≡≡≡ステータス ③≡≡≡
☆プレイモード☆
恋愛なし(好意値半減)/友情
称号効果 +25%
☆交遊 (PL)☆
◆エリザ・テイラー : 公爵家令嬢・学生・ルームメイト
◆サクラ・C・R : 子爵家令嬢・学生
◆リーナ2525 : ショップ 『リーナの万屋』 店長
◆ねこねこねこん : ショップ 『
☆交遊 (NPC)☆
◆エルリック・クレイモア : 王子
(好意値)643 (友情値)460
◆ジョナス・ストリンガー : 侯爵家次男
(好意値)23 (友情値)30
◆ミシェル・ブロックウッド : 伯爵家長男
(好意値)325 (友情値)180
◆イヅナ・T・J・クルス : 海運王家・男爵家長男
(好意値)65 (友情値)75
≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡
「好意値。王子、ぶっちぎりですわね!」 と、エリザ。
「しかも、前より伸びてるんだよ……」 と、俺。
「俺、なんかしたかな!?」
「いわゆる 『溺愛ルート』 に入ったんじゃないでしょうか」
ほんわりと、恐ろしいことを言ってくる、サクラ。
「でっ、溺愛ルート、だと!?」
「ぅおんっ!」 と、チロルがほえた。
【つまりですね、エルリック王子とは 『成就確定』 になったのでww】
「それは知ってるけど!」
「ぅおんっ!」
【そうすると王子は、通常なら反応しないヴェリノさんの言動にまで反応し、勝手に好意値をあげてしまうようになりますww】
「恋愛なしコースの意味!」
「ぅおんっ、ぅおんっ!」
【こうなったら、もう関係ありませんねww】
「おかしいだろうがよ……」
はぁぁぁ (ためいき)
チロルがじゃれついてきてくれるのもサービス満点で嬉しいし、モフモフをナデナデしたら、癒されもするけどさ……
はぁぁぁ (ためいき)
「なんで、こーなったかなー……」
「需要、ありますからねえ……」
「ううっ、そうなのか、サクラ……?」
「恋人との
「いらないよ! どこにいるんだ、そんな女子」
「「ここに?」」
エリザとサクラが、そろって手をあげる…… まじですか。
「あたくしも、1周めは、楽しくないこともなかったわよ?」
「そうですね。やはり、イケメンにチヤホヤ大切にされるって、気分いいですもんね」
「ふっ、ふたりとも……」
なんとも、衝撃が深い。
ううう…… 俺、これからエルリック王子に、チヤホヤ、ラブラブされちゃうの……?
こわいよぉぉぉお!
「交代! 誰か、交代をお願いします!」
「ヴェリノさん……」
サクラが、かくっと眉をさげた。しみじみとした口調で、俺にトドメを刺しにくる……!
「いまさら、もう遅いですよ……」
「いたたたっ…… 俺のライフは、もう…… ぐはっ」
「しっかりしなさい、ヴェリノ!」
エリザが、腕組みをして胸をばーんっと張り、言い放つ。
「甘々な溺愛ルートを避けるために、みんなで逆ハーレムを作ろうって決めたんじゃない! ここで諦めたら、試合終了よ!」
「えっ、エリザぁぁぁ! 親分! いや、コーチ!」
「えええい! うっとおしい! 取りつくんじゃ、なくってよ!」
「ヴェリノさん、ですから……」
なんだかしみじみとサクラに言われてしまったけど……
俺、なにかしましたっけ?
さて、ともかく、エリザの言うとおり。
王子の好意値がいきなり300くらい上がっても、諦めずに逆ハーレムだ!
「では、とにかく、今後の作戦ですけど……」
サクラが画面の一部を、とんとん指で叩くしぐさをする。
「今日の様子を見るに、次はミシェルさんですね」
「言うまでもないわね!」
「うーん異存はない。だけどさ」
俺には、気になってることがひとつある……
もちろん、エリザの 『悪役令嬢』 ぶりっこだ。
俺たちはわかってる、とはいえ…… やっぱり場の空気も悪くなると思うし、なによりそれで、エリザが悪い子だってNPCヒーローのみんなに思われたくないんだよね。
できたら今後は、普通に、みんなで仲良く遊びたい!
