どこにも記録されていないような、
でも、なんとなく感覚がわかる程度の、
現実かもしれないゲームかもしれない、
その程度の曖昧なところのお話。
先手を取り続ける暗殺者がいたと思って欲しい。
その暗殺者は殺される者がわかる。
殺される者がわかると、常に先手を取って殺す。
手口は一緒。首を一撃でスパッと。
首切りアサシン。
名も無き先手取りの暗殺者はそんなことを言われていた。
なぜ先手を取るのか。
暗殺者の言い分としては、
「他のやつらがへたくそなんだ」
そんなことを言う。
「美しいとかそんなことはわからないけれど、
へんな殺し方はなんとなく好きじゃない。
だから、誰が殺されるかわかるなら、
先手とって殺すだけ」
そして、暗殺者は苦笑いして、
「先手必勝とか言う言葉は誰が作ったんだろうな、
誰も勝っちゃいないのにな」
守るべきものがあるわけでもない。
ただ、殺すという役割を、
自分が背負ったほうが美しく殺せるだけ。
スパッと、一撃で。
何を相手にしても、一撃で殺せるだろうか。
ゆるぎない信念があるわけでもない。
それでも、大体殺すのは自分のほうがいいと、先手取りの暗殺者は思う。
どこかの子供を殺すという、そんな情報を得たとき。
この暗殺者は、依頼人を殺した。
その程度には精度がよくないけれど、
一撃必殺、先手取りの暗殺者は、飄々といる。