ゴゴゴゴゴゴ……!!!
カチリ――
戦場の上空、時計台の針が最後の音を刻んだ。
90分の防衛クエスト、クリア――!
「……終わった……のか?」
戦場に響き渡る喧騒が徐々に静まっていく。
激戦の末、メインゲートは辛うじて守り抜かれた。
「これで……終わったのか……?」
誰かが呟く。その声は、戦場に残った者たち全員の胸中を代弁していた。
俺はガン・ダガーを握りしめながら周囲を見渡す。
倒れた神徒たちの残骸と、傷つきながらも立ち上がる仲間たちの姿が目に入る。
戦場には、燃え尽きた瓦礫の山と、戦いの激しさを物語る焦げた大地が広がっていた。
美雪が剣を支えにして膝をつき、涙を落とした。
「私たちは……本当に勝てたんですか?」
その呟きは虚ろで、戦いの余韻に飲み込まれていた。
「ああ、勝てたよ」
俺はそう答えたものの、心の奥には拭いきれない違和感があった。
「水上は?」
「え? さっきまでいたはずなんですけど……」
美雪が不安げに辺りを見渡す。
「賢先輩!」
天草が駆け寄ってくる。その背後には、秋月一馬と三輪蓮の姿もあった。
「はぁ……はぁ……おい、俺たち……本当に……勝ったんだよな?」
一馬は息を切らせながら、拳を握りしめて震えていた。
「……勝ったさ」
三輪蓮が静かに言った。傷ついたエレクトロブレードを鞘に収め、辺りを見渡す。
「でも……代償は大きい」
彼の視線の先には、動かなくなったプレイヤーたちの姿があった。
戦場には、犠牲となった者たちの亡骸が無言のまま横たわっている。
最前線から、ピーターパン部隊のメンバーたちが戻ってくるのが見えた。
そうだ。彼らが湧き続ける敵を押さえてくれていたからこそ、なんとか耐えきれたのだ。
「お疲れ様」
俺は最前線で戦っていた浮水に声をかけた。
だが、彼は立ち止まらず、すれ違いざまに静かに言う。
「次は、君も最前で押さえることになるよ」
そして、何事もなかったかのように去っていった。
「こちら白波梓。司令部より通達」
通信機越しに、白波梓の冷静な声が響いた。
「防衛クエスト、成功を確認。順次、ログアウト処理に移る!」
その言葉が戦場全体に響いた瞬間――
「ウォォォォォォ!!!」
生き残ったプレイヤーたちが勝鬨を上げた。
「やったぞ……!」
「俺たち、生き残ったんだ……!」
「勝ったんだ……本当に……!」
安堵の声が戦場に広がる。
しかし、俺はその声をただ聞いているだけだった。
俺は、自分の拳を見つめた。
傷だらけの手がわずかに震えている。
戦いを振り返るたびに、胸の中で何かが押しつぶされるような感覚が広がる。
それだけじゃない。
新たに湧いた疑問に、俺は頭を悩ませていた。
特級神徒。
あいつらの正体は、一体なんなんだ。