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第120話 ころちゃん視点 カーラに触れられて子犬にも戻ってしまいました

私はやっと人間に戻れた。

そして、ほっとしたのだ。これでカーラに会えると。

しかし、フェルディナントは慎重だった。間違えて俺が再び子犬に戻ることが怖いと。

確かに、今バーレントが色々と画策しているのだ。

いつバーレントがやってくるか判らないのだ。

慎重になるのは判る。


しかし、せっかくカーラがお茶に招待してくれようとしたのを断るのは良くないのではないのか?

俺はそう思ったしフェルディナントにもそう言ったのだ。


「マクシム殿。今がその方が獣人王国の王太子になれるかどうかの瀬戸際だ。ここは心苦しいとは思うが、我慢された方が良いのではないか」

そう面と向かって言われると、それ以上は言えなかった。


カーラの侍女のサーヤはフェルディナントの言葉のままに、フェルディナントのわざわざ用意した課題を持ち帰ったのだ。


それをカーラは2日間でやり上げたようだ。侍女のサーヤが持って来たのだ。


しかし、フェルディナントはそれでお茶会を了承する訳では無くて今度は倍の課題を与えたのだった。

さすがに俺はそれはやりすぎではないかと主張すると、

「マクシム様。今が耐え時ですぞ。もう間もなくバーレントが責めてくるでしょう。それまでの辛抱なのです」

そう言われたら、俺としてもそれ以上は言えなかった。

俺は兵士や騎士達に訓練をつけて必死に日々を過ごしたのだ。


そして、次の時は今度は目に隈を作ったカーラもサーヤと一緒にやってきたのだ。

後ろには完全に徹夜したようなベンヤミンまでいる。

俺はとても心苦しかった。

さすがにフェルディナントも、良心の呵責を感じたようだ。


「カーラ様。カーラ様は不眠不休で働いている部下にも休憩を与えようとはされないのですか」

フェルディナントが自分で言い出したのだが、いや、こいつは最近はカーラに仕事を回して楽しているはずだ。

「フェルディナント様も休憩すれば良いではないですか」

カーラが言うと、

「そこは、あなたもお茶をどうですか? と誘って頂けるところではありませんか」

フェルディナントが図太く言いだしてくれるんだけど、お前こそ、仕事をしろと俺は言いたかった。

「判りました。明日の15時に私のテラスでのお茶にフェルディナント様とマクシム様をお誘いいたしますわ」

カーラは諦めて言いだしたけれど、楽しているフェルディナントなんて誘わなくて良いと俺は心の底で思ったのだ。


15時になったので、俺はフェルディナントに連れられてカーラの部屋に行った。

カーラが俺の元に駆け寄ってくれたが、その前にフェルディナントが立ち塞がってくれた。

「カーラ様。今日はお招き頂きありがとうございます」

こいつ、俺が言いたかったのに! 俺は思ったが、バーレントに勝つためにはリスクはできる限り避けねばならないそうだ。悲しいことにカーラに触れることは禁止されていた。


席もカーラとは間にフェルディナントを挟んでいた。

なんともむかつく席割りだが、ここはリスクを考えると我慢するしか無かった。


「カーラ様。此度は私もお茶会の席に呼んで頂きありがとうございます」

俺はニコリとカーラに笑いかけたのだ。

途端にカーラの機嫌が良くなった。


「いえ、私こそ、改めてマクシム様には私をお助け頂いた事を御礼申し上げます」

「カーラ様。何度も私とお茶したいと言って頂けて本当に嬉しかったのですが、色々と忙しくしていて時間が取れなくて本当に申し訳なかった」

「こちらこそ、お忙しい所ご無理言って申し訳ありません。一度マクシム様をお茶会にお呼びして、お礼をしたかったので」

そう言うとカーラは手ずから作り上げたクッキーを俺に出してくれたのだ。

本当に美味しかった。

俺は感激したのだ。


しかし、そこで騎士が俺に来訪を伝えたのだ。

誰だろうといぶかしんでいるとなんと、幼なじみで俺の妹分のコルネーリア・ポット伯爵家令嬢が入ってきて、俺に抱きついてくれたのだ。

「コルネーリア! 元気だったか」

俺も久々に会う幼なじみとの再会に喜んだ。

こいつは女騎士で、カーラの護衛ができる。そうすれば俺が安心だった。


「マクシム殿、女性に触れられるのはまずいのでは」

フェルディナントが俺に言ってきたけれど、コルネーリアは妹みたいな者だからな。抱きつかれても俺は興奮したりはしないだろう。

カーラが席を作って案内してくれた。


「でも、女性に触れられたら獣化されるのではないのか?」

再度フェルディナントが指摘してくれたが、

「うん、いや、別に今はそんなことは無いな。獣化する兆候もないぞ」

俺は嬉しそうに言った。

まあ、コルネーリアは妹だから大丈夫だが、うまくいけばカーラを抱いても大丈夫だろうか?

俺は思わず希望を抱いてしまったのだ。


「マクシム様。女に触れられたら獣化するのですか? 私は久々に子犬のマクシム様を抱きしめたいです」

コルネーリアが余計な事を言ってくれた。俺はしばらく子犬に戻る訳にはいかないのだ。

「マクシム様。是非とも子犬になってくださいませ」

そう言って机の上にある俺の手に自らの手を伸ばしてくれた。

「コルネーリア。もう今はある程度大人になったのだ。子供のようには行くまい」

そう言うと俺はコルネーリアの手を引き剥がした。

「マクシム様。大丈夫でございますか?」

「そうです。いつ、敵が攻めてくるか判らない時に、獣化しては困ります。コルネーリア様もお控えください。」

カーラとフェルディナントが俺とコルネリアに注意する。

「でも、マクシム様は獣化なんかされていませんよ」

気楽にコルネーリアが言ってくれた。

「確かに獣化しないな」

俺は自分の手足を見て呟いた。

「まあ、じゃあ、治られたのですね」

カーラが喜んで俺を見てくれた。


「私は昔からマクシム様とお付き合いがありますけれど、マクシム様は私に触れられて獣化したことなどございませんわ」

コルネーリアは自慢してくれたんだけど。

「そうなんですか?」

カーラが驚いて俺を見てきた。コルネーリアは年下の妹としか見ていないから、俺は恥ずかしく思わない限り問題はないのだ。

「まあ、コルネーリアは生まれた時から妹のようなものですから」

「マクシム様。それはどういう意味なのですか? 私はもう十分大人です」

むっとしてコルネーリアが俺に主張してきた。

「ねえ、マクシム様」

そう言うと立ち上つてコルネーリアは俺に抱きついてきたんだけど、いくらコルネーリアが抱きついてきても俺にとっては妹に過ぎなかった。体は全く反応しなかったのだ。

「ちょっと何するのよ!」

しかし、そのコルネーリアの行動にカーラがむっとしてくれたのだ。


「カーラ様」

慌ててフェルディナントが声を上げてくれた。

「コルネーリア、冗談が過ぎると国に送り返すぞ」

「判りました。マクシム様」

そう言うとコルネーリアは離れてくれた。


「マクシム様。大丈夫ですか?」

「カーラ様、大丈夫ですよ」

俺はカーラに微笑みかけたのだ。


その後だ。


「マクシム様」

勢いでカーラが俺の手に触れてしまった。


「えっ」

俺は固まってしまった。


「まずい!」

俺の心の奥底からかあああああっと恥ずかしさがこみ上げてきて俺は真っ赤になったのだ。

そして、光に包まれると俺はあっという間に子犬に変わってしまった。


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