戦場の中央――銀髪のヴァレンティナ・シュミットとセラフィナが対峙する。
「あっちは楽しそうね」
セラフィナが微笑みながら、ガドラと結城翔の戦いを横目で眺める。
無数の剣を宙に浮かべ、それらは鋭い殺意を宿しながら、空中でゆっくりと円を描いていた。
「イニシエーターズって、みんなあんな風に乱暴なの?」
「ええ。おおむね」
ヴァレンティナは冷静に剣を抜く。その動きは洗練されており、無駄が一切ない。
セラフィナが指を弾くと、剣の群れが一斉にヴァレンティナに襲いかかる。
「遅いな」
ヴァレンティナは剣を軽やかに振り、正確なタイミングですべての剣を弾き返した。
鋼がぶつかり合い、火花が散る。
「フフ……避けるだけ? つまらないわね」
セラフィナが挑発するように笑い、指を動かすと、剣がさらに鋭く襲いかかる。
だが、ヴァレンティナの剣は一切ブレず、流れるような動きで迎撃する。
「見事ね」
セラフィナは笑みを浮かべながら、さらに剣を生み出す。その数は増え続け、戦場全体を覆い尽くすかのようだった。
「この剣たち、すべての方向からあなたを狙うわ」
指の動きに合わせ、剣の群れが四方八方からヴァレンティナを襲う。
「甘い」
ヴァレンティナは一言放つと、動き出した。
その動きは速く、正確だった。鋭い剣閃が次々と浮遊剣を叩き落とし、砕けた剣が地面に突き刺さっていく。
「攻撃が大振りすぎる。直した方がいい」
ヴァレンティナが低く呟き、一気にセラフィナの懐へ踏み込む。
「くっ……!」
セラフィナがすぐに防御の体勢を取るが、ヴァレンティナの一撃が彼女の肩をかすめた。
「へえ、やるじゃなお」
セラフィナが肩を押さえながら笑みを浮かべる。だが、その目には冷たさが宿っていた。
「でも、これで終わりじゃない」
彼女が両手を広げると、さらに大量の剣が宙に浮かび上がる。
「醜いな……」
ヴァレンティナは剣を構え直し、冷たい視線を送る。
「なに?」とセラフィナ。
「剣技に自信がないから、数に頼る」
「一本に絞るなんて私には信じられない」
「信じるだけの鍛錬を積んでいないからだ」
「………私が本気を出しても、そんな余裕の表情でいられるかしら?」
セラフィナが指を鳴らすと、無数の剣が一気に弾丸のように飛び出した。
ヴァレンティナは即座に剣を振り抜き、迫りくる刃を斬り払う。
だが――。
「これはどうかしら?」
セラフィナが笑いながら手を握ると、弾かれた剣が一瞬でUターンし、ヴァレンティナの背後から襲い掛かる。
「太刀筋が――」
ヴァレンティナが反射的に体を回転させ、後方の剣を迎撃する。
が、同時にセラフィナ自身が接近し、しなやかな動きで鞭のように伸ばした剣を振るった。
「単調だ!」
ヴァレンティナはすれすれでかわし、即座に剣を振るいカウンターを仕掛ける。
刃がセラフィナの頬をかすめ、彼女の笑みが一瞬消えた。
「………ふふっ」
セラフィナが静かに舌で血をぬぐう。
「ちょっと、頭にきちゃった」
彼女が腕を広げると、剣がまるで舞踏会のダンサーのように優雅に旋回し始める。
ヴァレンティナは剣を構え直し、一歩踏み込む。
剣閃と衝撃波が周囲を巻き込み、砂埃が絶えず舞い上がる。
「顔はダメよねえ!顔は!」
セラフィナが無数の剣を一斉にヴァレンティナへ向けて放つ。
これまでで最大の攻撃であり、一瞬で戦場を埋め尽くした。
「そうだな。そろそろ消えよう」
ヴァレンティナは静かに剣を振り上げた。「あなたの視界から」
――そして、一閃。セラフィナの顔を、真一文字に切り裂いた。