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10-7: The Tide Turns(戦局の逆転)

戦場の一角で、雷燦華と緋野翠が猛毒の霧を撒き散らすダグモと激闘を繰り広げていた。

シュウウウウ……

大地が焼ける音と共に、炎と毒がぶつかり合う。

雷の槍が火を噴き、翠の泡が弾幕を形成する。

しかし、ダグモはそのすべてを受け流すように後退し、じわじわと毒を拡散させていく。

「もう~、この毒! 本当やっかいだってば~!」

翠がガトリングを構え、次々と泡を放つ。

泡は毒を弾き、霧をかき消しながらダグモに向かって炸裂していく。

「打っ差異! 文句言わず、道を作りなさい!」

雷が苛立ちを露わにしながら叫ぶ。

彼女の炎の槍が猛然と燃え上がり、毒霧を焼き尽くしながらダグモの巨体へと襲い掛かった。

「はぁ、面倒くさいねぇ……」

ダグモは怠そうに呟きながら、手から毒液を溢れさせる。

それが地面に落ちた瞬間、無数の毒の刃へと変化した。

「雷ちゃん、下!」

翠が警告を発した瞬間、毒の刃が一斉に隆起し、雷の足元を襲う。

「焼き失せろ!!」

雷がとっさに槍を地面に突き刺し、炎の衝撃波を放つ。

爆風が起こり、吹き飛ばされた毒の刃が辺りに飛び散る。

だが、その残滓や瓦礫が他のプレイヤーにかからないように、翠の泡が即座に受け止めた。

「おい、やべえんじゃねえの!」

突然、ダグモが叫んだ。その声は、特級神徒である結城翔に向けられていた。

「クエスト達成できねえぜ!」

その一言に、戦場全体が静まり返る。

「クエスト……達成……?」

俺はガン・ダガーを握りしめながら呟いた。

なぜ神徒が"クエスト"を気にする? その疑問が胸に広がる。

翠と雷も驚いたように動きを止め、ダグモを見つめた。

「おい、リーダー! もういいだろ、引き上げようぜ!」

ダグモが面倒くさそうに呼びかける。

翔は苦々しげに舌打ちした。

「ちっ、接続限界だ! 帰るぞ!」

その言葉に、俺の中でさらに疑念が深まった。

「接続……限界?」

俺はその言葉を繰り返しながら、彼らの存在に対する違和感を強く抱いた。

翔が不機嫌そうに手を振ると、ダグモが溜息をつきながら後退し始める。

「「「「逃がすかぁ!」」」」

対峙していたヴァレンティナ、ガドラ、雷、翠が一斉に駆け出した。

ヴァレンティナの剣が閃き、ガドラの拳が炸裂し、雷の炎が爆ぜ、翠の泡が追撃の弾幕を形成する。

だが――。

シュウウウウ……!

セラフィナが指を軽く弾くと、無数の剣が宙に展開された。

「邪魔しないで」

彼女が囁くように言った瞬間、千の剣が降り注ぎ、ヴァレンティナたちの進撃を阻んだ。

「ちっ……!」

ガドラがその剣を拳で吹き飛ばし、雷が燃え盛る槍で弾き返す。

だが、その瞬間にはもう、特級神徒たちは宙に浮かぶ影へと飲み込まれかけていた。

「また会おうね」

翔が挑発的に微笑みながら、影の中に消える。

ダグモが退屈そうにため息をつき、セラフィナはどこか満足げな笑みを浮かべながら、静かにその影へと溶けていった。



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