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第108話 フェルディナント視点 獣人王子がカーラに触れ合えない間にカーラの心を掴もうと心に決めました

俺は本来はマクシムを自分の部屋には泊めたくなかった。

そんなことをすれば俺の謀や本国からの情報が全てマクシム本人に伝わってしまうではないか!

俺はそれを避けたかった。それに今後のことをどうするかじっくりと俺なりに一人で考えてみたかったのだ。

でも、いきなりの獣人共の襲撃でそんな暇はなくなった。

カーラの傍に置いておいて獣人共の襲撃を受けたらたまったものではなかつた。

騎士が多い、俺の側に置いておくしかなかった。

俺は不承不承取りあえず、子犬のマクシムを保護することにした。


このまま放っておいて、獣人共に始末させれば良かった!

後でそう気付いたが、後の祭りだった。


俺は早速獣人共を手引きした者を探ろうとした。

王宮に新たに雇った者の中や、前の反乱で怪しかった者を中心に探りを入れた。

どうやら、宰相の派閥だった者が密かに動いているらしいということは判ってきた。

そんな時に子犬のマクシムがメリーという侍女が怪しいと言ってきたのだ。


子犬とは便利な物でどこでも入り込めるし、人に警戒心を与えない。

俺はサウス帝国の諜報員にスカウトしたいと思うくらいだった。マクシムが獣人王国から追放されたら、一度話してみようと思うくらいには便利だった。


侍女のメリーのところに行くと、偵察に入ったマクシムは中々出てこなかった。どうやらマクシムは捕まってしまったようだった。そのまま死んでくれたらいうことはないのに心の片隅で望んだが、獣人王国の部隊は中々やっかいだ。獣化するし獣化した獣人はとても凶暴なのだ。その情報を掴んでいるマクシムは必要だと、仕方なしに暗部を中心に突入した時だ。



しかし、そこには人間に戻ったマクシムがいたのだ。

「フェルディナント、ここは頼む」

俺が聞く暇もなく、マクシムはあっという間に飛び出して行ったのだ。

俺はそのマクシムを見捨てる訳にも行かずに、呼び出した騎士団に後は任せて慌てて王宮に戻った。


しかし、王宮は獣人達と何故か子犬に戻ったマクシムの戦いで大混乱だった。

何故この大事な時にマクシムは何故か子犬に戻っていた。

俺はこの時にはまだよく理解できていなかった。


俺は取りあえず、マクシムの後を追って、なんとか獣化した獣人を始末したのだ。


「死なないで! ころちゃん!」

俺が部屋の中を覗くとカーラに抱きしめられたマクシムがいたのだ。


俺はむっとした。見た目は子犬だが、中身は獣人だ。獣人はそう簡単に死なないのだ。

こいつは絶対に嘘寝に違いない。

「クウーーーン」

そう思った時にマクシムの野郎は起きてくれたのだ。

本当に白々しい。

俺は思いっきり叩きたかった。


「カーラ様大丈夫ですか」

俺がそんな子犬はほっておいてと言外に言ったのに、

「私は大丈夫です。それよりもマクシム様の治療を」

何故かカーラは傷ついた振りをしているマクシムを最優先にしていて、俺はいたく気分を害していた。


絶対にマクシムに復讐してやる。

俺は心に決めたのだ。


そして、俺は対策会議の場で国王と騎士団長、そしてカーラに俺が気付いたことをばらしてやった。

「あのう、陛下とカーラ様。一つ考えたことがあるのですが」

「なんなのじゃ?」

「ころちゃん、いえ、マクシム様はカーラ様に抱きつかれると子犬に戻るのではないですか」

俺は今までに気付いたことを話していたのだ。


カーラに今回のことをヒアリングしたら、マクシムに抱きついたら子犬になったと言う証言を得られたのだ。

「抱きついた?」

それを聞いて俺はキレたが、気付いてもいた。


「えっ?」

「そんなことがあるのか?」

カーラと国王が驚いていた。

でも、それを聞いた時マクシムが大きく動揺したのが目に見えた。これは絶対に真実だ。

「そうなの、ころちゃん?」

カーラは悲しそうにマクシムを見るとマクシムは視線を泳がせた後、頷いたのだ。


「なるほど、マクシム様は女の人に触れられると子犬になると言われるのですな」

俺はここぞとばかりに言い切ったのだ。


これで二度とカーラとマクシムをふれさせない理由が出来たのだ。

マクシムもカーラを好いているのは間違いないが、触れたら子犬に戻るのならば触れられないだろう。カーラにしてもそうだ。カーラに触れられた途端に子犬に戻るのなら二人は触れ合えないし抱き合うなんてとんでもなかった。

それが事実なら、獣人が襲いかかってきそうだと言い立てれば絶対に二人のふれあいをなくせる。俺は喜々としたのだ。


それにそんな体質だったら、夫婦としての営みも絶対に出来ないではないか?

これを言い立てればカーラとマクシムの結婚が許可されることはないだろう。



「クウーーーー」

マクシムが悲しそうにしたが、その体質がある限り、マクシムはカーラとは絶対に触れ合えないはずだった。


「それは大変じゃな。とするとマクシム殿の世話は男がした方が良かろうて」

国王の言葉に俺はますます愉快になった。

そうだそうだ。これからマクシムは男に世話をされて生活していけば良いのだ。


マクシムめ、今まで良くもこのサウス帝国の王子の俺を無碍にしてくれたな!

俺はマクシムがカーラに触れ合えない間に絶対にカーラの心を掴んでみせる。

俺は心に決めたのだった。


そして、マクシムが男達に世話されるようになって3日後に子犬はやっとマクシムに戻ったのだった。



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