ついにスポーツフェスティバルという名の大ドッジボール大会が幕を開けた。
この大会では一年生6クラス、二年生6クラス、三年生6クラスが参加し、それぞれAとBのチームに分かれて全部で36チームが戦うことになる。
それをAからDまでの予選ブロックに振り分け、勝ち上がったベスト4で決勝トーナメントを行う仕組みだ。
予選トーナメントで3回、決勝トーナメントで2回。
全部勝ち上がるまでに5回も戦わなくてはならない。ちょっと面倒くさい。
私たち2年F組はくじ引きでトーナメントのDブロックの一番端っこになってしまった。
そのくじはリーダーである沢田くんが引いたので、予想していた通りではある。
【くじを引いても最下層_(┐「ε:)_】
くじのあとでフラッといなくなった沢田くんを探しに来てみると、沢田くんは校庭のサッカーゴールの裏で膝を抱えた体育座りの姿勢で落ち込んでいた。
もう、可愛いから許すしかない。
「沢田くん、トーナメントの端っこになったからって条件同じだから、誰も怒ってないし大丈夫だよ? みんなのところに帰ろ」
「あ……【佐藤さんっ……! こんなどうしようもない俺を迎えに来てくれるなんて、天使かっ!! っていうか今日も可愛いんですけど、マジその髪型似合ってるね。ってどうして初めて見た日に言えなかったんだろう死ねよクズ】うん」
言わなくても伝わってるから大丈夫だよ、沢田くん。
嬉しくて口元が緩みそうになるのを必死で堪える。
「森島くんのAチームも同じDブロックの端だから、対戦できるのはDブロックの決勝だね」
今日、人一倍頑張って森島くん率いるAチームに勝ったら、沢田くんと手繋ぎでデートできるってこと、沢田くんはまだよく分かっていないみたいだ。
「……【そういえば森島くん、俺には絶対負けないって言ってた……。俺、森島くんになんか嫌われるようなことをしたのかな(´;ω;`)うっ。まあ、だいたいの人は俺のことなんか嫌いなんだろうけど】」
沢田くんは憂鬱そうにため息をつく。
【やだな……。誰とも争いたくないのに、なんでみんな俺と勝負したがるんだろう】
それは沢田くんが魅力的だからだよ。
沢田くんが誰よりも目立って、光り輝いているからだって私は思う。
「がんばろうね、沢田くん。勝って森島くんのことギャフンと言わせちゃおうよ」
「佐藤さん……」
沢田くんが顔を上げてキラキラした瞳で私を見つめた。
【負けてギャフンって言う人、見たことない。逆に『ギャフンと言わせてやろうぜ!(๑• ̀д•́ )✧』って言う人の口からしかギャフンって聞いたことがない。矛盾してるよなっていつも思う。でも佐藤さんのギャフンめっちゃ可愛かったから心のメモリーに刻んでおこう。ギャフン_( _´ω`)_】
やめてやめてやめてやめて。なんか恥ずかしい!!
するとその時、サッカーゴールのネットが揺れた。誰かがドッジボールで使うボールを蹴り込んだようだ。
「沢田! こんなところにいたんだな! 探したぞコラア!!【おーい、こっちだよ〜んヽ(*^ω^*)ノ】」
振り向くとそこにはジャージに両手を突っ込んだ小野田くんがいた。
「小野田くん!」
久しぶりだな、小野田くん。
っていうかこういう行事に参加する人だったんだ、小野田くん。
やっぱり真面目なんだな、小野田くん。
「……あの人!【怖い人、来たーーっ!!((((;゚Д゚)))))))】」
沢田くんも驚いたのか、あちこちに砂をつけたまま立ち上がる。
「てめえの次の対戦相手はこの俺のチームだ!! 首を洗って待っていろ、沢田!!【戦った
なるほど、小野田くんの狙いはそれか。
小野田くんはまだ沢田くんと友達になるのをあきらめていなかったらしい。
ただ、
「……!【佐藤さんと俺の邪魔をしに来たのかな? だ、だめだ! 佐藤さんは渡さないぞっ!】」
沢田くんの方は友達になる気がゼロですが。
むしろ本物のライバルとして敵意むき出しで、私の横に立つ。
いつか誤解を解かないといけないと思ってはいるんだけど、
【佐藤さんは俺が守る!!】
沢田くんのヒロイックなセリフとキリッと引き締まった表情が死ぬほどカッコ良くて、もうずっと誤解させといてもいいかなって思っちゃう。
小野田くんには悪いけど。
「なんだ? その表情は。俺に勝てるとでも思ってんのか? 上等だコラア! かかってこいや!!」
「勝つ……!」
二人は睨み合っているけど、内心はこう。
【盛り上がってまいりました〜ヽ(*^ω^*)ノ】」
【でもやっぱり怖いよ〜〜!!。゚(゚´Д`゚)゚。】」
虚勢ライオンとぴよこの戦い。次回いよいよ対決へ!!