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第126話 消えたお菓子

僕は引きこもりをしている。

学校に馴染めなくて逃げ出した。

まぁ、いろいろ問題があったと思ってほしい。

僕の方にも馴染めないことがあったし、

学校でも曲げられない、学校なりの決まりがあった。

それらが歩み寄れないならば、

僕の方から逃げ出すのが手っ取り早い。

そんなわけで僕は引きこもっている。

本来ならば学生である僕が昼に出かけると、

何かと奇異の目を向けられるので、

僕は夜に行動することが多くなった。

親もまだまだ健在でいるし、

親の育て方が悪いからなどと、

僕の所為で言われるのはよくないからね。

僕はそんなわけで引きこもりだ。


僕は夜中のコンビニに出かけて、

ジャンクなものを買って帰る。

お菓子はいいよね。

口に優しい気がする。

チョコレートは苦みと甘みととろける感じがいいし、

クッキーのサクサクした食感もいい。

最近増えているグミも個性的なものが多くて楽しい。

ガムは嚙んでもなくならないので、口さびしい時にいい。

お菓子って、なんだか賑やかなイメージがある。

お菓子の包装がそう思わせるのかな。

おとなしいというよりも、賑やかだよね。

幼い頃に行った遊園地のような感じ。

精一杯楽しいを表現している感じ。

なるほど、お菓子を食べて楽しい思いになるのを、

こうやって包装から表現しているんだなと僕は納得する。


学校って、どうだったんだろうなぁと僕は思う。

基本、学ぶべき場所ではある。

同じ地域あたりの同じ年ごろの子供が集められるだけの場所ではある。

それでも、同じ年ごろの子供たちだから、

気が合えばとても楽しいものだろうなと思う。

それこそ、お菓子を食べるように楽しく賑やかにも過ごせるかもしれないなと思う。

グループができたりして、

放課後にどこかに行くとか、

そんなこともあったかもしれない。

僕は賑やかなお菓子のような学生になれなかったんだなぁと思う。

悲劇的ではないけれど、

普通になれなかったのは、ちょっと寂しい。

なんとなく、はじき出されたような気持ちになる。

売れ残りのお菓子のようなものなのかもしれない。

売れ筋でないから販売を取りやめるようなもの。

やっぱり賑やかなお菓子が主流なんだろうなと思う。

変わり種って、やっぱりすぐに消えちゃうよね。


僕は夜中の部屋で、お菓子に手を伸ばそうとする。

そこにあったあるはずのお菓子がない。

お菓子が消えた?

あれっと思って視線を巡らせる。

あるはずのお菓子があるべき場所の近くで、

ウサギのようなネズミのような、小さなネコのような、

なんだかよくわからないフワフワした白い生き物みたいなものがいる。

その生き物は美味しそうにお菓子を食べていて、

食べ終えると小さくゲップをした。

僕の視線に気が付いたその生き物は、

「美味しいですね、お菓子」

と、しゃべった。

「あ、申し遅れました。わたくし異世界からやってきました神の使いです」

「へ?」

「異世界に適応する若い方を探していたんですが、皆様お忙しくて」

「はぁ」

「あなた様は私が見えますし、お時間もありそうです」

「まぁ、時間はありますけど」

学校に行っていないから時間はある。

夜中にお菓子を食べる程度の時間が毎日ある。

「有り余るお時間で異世界で活躍していただけますか?」

「どうすればいいの?」

「このお菓子、異世界でいただきますと、能力値がものすごく上がります」

「はい?」

「これらのお菓子は異世界にないものです」

「そういう異世界なんだね」

「お菓子を異世界で食べて、いろんなことを解決してください」

「ふむ」

どうやら生き物の言うことには、

お菓子によっていろいろな能力上昇があって、

それらを駆使して異世界の問題を解決してほしいとのことと、

異世界とこの部屋はいくらでも往復が可能であるらしい。

僕はお菓子を買い込んで異世界に行って、

異世界でお菓子を食べて揉め事解決すればいいらしい。


学校からはじき出された。

賑やかな売れ筋お菓子のようには生きられなかった。

人知れず消えていく変わり種お菓子のような僕だった。

その僕がお菓子で活躍できるかもしれないという。

いいじゃないか。

とても変わった生き様も。

とても変わったお菓子だって。

「まずは、どうすればいいのかな」

「はい、それでは私の自己紹介から」

不思議な生き物の自己紹介から、

僕の異世界お菓子無双が始まる。

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