<コメント>
:おいおいおい、中学生チームまずいぞ?
:まさかの展開
:いや、ダンジョン種族がマジならあり得るのか?
:有識者ニキ! 有識者ニキはいないか!
:あれなんのスキルだ?
:可愛い勝負じゃなかったのかよぉ!
:あの中学生、Cランクとは思えねぇ程の潔い博打打つじゃん
:今の探索者界隈はスペアボディの入手でランク以上の行動するからな
「な、私の魔法制御を乗っ取った?」
「晶ちゃん、どうする?」
「もちろん、戦略を変えるわ。それができる力を手に入れたもの」
<コメント>
:どういうこと?
:誰かーー 説明してーー
:それはきっと化粧直しだな
:そんな悠長なこと言っとる場合かよ
:いや、変身そのものがメイクで成り立ってる都合上、それがあり得る
:あ、NYAOで苦戦してた時にバンクを挟むあれか
:大人メイクにフォームが何個もあるように、NYAOフォームにも複数ある
:ノーマルは火力特化だっけ?
「おしゃれにメイク! フォーマルドレスチェンジ!」
「おしゃれにメイク! サマードレスチェンジ!」
<コメント>
:ドレスチェンジだった
:おしゃれにメイクとは?
:ライダー系で言う技名の前につける掛け声だぞ
:最初言わなかったじゃんよー
:そう言うバンクなんだよ
:これはアニメ勢じゃなくて原作勢だな
:ガチのファンじゃんか
:草
:もう実装されてるのか、ドレスチェンジ機能
:アニメ版はまだじゃない?
:原作版でも先週発売されたばっかだよ
:早すぎない?
:アニメだって発表された週には販売されてるじゃんか
:それ
「あらー、それをされたらお姉さん困っちゃうわ」
「おい、あれはなんだ?」
「魔法よ。女の子はいつだって気分を変えるのにメイクや衣装を整えるものだし」
「あいにくとファッションについては無頓着でな。で、対処法は?」
「気合い」
まぁ、後輩もファッションは気合いって言ってたしな。
でも対抗する意味合い違くない?
「後輩、あのモードって何がどう違うのさ?」
「先輩はアニメ勢ですもんねー。原作読みましょ?」
「答えを教えてくれてもいいじゃない」
<コメント>
:ドレスチェンジは要するに属性の耐性変更だ
:あー、寒くても暑くても女子は気合いで可愛いを作るもんな
:見てて寒くなるあれね
:真冬にスカートは気合い以外の何者でもないしな
そう考えたら確かにそうか。
僕は寒がりなので、普段後輩にぬくぬくなパジャマばかり着させられてる、
そこにあるのは優しさか、はたまた別の何かだろう。
湿った視線を向けられる時点で優しさだけじゃないことは確実だ。
「私はこいつの魔法を改造する。ミザリー、お前は……」
「わかってるって、もう一人の足止めでしょ? 別に倒してしまってもかまわんのだろう?」
「それはフラグというやつではないか? お前は油断して足を掬われる性格をしてるからな」
「あらー、心配してくれるの?」
「部下たちの手前、下手な戦いは見せられんということだ」
「またまたー、まぁそういう意味ではあたしも一緒か。ちょーっと本気出しちゃおっかなー?」
<コメント>
:あれで本気じゃなかった?
:流石に可哀想でしょ
:いや、ダンジョン種族はアメリアちゃんに匹敵するほどの強さだって話だし
:中学生と互角の時点で手は抜いてるでしょ
「せいかーい」
<コメント>
:あれ? こっちのコメントに反応した?
:いや、そんなまさか
「なんじゃ、そちらの反応は見えてたらまずかったかの。他の奴らは知らぬが、こちらの技術で見ればあまりにお粗末なセキュリティ。覗くのも簡単だ」
「しー、サーちゃんしー」
「内緒にしておくほどでもあるまい。これが我らうさ属の科学力だ」
「にゃん族は武力を高めてるよー? その中で私はちょびっと異端な科学者側。つまりはこっちは化学チームなのだよね?」
「つまり、今までは科学者相手にこちらが全力で殴りに行ってたってことですか?」
「そういうことー」
あーあ、それは傷つくよ。
優希や晶だって真剣に勝負してるのにさ。
後輩が僕の方チラチラみてるけど何?
え、普段の僕もあんなものだって?