「エリザ。これからは、ミシェルたちの前で、無理に俺をイジめるのはやめない?」
「無理に……?」
きょとんとするエリザ。
「まさか! あたくしはあたくしで、楽しんでいてよ!?」
「ええええっ…… まさか!」
「ヴェリノ、あなたも一度、やってみればわかるわ! 悪役令嬢は、気分よくってよ……! おーほほほほほ!」
「え? え? そうなの? 無理、してないの? あんなにヒドい態度なのに!?」
「もちろん! むしろ、
「うううう……?」
まさか、こんなわけわからん解答がくるとは……! 困った。
ついつい、頭かかえちゃうよ!
サクラまで 「あ、それ、ちょっとわかります」 とウンウンうなずいちゃってるし。
「でしょ?」
「ええ…… まあ、普段できないことが 『役』 としてできちゃう快感、ってあるのかも、とか」
「そのとおりよ、サクラ! よくわかってるじゃないの! そうよ、他人を踏みつけ見下すなんて、こうでもなければできないわよね!?」
「わたしも、3周めはしてみようかな」
「オススメでしてよ!」
がっちりと手を取りあう、
なに? 悪役令嬢って、ストレス解消ツールなの!?
―― だとしたら、それを 『変えろ』 って俺のほうが、横暴なんだよね。
みんな楽しくゲームをする権利あるもんね!
―― あれ? でも、そのままエリザが悪役令嬢やると、NPCヒーローたちをダマしてることになるし。
なにより、エリザがNPCヒーローのみんなに嫌われまくっちゃうんでは……
「ああああああ……っ! わっかんなぁぁぁっい! どーしたらいーの、ねえっ!?」
ぽん
発狂する俺の肩に、優しい手が置かれた…… サクラだ。
「深く考えなくても大丈夫ですよ、ヴェリノさん…… みんな、それぞれにゲームを楽しんでるだけですから」
「だって、エリザが……」
「大丈夫です」
「そうよ!」 と、エリザも胸を張った。
「気にくわないことがあっても、まったく気を遣わず、それを上から指摘できる快感…… 断罪エンドが待っていようと、やめられるものではないわ!」
「ぐはっ…… そういえば、嫌われるだけじゃ済まないんだったっ……!」
悩みは深まるいっぽうだ……
そんな俺に、エリザは呆れたような目線を投げかける。
「ヴェリノ。あなたちょっと、
「へ? そう?」
「だいたいが、初心者で逆ハー挑戦するっていうのに、あたくしたちアドバイザーの身を心配している場合でして?」
「それが、ヴェリノさんの良いところですから、エリザさん……」
「サクラ! そっ、そんなこと、わかっていてよ!」
なぜか、扇で半顔を隠すエリザ…… そんなエリザを見て、サクラはほわっとほほえんだ。
ポシェットを肩にかけ、立ち上がる…… あっ、そっか。
サクラは、そろそろ
「ごめん、サクラ! サクラのステータス、見る時間なくなっちゃったね!?」
「いいですよ、ヴェリノさん」
「そうよ、たいして変化ありませんものね!」
「エリザ、いいかた……」
「いえ。ほんと、変化ないと思います…… それより、ベッドお借りしますね」
「ああ、ログアウトだな。どうぞどうぞ」
サクラはベッドに横になる。
これで目をとじれば、ログアウト完了…… だが、サクラは目をあけたまま、俺とエリザのほうを見た。
「学園祭が終わったら、みんなでピクニックに行きましょうね。NPCの男の子たちも、さそって」
「おお! 前に、そんな約束したな! 行こう行こう!」
「ワンちゃんたちを思い切り遊ばせてあげられるところに、しましょうね」
「うんうん! エリザにもらったフリスビーもってね!」
「はあ!? あたくし、そんなことしたかしらっ!?」
エリザがあさっての方向をむく…… 耳が真っ赤だ。
俺とサクラは、目配せして笑った。
―― そうだよね。
悪役令嬢に断罪エンドが待ってるなら、断罪できないくらい、みんな、仲良くなっちゃえばいいんだ!
「お弁当もつくりましょうね」
「うんうん! サクラ、教えて!」
「わかりました」
「あっ、あたくしは! そんな庶民くさい真似はっ 「では、お先です」
エリザが叫び終わるまえに…… ベッドのなかのサクラは、明るい海の色の目をつむる。
―― 次の瞬間、サクラの姿は、幻みたいに消えていたのだった。