしゃいますか?」

「いえ、私はこの国を離れることは中々父が許してくれないと思いますわ」

私はどっちつかずのフェルディナントにむっとしていたので、そう言ってやったのだ。


「なるほど。お父上の許可が得られたら、お越しいただけるのですね」

フェルディナントが自分に都合の良いように解釈してくれたんだけど……


そんなことよりも、私にするかアレイダにするかはっきりしてほしいと私は思ってしまったのだ。




























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