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10-4: Liberation(解放)

ガドラが静かに結城翔の前に立つ。

その背中は巨大な壁のようであり、圧倒的な存在感が戦場全体を支配していた。

「ふーん、速いのはわかったよ。でもさ」

結城翔が冷ややかな声で呟く。

「武器、持ってないじゃん。それで、俺とどうやって戦うの?」

だが、ガドラは微動だにせず、結城をじっと見据えた。

そして、低く力強い声で答える。

「武器? そんなものは必要ない」

その瞬間、ガドラが地面を蹴る。

「甘いよ」

結城翔が呟くと同時に、銃弾を発射した。

ドォン!! 重い衝撃音とともに、地面が吹き飛ぶ。

「俺、こう見えて、狙いは外さないんだよね」

銃を肩にトントンと当てながら、不敵な笑みを浮かべる。

「だから、せめて固い盾とか持ってないと……」

言いかけた瞬間、結城翔の表情が変わる。

「もう一度言う。俺に武器は必要ない」

土煙の中から、ガドラが何事もなかったかのように歩み出た。

「武器は俺自身だ」

その声には揺るぎない自信が宿り、周囲にいる者たちすら一瞬で息を呑ませた。

「……まじかよ」

結城翔が一瞬引いたように見えた。

「この身に宿るは、自由を掴み取るために戦った先人の力!」

ガドラの声が次第に高まり、戦場全体に響き渡る。

「すべてに感謝を! 俺は自由を求めるために生まれたのではない――!」

ガドラは拳を握りしめ、続けた。

「自由とともに生まれたのだ。あらん限りの自由とともに――!」

その言葉と共に、彼の全身から眩い光が放たれる。

ガドラの体がまるで発光するかのように輝き、彼の存在がさらに大きく見える。

「|解放≪Liberation≫!!」

その一言とともに、ガドラの力が解き放たれる。

衝撃波が周囲を駆け抜け、戦場の砂嵐すら吹き飛ばすほどの威力を持っていた。

「いざッ!」

ガドラが構えた瞬間――彼の姿が消えた。

「はっ!?」

結城翔が反応する間もなく、彼の銃身が粉々に砕け散った。

「ちょっ! おい!」

結城翔が歯を食いしばりながら叫ぶ。

虚空に向かって再び銃を生成し、構える。

しかし、その銃も、即座に砕けた。

「おまえ、なんなんだよ!」

彼の余裕は完全に消え、顔には焦りの色が浮かんでいる。

「……ふざけんな!」

翔が怒りの声を上げ、次々と銃を作り出す。

だが、その全てが、ガドラの拳によって砕かれていく。

「どうした? 特級神徒の力はそんなものか!」

ガドラの拳が結城の防御を打ち砕き、轟音と共に周囲の砂塵を巻き上げる。

「くそっ……! 矢神は簡単にやれたのに……!」

結城翔が焦燥の表情を浮かべ、大きく後退する。

距離を取ろうとする結城翔。

しかし、ガドラはその隙を与えない。

「貴様らが臣永を語るなど、笑止千万!」

ガドラの怒気が戦場を震わせる。

「臣永はあの日、北米で起きた48時間の連続レイドクエストに召集され、誰よりも戦った後だった」

ガドラの低く鋭い声が、結城翔を抉るように突き刺さる。

結城の表情が一瞬だけ硬直した。

ガドラは一歩前に出て、拳を結城翔に突きつける。

「お前らは、弱った臣永をいたぶったに過ぎない!」

その言葉には、燃えるような怒りが込められていた。

「……だからどうした! 負けてちゃい見ねえだろうが!」

結城翔が冷たく返そうとした瞬間――

「わかってないな」

ガドラの拳が、結城の防御を完全に粉砕した。

「矢神臣永の真の強さは、そんな状況でも屈しなかったことにある!」

ガドラの声が戦場に轟く。

そして、彼の拳が結城を防戦一方に追い込んでいく。



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