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54通目 美容師さんに宛てて

町の美容院の美容師さんへ


美容師さんに担当してもらってから、

かなりの月日が過ぎました。

小さな町の美容院は、私のおしゃれを支えてくれた場所でした。

美容師さんも、私の年齢を考えれば、

かなりのお歳になっていそうですが、

そう見えないあたり、美容というものを仕事にされている、

プロであるのだなと思います。

いつまでもお若く見えますので、

本当の年齢がわかりません。

私がおしゃれに目覚めた頃からずっと、

美容師さんはお若いままのような気がします。

美容師さんに担当をしてもらってから、

私の身だしなみは飛躍的に向上しました。

人並みに見られる身なりになりましたのは、

美容師さんのアドバイスのおかげです。

ありがとうございます。

この度、私はこの町を出ることになりましたので、

美容師さんにしっかりお礼のお手紙をしたためていこうと思い、

こうしてお手紙を書かせていただいております。

あまり文章が得意ではありませんが、

感謝が伝わるよう、書きます。


美容師さんのお店をはじめて訪れたのは、

小学校を卒業したばかりの頃でした。

これから私は中学生というお姉さんになる。

お姉さんというものはおしゃれなものだ。

そんな、おしゃれへの憧れからお店にやって来ました。

美容師さんはまだまだ幼い私をバカにすることなく、

どんなお姉さんになりたいかを丁寧に聞いてくださいました。

中学生というものがとてもお姉さんと思っていた私です。

背伸びをしたおしゃれを想像するのですが、

幼すぎて、それを表現する言葉を持ち合わせていません。

美容師さんは、そんな私におしゃれを表す言葉を教えてくれます。

私の顔の特性や、頭の形からこのような髪型が似合うなど、

おしゃれを丁寧に花開かせてくださいました。

私はお姉さんになれたと、とてもうれしかったのを覚えています。

それからこのお店に通うようになりました。

美容師さんは覚えておられるかわかりませんが、

あの時、私に似合う髪型などを示してくれたことで、

みんなと同じでなくても、私に似合うものがあればいいと、

私のおしゃれの基本ができたように思います。

私を魅力的に見せる手段。

それは私自身を知り、信じること。

美容師さんが導いてくれた、私のおしゃれの軸です。

この軸があれば私はブレることがありません。

最初に私におしゃれの軸を通してくださったことで、

私は私自身にブレが少なく生きております。

美容師さんのおかげで、

自信を持って生きていけるようになったと言っても過言ではありません。


それから学生時代も、

このお店に通い続けました。

流行のおしゃれなども学校でありましたが、

私は流行も取り入れつつ、

美容師さんにおしゃれの教えを請い続けました。

美容師さんもおしゃれの流行はしっかり取り入れてくださり、

また、私に似合うものを提案してくださいました。

学校では化粧禁止ではありましたが、

美容師さんの教えを取り入れたメイクを休日にして、

学生ではありましたが、大人の仲間入りをしたような気分で、

おしゃれをして町を歩きました。

なんだか、このまま素敵な大人になれるような、

そんな明るい未来があるような気がしました。


学生が終わりますと、明るいだけの未来ではないと知っていきます。

仕事に追われ、いろいろなつらいことも知っていきます。

そんな中でも、私は美容師さんに教えてもらったメイクをして、

背筋を伸ばして仕事にあたりました。

しょげた表情であったり、

不満げな表情であることは、

私を魅力的に見せてはくれません。

おしゃれというものはやせ我慢でもあります。

自分の魅力を最大限に出すことは、

私自身を律することでもあると美容師さんは教えてくれました。

魅力的に見えるということは、

印象を良くすることであり、

仕事に対する信頼を得やすくなることでもあります。

外見が全てではありませんが、

第一印象を整えることが、

どれほど仕事で役に立ったかわかりません。

最初の信頼を得やすくなることが、

それからの仕事にもつながっていき、

私の仕事のキャリアも上がっていきました。

美容師さんの教えてくださったおしゃれが、

私を高めてくださったのだと感じました。


そして、この度、私は結婚することになりました。

相手の方は、今はこちらの会社に来ている方ですが、

近い将来遠くの市に行くことが決まっています。

私はその方についていくことになります。

新居もすでに決まっています。

引っ越しももうすぐ始めます。

結婚式まではもう間もなくになります。

私は今の会社の支部に行くことが決まっており、

美容師さんのお店に来るのは、多分これが最後になります。

なじみのない場所に行くことになりますが、

結婚相手はとても誠実な方です。

ご心配なさらなくても私は元気でやって行けます。


結婚相手の男性からは、

よくセンスがいいと褒められました。

私の魅力をよくわかっていると言われました。

安っぽく見せずに、芯のある女性に見えると、

そんなことをよく言われました。

そんな風に褒めてもらえたのは、

私としてはとても嬉しく、

こんな女性になりたいと思っていた女性に、

私はなれたのだなと思いました。

美容師さんが私のおしゃれを育ててくださったおかげです。

丁寧に私のおしゃれを磨いてくださったおかげで、

私は理想の大人の女性になり、

こうして幸せになろうとしています。

ありがとうございます。


美容師さんのお店に通って何年も経ちました。

はじまりは幼い頃のおしゃれへの憧れでした。

そこからおしゃれを丁寧に磨かれて、

私はこうして幸せになります。

私が幸せになれましたのは、

美容師さんのおかげです。

美容師さんの導きにより、

私は理想の私になることができました。

あの頃こうなりたかった私に、私はなれています。

美容師さんが何年もかけて私を磨いてくださったおかげでもありますし、

美容に対するプロ意識でもありますし、

また、私というお客に対する誠実さと愛でもあると思うのです。

真心という言葉は、このようなことに対して使うのでしょう。

長年、心のこもったサービスをありがとうございました。

私は近いうちに遠くに行きますが、

美容師さんの教えは忘れません。

私は教えを守りつつ、

これからも理想の私を磨き続けます。

理想の私は、おしゃれであることもそうですが、

周りをよく見て、困っている人に手を差し伸べ、

笑顔を絶やさず明るい人であると思います。

それが私の軸になっています。

この軸をしっかり私の中にいれて、

私は背筋を伸ばして生きていこうと思います。

私は、美容師さんからたくさんの愛をもらいました。

私の家族や、学生時代の友達、会社の同僚や上司、そして、結婚相手からも、

たくさんの愛を受けて今までやって来ました。

私は愛を与えるように生きていきたいと思います。


これから遠くの地で、私は生きていきます。

そこで私はみんなに愛を与える人になりたいと思います。

美容師さんの魅力的な笑顔を思いながら、

私も笑顔で生きていきます。

どうか、これからもお元気で。

お身体に気を付けてお仕事を続けられてください。

今まで、ありがとうございました。


理想の自分になれた花嫁より

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