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第78話 近衞騎士の裏切りにあって捕まってしまいました

「れ、レイ! 何をするの?」

私は私の護衛騎士が剣を私に突きつけてきて目を見開いた。


「大人しくしていれば、何も命まで取ろうとはしませんよ」

レイは私に向かって笑ってくれた。


「姫様に向かって何をしているんだ!」

レイの後ろにいた騎士が慌ててレイを止めようとして、


ドンッ

「うっ!」

その後ろにいたフェビアンに頭を剣で殴られて倒れていた。


「さあ、姫様も大人しくしてもらいましょうか」

私はレイの言葉に逆らうすべをなくしていた。

私はレイに後ろ手に縛られてしまったのだ。私の横にもう一人の騎士も後ろ手に縛られて転がされていた。


「こんな事をして良いと思っているの? すぐにお父様等に知れて捕まるわよ」

私がレイに向かって忠告すると、

「そうはならないんじゃないですか」

レイがうそぶいてくれた。


「おい、レイ、せっかく姫様を捕まえられたんだ。俺達で先に楽しんでしもうぜ」

私はいやらしい笑みを浮かべるフェビアンの言葉に怖気を感じた。

「馬鹿言うな! 今は反乱が成功するかどうかの瀬戸際だぞ。全てが終わるまでは軽々しく動くな」

レイがフェビアンに釘を刺してくれて、私はほっとした。


でも、反乱が成功するかどうかの瀬戸際ってどういうことなんだろう?

私はとても不安になった。


「姫様。そんな心配そうな顔をしなくても、あなたはここにいれば安全ですよ。宰相閣下もあなたの命までは奪おうとしないでしょう」

「何を言っているのよ。今頃宰相の所には今騎士団が踏み込んでいるはずだわ」

私が言い張ると、レイとフェビアンは笑ってくれたのだ。


「宰相閣下には、騎士団が向かうことはすぐに連絡してありますよ。今頃、それを避けてこちらに向かっているはずですよ」

「えっ、貴方たちが裏切ったというの?」

私が非難する目でレイを見ると、

「何を言っているんですか! 俺達以外にも、宰相に心を寄せている人間はこの王宮にも沢山いますよ。騎士団の内部にもいるんじゃないですか? 俺達みたいにね」

そう言うとレイはまた笑ってくれたのだ。


「姫様が素直にベンヤミン様の婚約者になってくれたら、こんなことしなくて済んだんでしょうが」

レイが先月の話をしてくれた。

「まあ、あのガマガエルに抱かれるのは嫌だよな。代わりに俺達が抱いてやろうか?」

私に向かって来ようとするフェビアンを

「いい加減にしろ! 閣下がどういう判断を下されるかまてだ判らない。下手に機嫌を損ねられて処刑されるのはお前も嫌だろう」

レイが止めてくれた。


「まあ、そうだけどよ。閣下は姫の命はどうでも良いって言われたんだろう?」

「貴族の考えはコロコロ変わる。その時に切り捨てられるのは俺達だぞ。生き残りたかったら余計な事はせずに大人しくしていろ」

フェビアンに、レイがちゅういしてくれた。


私は取りあえず、自分の操が守られたのは判ったが、このままでは駄目だ。

すぐにお父様に知らせないと。でないとお父様が殺されてしまう。

騎士団が宰相邸に向かっているのなら、兵達はほとんど残っていないはずだ。兵士達がほとんどいない状況で王宮を攻められたら絶対に持ちこたえられない。騎士団をすぐにこちらに引き返させないと。

でも、どうやって、お父様に連絡を取ろう?

取りあえず、サーヤが帰ってきた時だ。お父様がすぐに来るようにと言ってくれて私達が行かなければ気にして兵をこちらに差し向けてくれるはずだ。

そうか、サーヤが騎士か兵士と一緒に帰ってきてくれたら、まだやりようがあるが、サーヤ1人では難しい。レイもフェビアンも近衞騎士で結構腕が立つはずだ。


「レイ、お願い。今ならまだ間に合うわ。こんな事は止めて降伏して」

私は声を上げたのだ。

声を出していたら、帰ってきたサーヤが気付いてお父様のところに戻ってくれたら、なんとかなるかもしれない。


「ふんっ、今更、何を言っても遅いですよ」

呆れたようにレイが言ってくれた。

「それを言うのは私よ」

私は少しでも音を立てようとしたのだ。

「姫様、少し、黙ってもらいましょうか? 俺達も手荒なことはしたくないのでね」

そう言うと、レイはハンカチを取り出してくれたのだ。

「ちょっと、何を……」

叫ぼうとした私はハンカチを口の中に入れられたのだ。

そして、頭の後ろで止められた。これで私はもう話せなくなってしまった。



「姫様、どうなさったのです。外に騎士がいませんが」

私が話せなくなってしばらくしてサーヤが部屋に飛び込んできたのだ。

サーヤは1人だった。


「動くな!」

そのサーヤにフェビアンが剣を突きつけたのだ。

「ちょっと貴方たち、何をしているのです」

サーヤが驚いてフェビアンと私達を見比べた。

私はレイに剣を突きつけられていた。


「姫様の命が惜しければ素直に、縛られるんだ」

顔の横に剣を突きつけられた私を見てサーヤは驚いて固まってしまった。


そのサーヤはあっという間にフェビアンに後ろ手に縛られる。


「陛下は来るなって言ったろう?」

レイが笑ってサーヤに聞いていた。

「いえ、それは……」

サーヤが一瞬逡巡した。私はそれでお父様が今は危険だから部屋で待機しているようにと言ったのが理解できた。

「まあ、良いさ。じきにここは宰相閣下の兵士達で、占拠される。ここに大人しく捕まっていた方が姫様のためだ」

そんな!

「おほうはま!」

私は叫び声を上げようとして猿ぐつわで何も話せなかった。


騎士団がいつ宰相邸に向かって出たのか知らないが、私は宰相の兵士達がここに来る前に騎士団が帰って来てくれる事を神に祈ったのだ。


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