【俺の渾身の一撃を喰らえ〜〜!! ケケケケケケ!!】
可愛いトイプードル風の見た目をしたフワモコぬいぐるみのチャッピーが、まさかの呪いアイテムだったなんて。
「あ、危ない! 沢田くん!」
「え?」
チャッピーがまた沢田くんに飛びかかってきて、今度は沢田くんの足にガブ! っと噛みつく。
「うっ……!」
渾身の一撃を喰らった沢田くんの体がグラッとよろめいた。
「沢田くん!! 大丈夫⁉︎」
大変だ──沢田くんが噛まれちゃった!
沢田くんが呪い殺されちゃう!!
そんなの、嫌だ……!
チャッピーの一撃が効いたのか、沢田くんはガクンと膝をついた。私は驚いて、思わず沢田くんに触れようと手を伸ばした。その瞬間。
【くああああああああ〜〜〜〜!!! \(//∇//)\】
何故か大喜びの悲鳴が、沢田くんから発せられた。
【佐藤さん……本気で俺のこと心配してる……⁉︎ チャッピーはただのぬいぐるみなのに、危ない! って! 大丈夫⁉︎ って!! \(//∇//)\ 大丈夫に決まってるよこんなの! 全然痛くもかゆくもないよ! それなのに佐藤さんってば!! もう……もう……可愛すぎか!!!】
……えっ?
えええええええ〜〜〜〜⁉︎
大丈夫なの⁉︎ っていうか、グラッとして膝をついたのって、もしかして──。
【あかん。キュン爆死_:(´ཀ`」 ∠):】
……私のせい??
沢田くんは目を閉じて胸を押さえながら床に倒れた。
えええええええ〜〜〜⁉︎
待って待って、待ってよ沢田くん!!
キュン爆死ってなに? どういうこと⁉︎
聞くに聞けないもどかしさが募る私の足元で、チャッピーが嬉しそうにダンスを踊る。
【ケケケケケケ!! どうだ、俺様の一撃は効いただろう、沢田空!! これでもうお前の体は俺のものだーー!!】
うっさいわ。もうチャッピーどうでもよくなった。
「それにしてもよくできてるなあ、この犬のおもちゃ。本当に生きてるみてえで気持ちわりーな」
小野田くんはしかめつらで踊っているチャッピーの首根っこを掴んだあと、ポイッとそれを窓の外に放り投げた。
【うわあああああーーー!!! せっかく沢田を倒したのに!! 覚えてろよ、大男めええええーーーー!!!】
チャッピーの恨みの叫びが遠ざかる。
グッバイチャッピー。二度と戻って来なくていいよ。
倒れたままどうやら寝てしまったようで、動く気配がない。
「ベッドに運ばないと……ね」
自分に言い聞かせるようにして、沢田くんの腕を肩に乗せようと試みる。
でも……か、顔が近いよ!!!
少し乱れたサラサラの黒髪の隙間から普段は隠れがちの凛々しい眉と形のいい額がチラ見えしていて、ドキドキするよーっ!!
こうして近くで見ると意外と喉仏がしっかりとあって、男の子だなーって感じがする。首筋も色気があって、なんてかっこいいの?
あかん。キュン爆死_:(´ཀ`」 ∠):グハァ。
って、私まで一緒になって倒れちゃうよーーっ!!
「ったく、何やってんだ。どけっ【乱暴でごめんよ沢田のお友達さん(>人<;)】」
私がモタモタしているのを見るに見かねた様子で、小野田くんが沢田くんをヒョイとお姫様抱っこした。さすが身長が高いだけあって小野田くんはパワフルだ。
小野田くんもちょっとカッコいいかも……。
【あああああ〜〜〜!! 俺、沢田を抱っこしてるよ〜〜!! なんか友情って感じ? これが友達って感じ? 今まで知らずに生きてきたなんて、なんて俺はバカだったんだ!! 「友達? なにそれおいしいの?」 とか言ってツッパってきた今までの俺に○じめの一歩ばりの必殺のデンプシーロールを食らわせたいっ! とりあえず沢田が目を覚ましたら告白しよう。俺の初めての友達になってくださいって……!!】
──うーん。この声さえなければなあ。
すると、「ううん……」と抱っこされた状態のまま、沢田くんが唸った。
【はぅあっ!! もう起きるのか⁉︎ 待って、心の準備が!!】
焦る小野田くん。しかし沢田くんは目をこすり、その瞳を開けてしまう。
「だ、大丈夫か、沢田っ?【なーんちゃって。わざとらしいんだよ、バカ! ひゃあああ〜〜!! 恥ずかしい〜〜!!\(//∇//)\】」
「!!【えっ、何この人⁉︎ なんで俺を抱っこしてんの⁉︎ っていうか結局誰なの⁉︎ 怖いよ〜〜!!!。゚(゚´Д`゚)゚。】」
すれ違う二人の心。私はもう何も言わずに見守る覚悟をした。