俺はすぐにバーレントの所をお暇した。
バーレントは獣人化して虎となり力は強いが、それだけだ。配下に対する気配りも出来なければ、感謝も出来ない。王としては不適格だ。
あれが王になれば獣人王国は力を落とすであろう。
俺はそう思った歩のだ。
次はもう一人のマクシムはどうだろうか?
俺はマクシムが獣人王国の西方の小国モルガンにいると聞いていたので直ちに向かった。
そして、モルガン王国の宮殿に獣化して猫としてあっさり入り込んだのだ。
モルガン王国は獣人の潜入に対して、そんなにきちんと対策はしていなかった。
そんな中、マクシム殿下は何故か獣化して子犬になっていて、男達に世話されていた。
俺はそれを確かめると、陛下からの書面を国王の机の上に置くと、どう反応するかじっくり見させてもらった。
書面を見つけた国王達は驚いたが、それを持ってマクシムの所に行ってくれた。
そこで俺は人間に戻ったマクシムを見た。
マクシムの前を歩いてみたら、マクシムは俺の鼻面の前に剣を突き刺してくれたのだ。
「ギャーーーーー」
俺は悲鳴を上げた。
そして、それと同時に、人間化した。
「マクシム様。酷いではないですか! いきなり抜き身の剣を目の前に突き刺してくれるなんて」
「ふんっ、下らん書面を送ってくるからだ。この書面はどのみち貴様の仕業であろうが」
「まさか、そのような。私のような下っ端の言うことなど陛下がお聞き届けになる訳はありませんでしょう」
俺が笑って誤魔化すと
「マクシム殿、そちらの方はどなたじゃ?」
国王が聞いてきた。
「陛下。申し訳ありません。彼は獣人王国の国王の側近のドリース伯爵です」
「これはご挨拶が遅れました。私めは獣人王国の陛下の側近を務めさせて頂いているドリースと申します。以降お見知りおきを」
俺は国王に跪いた。
「これは丁寧なご挨拶に痛みいる。私がこのモルガン王国の国王です。ようこそいらっしゃったドリース伯爵」
国王は俺に挨拶をしてくれた。
「で、ドリース殿。今回獣人王国の陛下のお手紙を貴殿が届けてくれたと思うのじゃが」
「さようでございます。さすが陛下。そこまで判りましたか」
「次からは黙って儂の机の上に置くのではなくて、門番を通して頂けると有り難いが」
国王はチラッと嫌みを言ってくれた。
「申し訳ありません。ついお懐かしい方の匂いがいたしましたので」
「白々しいことを」
マクシムは俺を睨み付けてくれた。
マクシムは今回の獣人王国の決定についておかしいとはっきりと言い切ってくれた。
「何を言う、ドリース。そもそも俺が兄者に襲われたのは不意打ちで、そもそも王位継承とこの不意打ちは別物であろうが!」
「マクシム様。そのように怒られていては話も出来ないではありませんか」
「貴様が怒らせているのであろうが!」
マクシムは更に激高したが
「まあ、マクシム様。差し出がましいようですが、マクシム様のお怒りもごもっともですが、ここは最後までドリース殿のお話を聞いて見るのも肝心かと」
王女が話しだした。将来、獣人王国の王妃となるには小国で格は落ちるが、きちんと教育はされているみたいだ。
「まあ、カーラ殿がそうおっしゃるのならば」
マクシムが彼女の言うことを聞いていた。
「これはこれはお綺麗な方ですな。朴念仁と言われたマクシム様が首ったけなのもよく判ります」
俺が突っ込むと
「ドリース!」
殿下は怒ったが、
「まあ、ドリース様もお上手ですのね」
王女は流してくれた。これはやはり教育された王女だ。
それにその横にはサウス帝国の皇子までいた。皇子は俺に対しても結構突っ込んでくれた。
そして、バーレントがノース帝国を引き込むかどうか聞いてきたのだ。
俺がバーレントと話をした感じではバーレントは1人で事を運ぼうとしているみたいだった。その事は話す気はなかったが、いつの間にか話す羽目になってしまった。
俺が話した感じではマクシムはモルガン王国の面々に感謝されており、命を助けてもらったお返しに、彼らの命を助けたようだった。
サウス帝国の皇子との関係がカーラ王女を挟んでの三角関係ということはよく判ったが、マクシムはサウス帝国の皇子からも一目置かれているみたいだった。
「どうであったドリース」
俺は陛下に報告に向かうと挨拶もそこそこに結果を聞かれた。
「バーレント様は獣化したら自分が王国の中では一番強いと思っておられ、自信満々な反面、他者の言葉を聞こうと話されません。それに対してマクシム様は獣化したら子犬でしたが、、他国であるモルガン国王や王女、サウス帝国の皇子殿下とも歩調を会わせておられました。対人関係という点ではマクシム様が上でしょう」
俺は陛下に報告した。
「なるほどその方は王太子にはマクシムがふさわしいと思うのか」
「対人面ではです」
俺は条件をつけたのだ。
「ただ、力的にはバーレント様の方が強そうです。獣人王の条件に力強さが求められている点を鑑みるとバーレント様ではないかと思われます」
俺はそう報告せざるを得なかった。
「なるほど。その方は結果次第だと言うのだな」
「もう、ここまで来たら結果を見届けるしかありますまい」
俺はそう結果を報告するしか出来なかったのだ。