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第79話ころちゃん視点 国王の侍女が斬られたので、白馬の騎士となって斬った男を叩き斬りました

「わんわん!」

解放しろって俺は騎士団長に必死に吠えたのだ。


「陛下、宰相の野望は必ず阻止して参ります。それまではこの犬をしっかりと見張っておいてくださいね」

しかし、奴はそう国王に言うと出ていったのだ。


「わんわん!」

おい待て、俺も連れて行け!

俺は叫んだが、騎士団長は俺を一顧だにせずに出ていったのだった。


「わんわん!」

俺はコリーとベンヤミンの事も気になるから行かせろ!

と俺は国王にも叫んだのだが、国王は全く俺の言葉を理解してくれなかった。

俺はどうやって俺の意思を伝えようかと悩んだのだ。紙とペンがあればなんとか伝えられるのに、それもない。


俺がどうしようかと悩んでいる時だ。


「陛下。カーラ様付きのサーヤが折り入ってご相談したいことがあると参りました」

侍女のレイナがサーヤを取り次いでくれた。

「判った。通してくれ」

国王がレイナに頷いた。


サーヤが入ってきた。

俺はサーヤにこの状態から解放してくれと言いたかった。


「わんわんわんわん!」

俺は必死に吠えたのだ。

「ころちゃん!」

サーヤは驚いて俺を見てくれた。

「わんわん!」

俺はこの時とばかりに吠えたのだ。

俺は必死に解放してくれと叫んでいた。


「ああ、この犬はカーラの子犬だったな。騎士団長が少し調べたいことがあるから預かってくれと申しておっての。この宰相の件が終われば、カーラの元に返すようにする」

国王はそう言ってくれたが、それでは遅いのだ。


「わんわん!」

俺は必死に吠えたのだ。

「陛下。姫様が不吉な予感がするからこちらに来たいと申しておられるのですが」

「うーん。しかし、今は危急の用があればこちらで対処せねばならぬ。不安になる気持ちは判るが、カーラにはもう少し待つように伝えてくれんか」

サーヤの言葉に国王はそう判断した。


「判りました。カーラ様にはそのようにお伝えいたします」

そう言うとサーヤは去って行こうとした。

「わんわんわんわん」

俺は必死に吠えたのだ。


「ころちゃん」

サーヤが吠える俺に振り返ってくれた。

「わんわん!」

俺はここぞとばかりに吠えたのだ。


「あんまり陛下を困らせては駄目ですよ。すぐに迎えに来ますからね」

そうサーヤは言うと吠える俺を捨て置いて去って行ったのだ。


こいつら、元王子の俺に対する扱いが塩対応過ぎないか?

まあ、俺が獣人王国の王子だとは知らないからだと思うが……


王子を檻に繋いだと判明したら本来なら国際問題だ。もっとも王となった異母兄は当然無視してくれるとは思うが……


俺は吠えつかれて檻の中に座り込んでしまった。

こいつら俺に水さえも出さないのだ。

さすがに声が枯れてしまった。


「うーーーー」

俺が寝込んでしまうと

「はい」

俺の前に水の入った皿をレイナが出してくれたのだ。

「わん!」

俺は喜んで水を舐めた。


吠えすぎた俺は喉がカラカラだったので、あっという間にその水を舐め尽くしたのだ。


「まあ、ころちゃんは喉が渇いているのね」

呆れてレイナはお皿を取ると外に水をくみに行ってくんれた。


俺はそれを見送ることしかでかなかった。


こんなところで吠えるしか出来ないなんて本当に役立たずだ。


本当に恥辱心で獣化するという、それも小さな子犬になってしまう体がこの時ほど役立たず立と思えたことはなかった。獣化しても子犬にしかなれないし、獣化したままでは戦えないではないか!


でも、なかなかレイナは帰ってこなかった。


俺は不吉なものを感じた。


何だこの胸騒ぎは。

俺は耳を澄ませた。


「「「わあああああ」」」

遠くで大きな声と剣戟の音が聞こえてきたのだ。


どういう事だ?


「ん?」

国王も不審な物音を聞いたみたいだった。


「何事じゃ?」

「少し、様子を見て参りましょう」

騎士の一人が外に出た。


「陛下、大変です。城門で、戦いが始まったと報告が」

そこへ息せき切ってレイナが入ってきた。

「何だと」

国王と騎士達が慌てた。

「どこの軍だ?」

「判りません」

「見て参ります」

一人の騎士が飛び出して行った。


俺は檻の中だ。このままではまずい。人間に戻らなければ。

でも、戻れる兆候はなかった。



「陛下、大変です。宰相が率いた兵が城門を突破してきました」

一人の騎士が慌てて駆け込んできた。

「何だと騎士団はどうしたのだ?」

「判りません」

「行き違いになったのではないか」

「取りあえず、陛下をお守りしろ」


「「「わあああああ」」」

喚声と剣戟が近付いてくるのが聞こえた。


俺は焦った。このままではまずい。騎士団は宰相邸に行ったままだ。そこに宰相が攻め込んできたってどういう事だ?

ノース帝国の兵士達が思いのほか早く着いていたのか?


いや、それはないはずだ。確かに宰相にはもう少しかかると言っていたのだ。

という事は行き違いになったに違いない。


俺は檻を破ろうと檻にぶつかったが、檻はびくともしなかった。


「ギャーーーー」

そこへ扉を守る騎士の悲鳴が聞こえた。


ドン!

大きな音とともに扉が蹴破られる。


「国王がいたぞ」

「陛下に剣を向けるとは何事だ」

「何を言う。レーネン閣下がこの国の王になられるのだ」

「レーネンめ、反逆したのだな」

「ええい。何をしている反逆者の兵士達を倒せ」

騎士長が叫んだ。


「ふんっ、遅いわ」

「ギャッ」

その騎士長が一瞬で入ってきた男に斬られていた。

騎士長が血を吹いて倒れる。

斬った男はベイルだった。


こいつらではやられる。


俺が思った時だ。

「キャー」

レイナがベイルに斬られるのにが見えたのだ。

ガシャンと大きな音がしてレイナが檻に倒れ込んでくれた。

そして、俺は斬られたレイナの血潮で真っ赤に染まったのだった。

おのれ、ベイル、もう許さん

どくんどくんと俺の心臓が大きく唸った。


「モルガン国王。お覚悟」

ベイルが叫んで剣を抜いた時だ。


俺様の体がいきなり大きくなったのだった。

俺は檻を突き抜けていた。


「な、何奴だ」

ベイルが驚いて叫んでくれたが、その瞬間、俺はベイルを叩き斬っていたのだ。


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