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11-3: Encounter with the Four Disciples(四人衆との遭遇)

「システムオンライン――ログインシーケンス開始」

意識が、再びゲームの世界に沈み込んでいく。

「身体データ同期中……視覚、聴覚、触覚フィードバック正常」

暗闇の中、無数のデータが流れ込む感覚に襲われる。

いつものように――いや、今回は、より研ぎ澄まされた感覚で、戦場へと降り立った。

「……転移完了」

視界が明るくなり、俺たちは静かに目の前の光景を確認する。

「渓谷か」

秋月一馬が、荒涼とした岩場を見渡しながら呟いた。

「ああ……一本道で、随分と先が長そうだ」

三輪蓮が慎重に周囲を観察する。

「見通しも悪いですね」

遠野美雪が低く呟いた。

両側にそびえる岩壁は、高く、圧迫感すら感じさせる。

ここでは、奇襲や待ち伏せには最適な地形だった。

「じゃ、行こうか」

先頭に立つ浮水が、双閃刀を軽く回しながら言った。

俺たちは互いに頷き、迷いなく前へと進む。

荒涼とした渓谷の道を、俺たちはひたすら進んでいた。

黒磯を助ける。それだけを考えて、足を止めることなく走り続ける。

だが――

「……来るぞ」

浮水が立ち止まり、低く警告した。

その瞬間、俺の背筋に冷たいものが走る。

空気が変わった。

渓谷を吹き抜ける風が止まり、まるで何かに包囲されたかのような感覚に襲われる。

そして――

「待っていたぞ」

不気味な声が、四方から響いた。

俺たちの行く手を塞ぐように、四つの影が現れる。

「……特級神徒か?」

秋月が拳を握りしめる。

「少なくとも、話せるってことは、ただの神徒とは違うだろうな」

三輪蓮が低く呟いた。

蓮の言葉に、俺は改めて目の前の敵を見据えた。

四人――それぞれが東西南北の位置に立っている

それぞれ異なる武装を持ち、異様な雰囲気が噴出していた。

「お前たち、黒磯と水上をどこに連れていった!」

一馬が吠えるように叫ぶ。

「黒磯……? 水上……?」

その中の一人、巨漢の男が口元に薄笑いを浮かべた。

「さあな。俺たちの仕事は、お前たちをここで止めることだけだ」

「これは……まずいね」

浮水が警戒を強める。「奴らは結界を張るつもりかもしれない」

「結界?」

美雪が眉をひそめる。

「立ち位置が不穏だ。明らかに俺たちを包囲している」

「なら、一気に突破するしかねぇな!」

一馬が拳を鳴らし、前へ踏み込もうとする――「待て!」浮水が叫ぶ。

「連携スキル・四方閉鎖陣!」

四人の特級神徒が同時に印を結ぶと、俺たちの周囲に赤黒い障壁が立ち上がった。

「クソッ……!」

俺はガン・ダガーを抜き、結界を突破しようとするが――

ドォンッ!

衝撃が全身を貫き、跳ね返される。

「ちっ……これじゃ、外には出られない」

蓮が歯を食いしばる。「包囲された……!」

分断される。

「じゃあ、まずが俺がいかせてもらうぜ。いいよな、広目こうもく多聞たもん持国ときくに!」

巨漢の男が、ニヤリと不敵な笑みを浮かべながら言った。

「勝手にしろ。俺たちは先に行くぜ」

他の三人は淡々とした態度で背を向け、そのまま俺たちを残して歩き去る。

俺は眉をひそめた。

……――なぜこいつだけが残って、他の三人は先に進むんだ?

四人がかりで一気に襲いかかるほうが、効率がいいはずだ。

なのに、なぜ一人を残す?

まるで「時間稼ぎ」でもするかのような動きに、嫌な予感が走る。

「お前たちはもう、この増長様に個別に潰される運命だ」

男――増長と名乗った巨漢は、楽しそうに拳を鳴らした。

「まとめて全員、ここでぶっ潰す」

その言葉と同時に、彼の足元の地面が砕け、砂塵が舞い上がる。

「チッ……!」

俺はガン・ダガーを構えながら後退し、仲間たちの動きを確認する。

「避けろ!」

浮水が鋭く指示を出した。

「こいつ、個別撃破じゃない! 一気に全員を潰そうとしてる!」

「チッ……本気かよ!」

一馬が舌打ちし、拳を握りしめる。

「だが、ならこっちも――!」

彼が踏み込もうとした瞬間――

ドォォォン!!

増長が拳を振り下ろしただけで、大地が陥没した。

「ぐっ……!」

俺たちは弾かれるように後退する。

「なんてパワーだ……!」

美雪が息を呑む。

「全員まとめて相手するつもりなら……」

俺が考えを巡らせている間にも、増長は悠然とこちらを見下ろしながら拳を鳴らす。

「お前ら、これまで楽な戦いをしてきたんだろ?」

「……何?」

蓮が冷静に言葉を継ぐ。

「どういう意味だ?」

増長は嗤う。

「頭使うことばっかり考えて、戦場でどれだけ殴り合ってきた?」

彼は拳を振り上げ、次の一撃を準備する。

「力こそが戦場の真理だ!それを教えてやるよ!!」

ズドォォォォン!!!

轟音と共に、地面が大きく陥没し、俺たちは全員、吹き飛ばされた――。


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