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第81話 宰相が私の部屋に乗り込んできました

サーヤが縛られて私の横に連れてこられた。

「姫様! お前達、姫様を裏切るなんて、どういう事なの?」

サーヤがレイ達に食ってかかった。

「煩い女だな。お前は殺しても良いんだぜ」

フェビアンが剣を抜いてくれた。

「ヒィィィィ」

サーヤはさすがに青くなった。


「おいおい、フェビアン。あんまり殺すとか言うな」

レイがフェビアンを窘めてくれた。

「サーヤさんも死にたなければ大人しくしていることだ。じきに終わる」

レイの言葉にサーヤはぎくりとした。

「じきに終わるとは?」

「宰相閣下の王国になるのさ」

「そんな」

レイの言葉にサーヤは固まってしまった。

「姫様諸共死にたくはないだろう。だから大人しくしてくれ」

そう言うと、レイはサーヤにも猿ぐつわを嵌めてくれた。

そして、レイはサーヤを私の横に座らせた。

私を見てサーヤは必死に何か伝えようとしてくれたが、何を言っているのか判らなかった。私は取りあえず、頷いておいた。これ以上サーヤに無理させるのは酷というものだ。


私はじりじりと騎士団が帰って来るのを期待して待っていた。

けれど中々騎士団は帰ってこなかった。


「「「わあああああ」」」

その代わりに大きな喚声と剣戟の音が響いてきたのだ。

「どうやら、宰相の軍が攻めてきたみたいだぜ」

レイが声を上げてくれた。

そんな馬鹿な!

でも、騎士団が帰ってきたのならば喚声がするのはおかしかった。

私は焦りだした。


ドカーン!

大きな音がして、喚声が更に大きくなってきた。

とてもまずいのは判った。

騎士や兵士のほとんどは宰相邸に出払っているのだ。中にはほとんどいなかった。こんな時に攻められたら、到底保たない。


どんどんどんどん

扉がノックされた。

すわ味方が来てくれたか!

私は一瞬期待した。

でも、レイがのぞき穴から見るとすぐに扉を開けてくれたのだ。味方な訳はなかった。


「マドック、早かったな」

レイが招き入れたのは宰相の護衛隊長のマドックだった。

私は本当に宰相軍が王宮に攻めてきたのが理解できた。

「レイこそ、王女を捕まえてくれたのか」

縛られた私を見てマドックが喜びの声を出してくれた。

「ああ、宰相閣下に必要かなと思ってな」

「よくやってくれた。もうここまで来たら、猿ぐつわを外しても大丈夫だぜ」

「判った」

レイは剣で猿ぐつわを斬ってくれた。


「マドック、宰相が反逆を起こすなど正気なのですか」

私は文句をいつてみた。

「さあ、私の主人は宰相閣下ですからな。文句は閣下におっしゃってください」

マドックはそう言うと後ろを見た。

「ほう、相も変わらず王女殿下はお元気ですな」

なんと、宰相のレーネンが部屋の中に入ってきたのだ。

今回の主犯がこんなところに来るなんて。王宮はもう完全に制圧されたんだろうか?

私は目の前が暗くなった。


「マドック、国王の方はどうなっている?」

宰相の言葉に私ははっとした。

「ベイル等傭兵を差し向けました。剣技は騎士よりも上だと思いますから、今頃は制圧も終えているでしょう」

「そんな」

私はショックを受けていた。あれだけ優しかったお父様がこいつらの剣で倒されたなんて……

「ふんっ、王国騎士団もあっけなかったな」

宰相は笑ってくれた。

「騎士団はどうなったのです?」

私が聞いてみた。

「今頃、誰もいない我が屋敷の中を血眼になって私を探しているだろうよ」

宰相はそう言うと笑ってくれた。

「こんな事をしても良いと思っているのですか?」

私が強がって言うと

「ふんっ、今回の件はノース帝国とサウス帝国の2大帝国の皇帝陛下にも賛同を得ておるのだ」

「えっ」

私は唖然とした。フェルディナントも裏切りに加わったと宰相は言ってくれた。

やっぱりフェルディナントの言うことは嘘だったのだ。私は目の前が真っ暗になった。


「この前、せっかく陛下等のお命を助けようとその方と我が息子の婚姻を提案してやったのに、その方が断るからだ。陛下を殺したのはその方よ」

「そんな!」

宰相の言葉に私は唖然とした。


「何を言っているのです。下郎が。貴様等の悪巧みなど神様が許される訳はありません」

サーヤが気丈夫にも宰相に言い張ってくれた。


「侍女風情が偉そうに閣下に意見するな」

パシン!

「キャッ」

マドックがサーヤを張り倒していたのだ。

サーヤは地面に叩きつけられていた。

「サーヤ!」

私はサーヤに呼びかけたが、サーヤは身じろぎしたが、起き上がることは出来なかった。

「抵抗できない女を殴るなんて最低ね」

私は宰相とマドックを睨み付けたのだ。


「殿下。言葉は慎んでもらおうか。私ヘルブラント・レーネンが今やこの国の国王だ」

宰相が言い出してくれたが、

「何を言っているの。国王はお父様よ」

私は必死に言っていた。


「ふん、生きていたらであろう。もう既に我が傭兵部隊に血祭りに上げられていると思うが」

「そんな訳ないわ。お父様はまだ生きているわよ」

私は主張したのだ。

「ふん、まあ、じきに判るだろう」

余裕で宰相は答えてくれた。


「申し上げます」

そこに伝令兵が飛び込んできた。

私は固唾を飲んでその男を見たのだ。


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