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第64話 先輩、魔法少女バトルを見守る①

「いやぁ、錬金術師vsSランク探索者は意外と面白い采配だったね。それでは次の対戦に行ってみよー」

「今回はNYAO枠で入ってきた中学生の登場です!」


 あれ? NYAOの変身アイテムは14歳までで、スペアボディの配布条件は15歳〜だったはずでは?


「後輩、今の発言矛盾してない?」

「してませんよ。発売当時は14歳で、スペアボディ配布時に15歳になった幸運の星のもとに生まれた子がいるんですよー」

「へぇ」


 どんな子だろ?

 様子を見てたら思わず飲みかけのお茶を吹き出しそうになった。


「ゲホゲホ」

「どうしました、先輩?」

「お水が気管に入った」

「まぁ大変」


<コメント>

:ナイスボート

:ナイスボート

:何、この映像

:あ、ボートが沈んだぞ

:誰だ、炸裂玉投擲したやつは!

:沈んだ場所からセンパイ生えてきたw

:なんだこの茶番


「悪いね、お待たせして」

「今回の映像はお見苦しい時がある時に頻繁に割り込無予定の猫丸先生オリジナル漫画です」


<コメント>

:NYAOの作者と提携してるって、そっち方面での提携でいいのか?

:後輩ちゃんだしなぁ

:そりゃ権利関係では表に出さないか

:如何に先輩を可愛くするかに注力を傾けるかで悩む人だし

:最近衣装代は別フォームになっちゃったから

:ああ、スパチャはコメントに流れないんだっけか


 いや、びっくりした。

 出場してきた二人は僕の顔見知り。というか秋生の婚約者とそのお付きだった。

 14歳で、15歳になれる相手なんて中学生しかいないと思ってたけどさ。

 こうまで身内が続くと作為的なものを感じるじゃんね。

 初めから勝者が決まってるやらせなのかって。


「あれ、後輩。これって2名出てきたってことはこの二人が戦うの?」

「いえ、人数が多くなったのでここから先は2on2で」


 トーナメント戦て話はどこいったんだよ。

 まぁ、出場者が合意してるのならそれでいいか。


「タッグマッチか。相手は?」

「今出てくるようですよ」

「どうもー、どうもどうも! 新進気鋭漫画家の猫丸ミミです!」

「失礼する。科学者のサルバだ」


 母さんじゃん!

 しかもサルバさんも一緒に!


「後輩、いつ連絡来たの?」

「さっきです。まだ枠は余ってるかと」

「つまり無理やり捩じ込むためにタッグマッチになった?」

「てへっ」


 可愛い。

 だからと言って誤魔化されないぞ。

 とはいえ、一応辻褄合わせはしないとな。


「えーと、諸事情あって急遽メンバーの入れ替えがあった模様です。今回からタッグマッチになりますがみなさん大丈夫でしょうか?」


<コメント>

:唐突すぎる

:いや、でも女の子同士の対決だからいいのか?

:ミミ先生、普通に可愛い枠の人だったし

:前までむさ苦しい対戦だったので目の保養

:日曜朝枠なのは変わってないか

:男児向けから女児向けになった感じ?

:隣のうさ耳の人は?

:うさみみ博士の親戚かな?


 お、うまい具合に誤魔化されてくれたかな?


「はい、彼女はミミ先生のアシスタントの方です。どうもNYAOに出てくる敵方、ラビットエルフのモデルになったようですよー。うさ耳は私が支給しました! いえい!」


 ナイス後輩。良い援護射撃。

 これなら謎のうさ耳研究員が裏で暗躍していたうさ族だとバレる必要はないな。

 安堵して先程のお茶を付け直して……


「私はこう見えてうさ族だ」

「あたしはにゃん族だよー!」

「ぶふーーー!」


 吹き出した。

 嘘だろ、あの人達。自分からバラしやがった!


 まだ世間はダンジョン種族にあまりいい感情を持ってないっていうのに、あまりにも場当たり的すぎる。

 それともあれか? この大会に出場することによって定型を組んでることをアピールするつもりかな?

