「ふわぁぁ…… 焼きソバ、うまかったぁ…… 俺の以外」
「ヴェリノさんも、上手でしたよ」 と、サクラ。
「サクラ。甘やかすのは、ヴェリノのためにならなくってよ!?」 と、エリザ。
「ま、いいじゃん! 俺は学園祭、ポーションと会計、がんばるから!」
「あっ、でも。たぶん、ヴェリノさんにも焼きソバ作ってもらう時間帯あると思うんです……」
「わかってる! 練習する!」
「ぅおんっ」
とりあえず、俺は、もふもふガイド犬のチロル様を抱っこしてカーペットのうえに転がった。
ふぅうううう……
(自分の腕前のなさに) 傷ついた心が、癒されるぅ……
そんな俺のそばにどーんと立ち、目だけで見下ろしてくるのは、エリザだ。
「さて、時間は有限よ! さっさと作戦会議、始めましょ」
「そうですね」
サクラがこくっとうなずいた。
―― いま、俺たちは学校から寮の部屋へ戻ってきたところ。
サクラもいるのは、ログアウト前に作戦会議をするためだ。
会議の目的は、いかにして
『いかにして
である!
「これから協力して、ヴェリノさんの逆ハーレムを育まないといけませんからね」
サクラの清楚感あふれるかわいい顔も、落ち着いた口調も…… なんかいつもより、ウキウキしてるな!?
そんなに欲しいのか、逆ハーレムのスチルが……!
「あ、まあ、まずはお茶でも……」
「お気遣いはいいですよ、ヴェリノさん」
「そうよ! あたくしたちに、お茶してる余裕などなくってよ」
エリザが腕組みをして、ばーんと胸をそらす。
「ほら、急がないと! サクラの飢えた弟妹が
「エリザ、言い方!」
「あ、大丈夫です…… お気遣いすみません」
サクラがペコッと頭をさげた。
―― なんと、サクラは5歳下、7歳下、10歳下に妹、弟、弟のいる4人きょうだいの姉。
なので、お昼は働いてる両親に代わって昼飯を作ってるんだって! 偉人伝かな?
とにかく、サクラときょうだいのためにも、急いであげなきゃね。
「じゃ、ま、さっそく! 俺のステータスみせるよ…… ぽちっとな」
「くぅぅん」
【みなさんに見せるには、右下の 『チーム内公開』 ボタンを押してくださいww】
「ありがと、チロル…… これだな!」
ぽちっとな。
チロルに言われたとおりにボタンを押すと、空中に大画面があらわれた。
≡≡≡ステータス ①≡≡≡
☆プレイヤー名☆ ヴェリノ・ブラック
☆職業☆ 学生
☆HP / MP☆ 33 / 11 ※
☆所持金☆ 1,620 マル
☆装備☆ 制服 /学生バッグ / 普通の靴 /ー /ー /ー
☆ジョブスキル☆
・勉強 lv.1
☆一般スキル☆
・掃除 lv.2
・料理 lv.2
・飼育 lv.2 ペット数:1
・買い物 lv.4
・おしゃれ lv.1
・外出 lv.4 商店街、小運河 (舟)
・魔法 lv.2 プチファイア、プチアクア
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
「あれ? HPとMPが、ちょっとだけ上がってる!」
「ぅおんっ」
【新しい称号 『諦めない心』 の効果ですね。HP・MP10%ずつup】
「おおおっ、やった!!!」
「ぅおんっ、ぅおんっ」
【諦めなくて、よかったですねww】
「うんっ…… あと、みてみて、エリザ、サクラ。俺、買い物と外出、もうレベル4になってるっ」
「「…………」」
あれ?
なんか、エリザもサクラも……
表情、ちょっと厳しめ?
「勉強とオシャレが、lv.1……」
サクラがつぶやいた。
エリザが腕組みをして、うなずく。
「大問題ですわね」
「ええっ……!? そうなの?」
「はい、ちょっと……」
サクラが言うには、エルリック王子とミシェルは、いまのままでも問題ない。
エルリック王子は
「けど! ジョナスとイヅナは、そうはいかなくてよ!?」
「そんなっ……!」
「イヅナさんはオシャレレベルを上げませんと…… そしてジョナスさんは、完璧主義、と言われています」
「言われている、って?」
「ジョナスさんは王子
「薄い本? 攻受?」
「それは 「別にいま、ヴェリノが知らなくてもいいことですわ!」
エリザがサクラをさえぎる……
だが、サクラは目を輝かせて 『薄い本』 と 『攻受』 について詳しく説明してくれたのだった。
おぉふ……
いや、引いてる場合じゃない!
俺は当事者なんだから、シッカリしなきゃ!
「だいたいわかった、サクラ…… ありがとな……」
「いえいえ。わたしも表紙イラスト頼まれるときがあるんですけど、人気があるのが意外と王子×ジョナスの誘い受けで 「ごほごほごほごほっ」
エリザがむせた。
「だっ、ですから! ヴェリノはイヅナとジョナスは、とりあえず後回しにすれば、いいと思いましてよっ」
「うっ、うん! そうだよね! わかった……!」
なんだか残念そうなサクラは置いておいて、俺はステータス画面に集中する。
「やった! 料理レベルと、魔法レベルが上がってる! 使える魔法、増えてる! プチアクアってなに?」
「プチアクアは、鍋が焦げ付きそうな時に重宝します」
「お料理で 『水 大さじ3』 にも使えるわね」
サクラとエリザが、口ぐちに説明してくれた。
「エリザさん、料理されるんですか?」
「し な い わ」
サクラとエリザ、本当に仲良くなったな!
みんなで楽しく逆ハーレム作り、か……
うん、悪くないかもね!
「さて、次は持ち物と称号だな!」
俺は空中に手をのばして、画面をスクロールした。
≡≡≡ステータス ②≡≡≡
☆持ち物☆
制服★ 学生バッグ★ 普通の靴★
潮干狩り基本セット レターセット(白)
Pブラシ Pトリミングセット(バリカン付) Pフリスビー
P骨カルガム
B『犬種別☆おしゃれカット集』
B『ヴェリノのお料理メモ (焼きソバ)』
☆称号☆
◆潮干狩り初心者 ◆なりそこないライフセーバー ◆企画初心者 ◆生き物ふれあい初心者 ◆幸運の使者見習い・初級 ◆恋愛強者 ◆諦めない心
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
「こっちは、称号増えた以外、特に…… ん? んん? あぁぁぁぁっ!」
思わず、指さして叫んでしまう俺。
「持ち物に、俺のメモが増えてる!」
「当たり前でしょう!? 書いたんだから!」
と、エリザは言うが。
「いや、けっこう、感動……」
俺、このゲームの住人なんだなぁ…… しみじみ。
サクラが、にっこり笑う。
「わたしも、初めてデザインのアイデアノート作った時には感動しました」
「そっかー! やっぱり、みんな通る道なんだな! エリザは? 最初何だった?」
「そっ、そんなのどうでもいいでしょ!」
「えーっ、なにかを思い出してるみたいだったから聞いてみたのに!」
「早く次に行かないと、サクラが帰っちゃうわよ?」
それも、そうか。
「じゃ、積もる話は、またこんど…… 次、いくか」
次はいよいよ、キャラとの交遊関係だ ―― !