私は夢を見ていた。
王宮でころちゃんを追いかけている夢だ。
「わんわん!」
ころちゃんが吠えながら駆けていく。
「ころちゃん、待って!」
私がその後を追いかけた。
「わんわん」
ころちゃんが走って行くが、私が見失いそうになると、止まってこちらを見て吠えてくれるのだ。
「ちょっと、待ってよ、ころちゃん!」
私はそのまま座り込みそうになるのを鞭打って駆けだした。
「わんわん」
ころちゃんが吠えながら走る。
「ようし、捕まえるわよ!」
私が更にスピードを上げて追いかけると、ころちゃんまもスピードを上げてくれるんだけど……
「ちょっと待って、ころちゃん!」
私が叫ぶも、ころちゃんはどんどん先に走って行った。
角を曲がって走って行くころちゃんを追いかけようとしたら、いきなりガマガエルが横の草むらから飛び出してきたのだ。
「キャーーーー」
私が悲鳴を上げた時だ。
私の前に白い騎士様が現れてくれたのだ。
「良かった」
私は思いっきり白い騎士様に抱きついた。
「何をしている? カーラ!」
しかし、白い騎士様はなんと、私を引き離してくれたのだ。そして、私を非難する目で見てくれた。
私はそんな風にされるなんて想像だにしていなかった。
「何をしているって?」
「早く、逃げろ! 私は宰相が反乱を起こすと言っただろうが!」
そうだった、白い騎士様が伝言を残してくれたのだ。
「でも、それはお父様達が」
「早く逃げろ! 時間がないぞ!」
白い騎士様はそう言うと私からどんどん離れていった。
「騎士様、待って!」
私は自分の大声ではっとして目を覚ましたのだ。
「ここは……」
私は自分のベッドに寝ているのを知った。
何故ベッドで寝ているんだろう?
「お気づきになられましたか?」
サーヤが顔を出してきた。
「サーヤ。私はどうしたの?」
「カーラ様は気を失ってしまわれたのです」
サーヤが説明してくれた。
「気を失ったの?」
私はサーヤの言葉に何故失ったのかと考えて
「あっ!」
ガマガエルに驚いて気を失ったのを思い出した。
「カエルは?」
私は慌てた。
「大丈夫でございますよ。姫様。この部屋にはおりませんから」
サーヤが言ってくれたけれど、
「でも、どこにいるのか判らないじゃない」
私は慌てて周りを見回した。
「大丈夫ですよ。姫様。兵士達が探してもいませんでしたから」
サーヤが笑って言ってくれた。
その言葉に私はほっとしたが、ほっとしたついでに白い騎士様の伝言を思い出していた。
私は気になっていたので、サーヤに夢の話をしたのだ。
「なるほど、姫様の夢に白い騎士様が出てこられたのですね」
「そうなのよ。サーヤ。だから私は心配で」
私がそう話すと、サーヤは少し思案していたが、
「陛下からは姫様が心配されるといけないから黙っているように言われていたんですが、いよいよ宰相の反乱が近付いてきたみたいですよ」
「えっ?」
私はサーヤの言葉に驚いた。
何でも、現れたガマガエルは手紙を持って来たみたいで、宰相の反乱を知らせる物だったらしい。
サーヤによると慌てて騎士団長が兵士達を集めて出撃していったそうだ。
夢はこのことを暗示していたのだろうか?
でも、白い騎士様はすぐに逃げろと言っていた。
「サーヤ。お父様は執務室にいらつしゃるの?」
私は思わずサーヤに聞いていた。
「そうですが、お忙しいと思いますよ」
「気になるからお伺いしたい旨を伝えてくれる」
「お会いいただけるかどうかは判りませんよ」
「何か胸騒ぎがするのよ」
私がそう話すと、
「判りました。陛下にお伺いしてみます」
そう言ってサーヤは出ていった。
私は何か不吉なことが起こるような気がしたのだ。
そして、いても立ってもいられなかった。
「レイ!」
私は扉を守っているレイを呼び出したのだ。
「いかがされました?」
レイがすぐに入ってきてくれた。
「少し胸騒ぎがするの? すぐにお父様のところに行くから案内してくれる?」
「しかし、姫様。今サーヤが聞きに言ったところですし、帰って来るまで待たれたらいかがですか?」
レイがそう説得してくれたが、私はここにじっと座っていられなかった。
「護衛の騎士を連れてお父様のところに行くわ。待っている時間がもったいないの」
私はそう言うと立ち上ったのだ。
「姫様、しばしお待ちください」
レイがそう言うと部屋を出て行った。
私はレイが何をしてに行ったか、よく判らなかった。
私はすぐにお父様のところに行きたいのだ。
仕方なしに、私は外に出ようと廊下に面した扉を開けた。
「姫様。今出られてはいけません」
そう言うや、武装したレイ達に部屋の中に追い返されたのだ。
「何故、お父様のところに行けないの?」
むっとして私が聞くと、
「今陛下は執務室で指揮を執っていらっしゃいます。そんなところに行くべきではないでしょう」
レイは平然と言ってくれたが、何か変だ。
「これは命令です。直ちにお父様のところに案内しなさい」
私は思わず叫んでいた。
「姫様。手荒なことはしたくなかったんですが」
そう言うと、驚いたことにレイが剣を抜いて私に突きつけてきたのだ。
私は驚きのあまり固まってしまった。