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10-8: Echoes of Survival(生存の余韻)

ゴゴゴゴゴゴ……!!!

カチリ――

戦場の上空、時計台の針が最後の音を刻んだ。

90分の防衛クエスト、クリア――!

「……終わった……のか?」

戦場に響き渡る喧騒が徐々に静まっていく。

激戦の末、メインゲートは辛うじて守り抜かれた。

「これで……終わったのか……?」

誰かが呟く。その声は、戦場に残った者たち全員の胸中を代弁していた。

俺はガン・ダガーを握りしめながら周囲を見渡す。

倒れた神徒たちの残骸と、傷つきながらも立ち上がる仲間たちの姿が目に入る。

戦場には、燃え尽きた瓦礫の山と、戦いの激しさを物語る焦げた大地が広がっていた。

美雪が剣を支えにして膝をつき、涙を落とした。

「私たちは……本当に勝てたんですか?」

その呟きは虚ろで、戦いの余韻に飲み込まれていた。

「ああ、勝てたよ」

俺はそう答えたものの、心の奥には拭いきれない違和感があった。

「水上は?」

「え? さっきまでいたはずなんですけど……」

美雪が不安げに辺りを見渡す。

「賢先輩!」

天草が駆け寄ってくる。その背後には、秋月一馬と三輪蓮の姿もあった。

「はぁ……はぁ……おい、俺たち……本当に……勝ったんだよな?」

一馬は息を切らせながら、拳を握りしめて震えていた。

「……勝ったさ」

三輪蓮が静かに言った。傷ついたエレクトロブレードを鞘に収め、辺りを見渡す。

「でも……代償は大きい」

彼の視線の先には、動かなくなったプレイヤーたちの姿があった。

戦場には、犠牲となった者たちの亡骸が無言のまま横たわっている。

最前線から、ピーターパン部隊のメンバーたちが戻ってくるのが見えた。

そうだ。彼らが湧き続ける敵を押さえてくれていたからこそ、なんとか耐えきれたのだ。

「お疲れ様」

俺は最前線で戦っていた浮水に声をかけた。

だが、彼は立ち止まらず、すれ違いざまに静かに言う。

「次は、君も最前で押さえることになるよ」

そして、何事もなかったかのように去っていった。

「こちら白波梓。司令部より通達」

通信機越しに、白波梓の冷静な声が響いた。

「防衛クエスト、成功を確認。順次、ログアウト処理に移る!」

その言葉が戦場全体に響いた瞬間――

「ウォォォォォォ!!!」

生き残ったプレイヤーたちが勝鬨を上げた。

「やったぞ……!」

「俺たち、生き残ったんだ……!」

「勝ったんだ……本当に……!」

安堵の声が戦場に広がる。

しかし、俺はその声をただ聞いているだけだった。

俺は、自分の拳を見つめた。

傷だらけの手がわずかに震えている。

戦いを振り返るたびに、胸の中で何かが押しつぶされるような感覚が広がる。

それだけじゃない。

新たに湧いた疑問に、俺は頭を悩ませていた。

特級神徒。

あいつらの正体は、一体なんなんだ。



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