ガドラが静かに結城翔の前に立つ。
その背中は巨大な壁のようであり、圧倒的な存在感が戦場全体を支配していた。
「ふーん、速いのはわかったよ。でもさ」
結城翔が冷ややかな声で呟く。
「武器、持ってないじゃん。それで、俺とどうやって戦うの?」
だが、ガドラは微動だにせず、結城をじっと見据えた。
そして、低く力強い声で答える。
「武器? そんなものは必要ない」
その瞬間、ガドラが地面を蹴る。
「甘いよ」
結城翔が呟くと同時に、銃弾を発射した。
ドォン!! 重い衝撃音とともに、地面が吹き飛ぶ。
「俺、こう見えて、狙いは外さないんだよね」
銃を肩にトントンと当てながら、不敵な笑みを浮かべる。
「だから、せめて固い盾とか持ってないと……」
言いかけた瞬間、結城翔の表情が変わる。
「もう一度言う。俺に武器は必要ない」
土煙の中から、ガドラが何事もなかったかのように歩み出た。
「武器は俺自身だ」
その声には揺るぎない自信が宿り、周囲にいる者たちすら一瞬で息を呑ませた。
「……まじかよ」
結城翔が一瞬引いたように見えた。
「この身に宿るは、自由を掴み取るために戦った先人の力!」
ガドラの声が次第に高まり、戦場全体に響き渡る。
「すべてに感謝を! 俺は自由を求めるために生まれたのではない――!」
ガドラは拳を握りしめ、続けた。
「自由とともに生まれたのだ。あらん限りの自由とともに――!」
その言葉と共に、彼の全身から眩い光が放たれる。
ガドラの体がまるで発光するかのように輝き、彼の存在がさらに大きく見える。
「|解放≪Liberation≫!!」
その一言とともに、ガドラの力が解き放たれる。
衝撃波が周囲を駆け抜け、戦場の砂嵐すら吹き飛ばすほどの威力を持っていた。
「いざッ!」
ガドラが構えた瞬間――彼の姿が消えた。
「はっ!?」
結城翔が反応する間もなく、彼の銃身が粉々に砕け散った。
「ちょっ! おい!」
結城翔が歯を食いしばりながら叫ぶ。
虚空に向かって再び銃を生成し、構える。
しかし、その銃も、即座に砕けた。
「おまえ、なんなんだよ!」
彼の余裕は完全に消え、顔には焦りの色が浮かんでいる。
「……ふざけんな!」
翔が怒りの声を上げ、次々と銃を作り出す。
だが、その全てが、ガドラの拳によって砕かれていく。
「どうした? 特級神徒の力はそんなものか!」
ガドラの拳が結城の防御を打ち砕き、轟音と共に周囲の砂塵を巻き上げる。
「くそっ……! 矢神は簡単にやれたのに……!」
結城翔が焦燥の表情を浮かべ、大きく後退する。
距離を取ろうとする結城翔。
しかし、ガドラはその隙を与えない。
「貴様らが臣永を語るなど、笑止千万!」
ガドラの怒気が戦場を震わせる。
「臣永はあの日、北米で起きた48時間の連続レイドクエストに召集され、誰よりも戦った後だった」
ガドラの低く鋭い声が、結城翔を抉るように突き刺さる。
結城の表情が一瞬だけ硬直した。
ガドラは一歩前に出て、拳を結城翔に突きつける。
「お前らは、弱った臣永をいたぶったに過ぎない!」
その言葉には、燃えるような怒りが込められていた。
「……だからどうした! 負けてちゃい見ねえだろうが!」
結城翔が冷たく返そうとした瞬間――
「わかってないな」
ガドラの拳が、結城の防御を完全に粉砕した。
「矢神臣永の真の強さは、そんな状況でも屈しなかったことにある!」
ガドラの声が戦場に轟く。
そして、彼の拳が結城を防戦一方に追い込んでいく。