 そういうのは先に許可を取ってから行なってほしい。

 突然振られた僕が困るじゃないか。


 と、ここで後輩の援護射撃。

 即座に画面が切り替わり、湖畔をボートが流れていく風景になった。

 母さんの制作したアニメーションだ。


<コメント>

:ナイスボート

:ナイスボート

:把握した

:なるほど、運営側が非常事態になると流れるわけね

:思いつきで大会開くからや

:それで2回戦無事終了させた手腕はすごい

:3回戦で破綻したけどな

:あ、炸裂玉の投擲風景や

:そろそろ準備が終わったのかな

:慣れって怖いわ

:あ、沈没した船から先輩はえた

:草


「えー、大変失礼しました。そういう思い込みが激しい人たちですが、大会規定を乗り越えるレベルには実力はあるので油断しないでくださいね。さっきの中学生も同様です」


<コメント>

:じゃあなんで漫画家やってたんだって話。

:おい、それってつまりNYAO変身グッズってそれだけ危険ってことじゃないのか?

:それを女児に売り渡していた馬鹿者がいると聞いて

:まぁ実際に使用するのはスペアボディだし

:ならええか、とはならんだろ!

:それはそう


「私は大丈夫です。むしろ原作者相手にNYAOグッズのお披露目の機会、光栄でしてよ」

「私も同じく。原作者だからと言って手は抜けませんので悪しからず」


 秋生の婚約者たちは問題ないとしてくれた。

 そしてうちの問題児の方は、


「問題ナッシン! それに、私もそれを持ってるので勝負はフェアよ」

「私もだ」

「奇しくも魔法少女大戦となってしまったが、これはどうなってしまうかー?」


 急にノリノリになる後輩。

 さっきまでの変身ヒーローには塩対応だったのに、この変わり様よ。

 やっぱり男の子的かっこよさより、女の子的可愛さを好むか。

 まぁ僕の服装のチョイスを見てれば可愛い物好きなのは明白だし。


「それじゃあ、気を取り直して行ってみよっか」


<コメント>

:誰ちゃん?

:先に自己紹介よろしく


「それではみんな、自己紹介をどうぞ!」

「小早川晶、Cランク探索者よ」

「同じくCランクの清水優希」

「にゃん族戦士ミザリーよ」

「うさ族研究員、サルバだ」


<コメント>

:ミミ先生?

:おいおい、これやらせじゃなくて本物なのかよ

:ここで取り出したるは魔法のコンパクトケースか

:魔法少女対決! wktk!


「いくわよ優希」

「オッケー晶ちゃん!」


──メイクアーップ、レディ!


<コメント>

:REC

:REC

:REC

:中学生の生着替えとか最高やな!

:スペアボディだけどな

:通報しました

:あきらかに録画してるやつはいいのかよー!

:邪なコメントを出してないからセーフ

:私は貴重なデータサンプルとして

:女なので無問題。あと娘が使うかどうか迷ってたので参考までに

:私も扱う上でのサンプルなので。ぐへへ

:おい最後!

:何に扱うつもりなんやろなー?

:汚いおっさんだと即座にアカウント凍結されるのに、後輩ちゃんの同類だと見逃されるのなんなんや

:元々、ここは蘇ういう場所だし


「さて、我々もいくか」


──うさ族、メイクアーップ!


「年季の違いを見せちゃうぞ!」


──にゃん族、メイクアーップ!


<コメント>

:見た目は中学生ぐらいなのにお姉さんぶってていいよね

:変な色気がある

:NYAOの変身グッズなのに、うさみみバージョンがあっていいの?

:ちょっと悪役っぽい変身なの凝ってる


「ミミ先生とサルバさんのは特別版で、なんと大人向けメイク機能の先行試作版だったりします」


<コメント>

:ガタッ

:ガタッ

:ガタッ

:えらい食いつくやん

:そりゃ、ルージュやシャドウ、白粉だけでもメイクできなくはないけど

:全部は叶えてくれてないっていうか

:そこにあれとあれとアレもあったらいいのにって気持ちが


「全部取り揃えてます。その上で、そちらは完全におまけ。可愛く仕上がった彼女たちのご活躍をご覧ください」

「バリアパックですよー!」

「く、恐ろしい威圧感! ここから先、一歩も立ち入ることができなさそうよ!」

「どうしよっか、晶ちゃん」


<コメント>

:大人のメイクは時間がかかるもんな

:中学生のメイクがさっと仕上がったのに対し、こっちは変身タイム長いな

:さすが大人向け、やることが多い!

