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11-6: The Final Blow(美雪の戦い・後編)

「ふざけんなああああ!!」

増長が怒声とともに、拳を大地に叩きつける。

ズゥゥゥン――!

地面が砕け、無数の瓦礫が四方に飛び散る。

「……っ!」

私は剣を握り直し、瓦礫の隙間を縫うように駆け抜けた。

――だけど、足が沈む。

体が重い。肺が焼けるように痛む。

「……くっ……!」

副作用が、もう始まっている。

風過災撃の負荷が限界に達し、筋肉が悲鳴を上げていた。

あと……一撃で決めなければ――!

「ハァッ!!」

増長が跳び上がり、振り下ろした拳が大地を叩く。

ズガァァァァン!!

「……!」

瓦礫が弾け、衝撃波が全方向へ広がる。

その波を裂くように、私は前へ――

だが、足がもつれた。

「っ……!」

視界が揺れる。

身体が言うことを聞かない。

このままでは――!


「この戦争が終わったらさ――」


耳に、あの懐かしい声が蘇る。

「美雪って、何かしたいことある?」

いつもの昼休み。

凪ちゃんと並んで購買でパンを選びながら、そんなことを聞かれた。

「したいこと?」

「そう! だって、戦争が終わったらさ、今までできなかったこと、何でもできるようになるんだよ?」

凪ちゃんはそう言いながら、トレーにメロンパンをのせた。

「……私は」

私は少し考えてから口を開いた。

「どこか、静かな場所に行って、本を読みたいですね」

「えぇー! それだけ!?」

「私は、それでいいんです」

「むー……じゃあさ、海とかどう?」

「海、ですか?」

「うん! 私、泳ぐの好きなんだよね! 美雪は?」

「……泳ぐのは、あまり」

「じゃあ決まり!」

凪は私の手をとり、笑った。

「戦争が終わったら、一緒に海に行こう! その時は、私が泳ぎ方を教えてあげるから!」

「えっ」

「いいでしょ? 約束だよ!」


"約束"


戦争が終わったら、凪ちゃんと一緒に。

この戦いが終わったら、私たちは――。


「……まだ終われません!」

私は、最後の力を振り絞り――

「風過災撃・最終撃――!!」

ゴオォォォォッ!!

増長の巨体が揺れる。

私は風の刃となり、一気に彼の懐へと飛び込む。

「お前……!」

増長が拳を振りかぶる――

だが、遅い。

すべてがスローモーションに見える。

「これで……終わりです!!」

私は、渾身の突きを繰り出した。

レイピアが増長の胸部を貫く。

ズガァァァァン!!

その瞬間、風の刃が全方向へと広がり、増長の体を切り裂いた。

「ぐ……おおおおおっ!!!」

増長が絶叫しながら、膝をつく。

私は、剣を引き抜き、一歩後ろへ下がった。

「……はぁ……はぁ……」

私は息を切らしながら、増長の巨体を見つめた。

彼の体は静かに揺れ、そして――

「ハッ……速いってのは……こうも強かったのか……」

苦笑し、血を吐きながら、地面に倒れ込んだ。

「勝った……」

私は、ふっと息を吐き出す。

だが、その直後――

視界が揺れ、足元がふらついた。

「……あ」

力が抜け、私は膝をつく。

「……ぐっ……!」

全身が鉛のように重い。

意識が、遠のく――

ドサッ……

「……やれた、よね……?」

意識が薄れる中、私は仲間たちのことを思い浮かべた。

頼みました……みんな……賢くん……どうか、凪ちゃんを……

私は静かに目を閉じ、意識を闇に沈めた――。

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