俺はこの前峰打ちで助けたベイルを躊躇なく切り捨てた。前回は少し世話にはなったが、無抵抗な侍女を叩き斬ったことが許せなかったのだ。
ブルーノは一瞬で地面に倒れてくれた。
「き、貴様はこの前の騎士か」
それを驚いて見ていたブルーノが後ろの俺を見つけて叫んでくれた。
「そうだ。この前は手加減してやったのがいけなかったようだな」
俺家は剣先をブルーノに向けた。
「お前、良くもベイルをやってくれたな!」
「何を言う、女子供を斬る奴は俺が許さん」
ベイルは俺に斬りかかってきた。
俺はそれを避けると次の瞬間剣を叩きつけていた。
「ギャーーーー」
ブルーノは悲鳴を上げると血しぶきを上げてゆっくりと倒れてくれた。
「おのれ、良くも仲間を」
破落戸どもが斬りつけてきたが、俺の敵ではなかった。
更に二人の破落戸を切り捨てる。
それと同時に空いていた扉を思いっきり閉めたのだ。
「ギャッ!」
入ってこようとした兵士の一人をその扉で弾き飛ばした。
そして、鍵を閉める。
まあ、気休めにしかならないが、すくなくとも少しの間は時間が稼げるはずだ。
「その方はカーラを助けてくれた白い騎士か?」
国王が俺の後ろから声をかけてきた。
「そうだ。しかし、せっかく助けてやったのだ。更に宰相の雇った傭兵まで現場に残して貴様等に捕まえさせたのだぞ。なのに、このように王宮に攻め込まれるとはどういう事だ?」
俺が視線を国王に向けると国王は視線を逸らしてくれた。
「更にはその破落戸どもを牢から逃がして、敵の戦力を増やすとはどういう事だ?」
俺はそんな国王を睨み付けたのだ。
「いや、それは、本当に面目なかった」
国王が謝ってきたが、今謝られてもどうしようもない。
「まあ、良い。それよりも、騎士達は何人残っている?」
「今確認できるのはここにいる2人だけです」
俺の声に騎士の一人が応えてくれた。
「お前ら2人だけで国王を守れるのか?」
外からどんどんという扉を叩く音がした。
「……」
騎士達は顔を見合わせてくれた。
「守れるのならば、俺はこの襲撃してきた軍の司令官を叩ッ斬りに出るが……」
俺はそう言って騎士達をみたが、騎士達は自信の無さそうな顔をしている。
返事をしてこない二人を見て俺は自信がないのを感じ取った。
ここに国王を残して敵の指揮官に斬り込んでも、俺が叩き斬っている間に国王は殺されているだろう。
俺は国王よりもカーラが心配なのだが。
体が二つあればなんとかなるのだが……俺は不可能なことを考えていた。
「騎士団は何分くらいで戻ってこれる」
仕方なしに俺は確認した。
「おそらく、宰相の邸宅に兵士達がいないのを確認すればすぐにも戻って来よう」
「2時間くらいか?」
俺はため息をつきたくなった。
さすがの俺も2時間もここを支える自信はなかった。
ダン!
その時だ大きな音がして、扉が傾いた。
「くそう、時間切れだ」
俺がそう言うと同時に扉がぶち破られた。
「行くぞ。国王の首さえ上げられれば……ギャーーーーー」
入ってきた先頭の男を俺は叩き斬っていた。
「続け!」
「ギャーーーー」
「行くぞ」
「ギャッ」
続きざまに入ってきた男達を俺は次々に斬り倒していった。
部屋は狭くて2人以上は一緒には行ってこれない。一人ずつで来れば1対1だ。対面で俺に勝てるものなど中々いまい。
何人も倒されたのを見て、さすがの男達も部屋に入るのを躊躇した。
「何をしている、さっさと国王の首を取れ!」
隊長らしき男が後ろから叫ぶのが聞こえた。
「ウォーーーーー、ギャーーーー」
一人目の男は入った瞬間俺の剣で貫かれていた。
そいつの剣を取ると
「ウォーーーー!」
雄叫びを上げて入ってきた男を叩き斬っていた。
「何をしているのだ。相手はたった一人だぞ」
「しかし、とんでもない強さです」
「ええい、煩い、さっさと行け」
蹴飛ばされた男が俺の目の前に出てきた。その男を叩き斬った。
しかし、その後ろから隊長らしき男が間髪入れずに続いていた。
俺の左手が隊長らしき男の顔面に炸裂していた。
そのまま、入り口に男は吹っ飛んでいく。
「ギャッ」
中に入ろうとした男達にぶつかった。
俺は傍の剣を掴むと男達に投げつけたのだ。
「ギャッ」
グサッと男に突き刺さって男達はそのまま勢いのままに男達は扉の外に飛んでいった。
他の男達が思わず、後ずさる。
「ギャーーーー」
その後ろで突然悲鳴がした。
「何故ノーザン帝国の騎士が……」
「裏切るのか?」
「ふんっ、元々貴様等の反逆に加担するとは一言たりとも申しておらん」
フェルディナントの声がしたのだ。
俺はフェルディナント等が味方に付いたのを知ってほっとした。
「ギャーーーー」
男達が倒れる音がした。
「陛下、ご無事ですか? サウス帝国は国王陛下をお助けいたします」
フエルデイナントの声がした。
入り口近辺にいた男達が後ろを振り向いた瞬間、俺は飛び出したのだ。
目の前の男を叩き斬って、その左右の男もバサッバサッと切り捨てる。
最後の男を切り捨てると、そこにはサウス帝国の騎士達と俺だけになっていた。