:すっぴんは絶対に見せられないから

:パックは外からの脅威の他に心の安全も守ってくれるんやなって

:なんか見てて応援したくなるな

:背伸びした可愛さと、努力の果てに手に入れた可愛さか

:女子の永遠のテーマね!


 よくわからないけど、後輩や女性リスナーたちは勝負の行方とかよりも可愛さ対決に白熱してるみたいだ。

 付け焼き刃VS大人の知恵みたいな構図に、今いちのめり込めないのはやはり僕の心が男の子だからだろうね。

 とはいえ、多少は簡略化されてる大人のメイクグッズ。

 時間がかかるとはいえ、ものの数分で仕上げは終わったようだ。

 後輩と同様、最初こそは種類の多さに迷うが、慣れれば使うやつは決まってくる。

 ただ、その引き出しが異様に多いのが大人の女性という話だ。


「ごめんね、お待たせ!」

「少し狙いすぎたかの?」


<コメント>

:こっちは中学生のかわいさに対して妖艶さを醸し出したメイクだー!

:前屈みになってるリスナー多そう

:いや、普通にかっこいいっしょ、あれ

:早く! 発売はやくしてください

:あれって販売終了した限定カラー使ってますよね!?

:再販を希望します!

:誰も勝負の行方がガチンコの物理だって理解してなくて怖い

:え、これ可愛さ対決だった?


 どうやらスペアボディの配布で鎮火していたと思われるメイク熱が再燃してしまったようだ。

 本体にメイクする以外に、スペアまで気遣うって、どうかしてると思う。

 長く使っても5年しか持たないものをおめかしするなんてさ。


「えー、それらの要望は聞き入れられません。前回発表したように、僕たちが関わってるのは企画と転送陣の特許だけ。おまけ要素のカラーなどは各メーカーさんの準備次第ですので、どんなに僕を詰めようと時間の無駄です」

「ですから、メーカの工場に入ってマンパワーに貢献しましょうねー」


<コメント>

:それはそう

:ずっと前からそう言われてるやんね

:金で買えるだけ有情

:スペアボディのケア用品は全部NPだもんな

:政府の摘発者向けの商品だからだろ

:ケアしたかったら探索しろってことね


「さて、そんなどうでもいいことに時間を取られてる隙に、中学生チームが仕掛けてますよ」

「これはカードですね。さすが現役探索者です」


<コメント>

:こっちは全部見たことあるカードだな

:じゃあコンボもわかる系?

:魔法使いの子は表がカウンター、伏せは威力上昇

:哨戒役の子は表がトラップ、伏せは超直感系

:へー

:大体カードの色と魔法陣の形で傾向出るよね

:ある意味わかりやすい

:初見だと何が何だかさっぱりだけどな


「ミザリー、10秒持たせろ」

「あらー、全部終わらせちゃってもいいわよ?」

「相変わらずは自分のことしか考えとらん奴め。これは我らの前哨戦。こちらの戦力を見せるパフォーマンスだ。忘れたわけではあるまい?」

「何か企んでるようだけど、そうはさせないよ!」

「あらー、熱烈な歓迎ね。お姉さんちょっと興奮しちゃうわ」


 優希が攻める、けど母さんはその連続攻撃を簡単にいなした。

 自称女戦士でブランクがあると言っておきながらこの身のこなし。

 さすがにゃん族と言ったところか?


「何か大技をやるつもりみたい、晶ちゃん!」

「こっちの準備のほうが先に整ったわ!優希、後ろに」

「させないわよー」


 母さんが中学生チームに威圧をかける。

 あまりにも大人気ないが、まぁ母さんだしな。


「今! アクセス! バーストカード×10+フレアバースト!」

「あららーおっきな炎ねー」


 母さんはそれをそのままサルバさんに見送って。


「おい、まだ9秒だろ。まぁいいもう完成した。解析完了。その魔法は我々が接収する。掌握術式」


 大きな魔法の塊は、サルバさんの手に握られた変な形のステッキの支配下に置かれた。


「さて、このまま返しても対して面白くないな。実験と行こうか」

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