あーあ。と思った。
僕は紙屑のように捨てられた。
要らない紙屑を捨てるように、ためらいもなくポイッと。
結構いろいろなものから捨てられたなぁ。
長いこと付き合っていた彼女とか、
結構がんばって働いていた会社とか、
幼馴染の友人とか、
遺産の分け前が減ると言って家族からも捨てられた。
とにかく、思いつく限りのものから紙屑を捨てるように捨てられた。
要らないものはゴミ箱にポイ。
僕なんてその程度だったらしい。
僕は弱い存在だ。
それこそ、ペラペラの紙みたいな存在で、
力が強いこともない。
我を通そうとすることもない。
いてもいなくてもいいような感じの紙きれのような存在。
紙きれだったら紙屑にしてポイ。
まぁ、みんなにとってはそんなものだったんだろうなぁ。
たださ、紙は紙でも、何かが書きつけてある紙ってあるよね。
何も書いていない紙だったらメモとして使える。
何かが書きつけてあったら、
それが何かの役に立つかもしれないよね。
書いてあることがわからなかったら、
どんなにすごいことが書いてあっても、
紙屑になっちゃうってことだよ。
紙と、記されたことは、
価値がわかる誰かにしか役に立たないということかもしれないね。
紙屑のように捨てられた僕の中には、
世界中の精神や情報や生命の営みにアクセスできる鍵がある。
紙屑のように捨てられたけれど、
僕の中には、神への鍵があるんだ。
世界を意のままにして、すべてを知る鍵がある。
この場合の世界は、広げようと思えばどこまでも広げられる。
宇宙とされることの秘密まで解き明かすことができる。
紙屑とされた僕には、この世のすべての答えが書いてある。
みんなそれを読めないから紙屑として捨てた。
僕はもう少し、この世界をこのままに流していこうと思う。
鍵を使って介入するのは、なんとなく好きじゃないだけだ。
僕を捨てたみんながどうなろうと、
捨てられたからもうどうでもいいんだけど、
まぁ、ほどいい加減で適当に生きていればそれでいいよ。
僕はゴミ箱に捨てられた紙屑の神様。
鍵を使えば世界はいくらでも変えられる。
屑みたいな世界かもしれないけれど、
僕はそんな世界も愛している。
介入するにはもったいないほど混沌としている。
たくさんの思いが書き連ねられた紙のような、
頼りないそんな命がたくさん生きている世界だ。
それぞれの思いや経験を紙屑にしちゃいけないね。
世界を変えるようなものが記されているかもしれないね。
そんなものを紙屑として捨ててはいけないし、
混沌の世界をまっさらな平和で覆うのもよくないと思うんだ。
紙屑のように捨てられたけれど、
僕はこの世界を愛している。
世界を変える鍵がなかったとしても、
僕は変わらずこの世界を愛したと思う。
介入は好きではないけれど、
この鍵を使って、紙屑のように捨てられてつらい思いをした人を救おうか。
うん。なんだか神様みたいだね。
人知れずすごい力を持っている、
紙屑の神様。
何でもできるけれど、まずは笑顔を増やそうか。
結局、何でもできるけれど幸せを願っちゃうんだよなぁ。
さて、世界をちょっと幸せにしてくるよ。