このことは上原も認めた。
「颯玄、お前強いな。本当にこれまで組手をやっていなかったのか? 驚いたよ。技も重いし、当たっても倒れないじゃないか。相当稽古していたんだな。これなら掛け試しでも通用するんじゃないのか」
「掛け試し?」
ずっと祖父のところでしか稽古していない颯玄にとって、初めて耳にする言葉だった。
「お前、知らないのか。腕自慢の人たちが集まってやる野試合だよ。強い人も集まるらしい。基本的な約束事あるようだけど、今回のようにどちらかが負けを認めることで勝負がつくと聞いている。天気が良ければ毎日誰かしら集まってやっているらしいよ。もし明日、時間があるなら様子を見に行かないか? 時間が決まっているようなことは無いようなので、誰もいないかもしれない。でも、もしやっているところが見られれば、何か参考になると思うんだが・・・」
颯玄はその話にすぐ飛びついた。今、祖父に稽古を止められていることから欲求不満なのだ。1日目からこんな調子なら心が持たないと感じていたので、空手に関係することなら、祖父の目が届かないところでその気持ちを解消したいと思っていた。そしてもし、そのことが祖父に知れても、見るだけなら何も言われないだろうという気持ちも働いていた。