いやいや、そんなまさか。
あそこまでは煽らないって。
一緒にされたら困るな。
「それは少し私たちを舐めすぎですね」
「ヒョ?」
「まだこちらのバトルターンは終了してはいなかった、ということです。次のステージに参りましょう」
母さんたら、日本の文化に毒されすぎでしょ。
まぁ親しみすぎた結果、漫画家になったような人だしな。
それでアニメ化されるんだからすごいよ。
努力の方向性が完璧に間違えてる点を除けばね。
「ジュエルアップ! シンデレラフォーム」
「おしゃれにメイク、シンデレラフォーム」
中学生チームが宝石箱からデカめの指輪を取り出した。
足にはガラスの靴を履き、ドレスも純白でこれから花嫁になるかのような輝かしさを纏う。
何それ知らない。アニメにあった?
「そっちの変化、ね」
「あれはなんだ?」
「純粋に威力が10倍に跳ね上がるフォームよ」
「まずいではないか。さっきの解析した魔法、普通に当たればスペアの耐久じゃ塵一つ残らない威力だったぞ?」
「あっちがそこまで計算してるかまではわからないけど、あのフォームは変身時間が比較的短く、連発はできない」
<コメント>
:あー、必殺フォームなのね
:ちなみに装着する宝石の種類で属性変わるぞ
:そりゃ連発できたらまずいでしょ
:物語終盤のフォームじゃんか
:原作ですでにそのフォームが?
:今週号にジュエルが出たばっかやぞ
:もうフォームが出てるのはおかしいって
:あれ、NYAOって週刊誌なの?
:週刊連載だぞ
:原作者あそこで戦ってる暇あるのかよ
:そこは謎の科学力で?
「これはスペアの一つなの。もう一人のあたしは今頃漫画書いてるわー。よくあるでしょ? 自分がもう一人いればいろんなことができるって。ちょっと操作にはコツがいるけど、ヒー君も同じことしてるし、親のあたしができないのもまずいじゃない?」
<コメント>
:ヒー君?
:誰だ
:にゃん族の誰かかな?
:わからんが、後のシード枠に注目だな
僕だよ、とは言い出せない雰囲気。
まぁ本名は明かしてるとはいえ、今の僕は先輩で通してるからね。
そうそう辿り着かないでしょ。
たどり着いたって無視すればいいし。
あと母さん、あの人を表舞台に出しちゃダメだな。
あまりにも口が軽すぎる。
ちょっとイライラしていると、後輩が声をかけてきた。
「先輩、煮卵あるけど食べます?」
「食べるー」
もぐもぐしながら脳みそをリフレッシュする。
あ、これカレー味じゃん。
このボディがカレー好きなのを知ってわざわざ用意してくれたのか。
「お酒もありますよ」
「わーい」
日本酒をちびちびしながら、これだよこれと面倒ごとをまとめて溜飲する。
「ちょっと元気出ました?」
「いつもありがとね」
「なんのー。私は先輩のサポーターですから。いつでも頼ってくださいね!」
ええ子や。
これで僕に女装を強要して来なかったらどこにでもお嫁さんとして出せるのに。
趣味がなぁ、ちょっと擁護できない域に到達してしまっている。
結婚、安定した生活……とは無縁の生活だ。
僕も彼女もそれを望んでいると思い込んで生きてきたけど、母さんの登場でそれが一気に傾いた気がする。
どちらに勝敗が転ぶにせよ、僕は見届けなければいけないだろう。
これからの僕は、男として後輩を娶るか。
はたまたにゃん族を率いるリーダーとして後輩を娶るか。
なんならスペアボディを代用して両方しちゃえば良くない? という悪い考えが脳裏を過ぎる。
うん、まぁ僕にはそれができちゃうわけだ。
やらない手はないよね。
スペアにかかる負担は大きいけど、まぁなんとかなるでしょ。
そして場面は最終局面。
中学生チームは最大火力の『インフェルノフレア』を連発。
晶の必殺技を優希が模倣してもう一発のダメ押しをした形だそうだ。
有識者ニキが言ってたので本当らしい。
すごいな、有識者ニキ。女児向け漫画にも精通してるなんて。
あれ、後輩何を打ち込んでるの?
え、リスナーに説明を?
なんでまた。
後輩の謎の行動をスルーしつつ、最大火力の魔法が直撃した母さんたちは、頭をチリチリにしながらなんとか生還した。
「いやぁ、まずかった。あの熱量を放り投げる空間を生成するのに10秒もかかってしまったぞ?」
「一緒に焼けこげるところだったねー」
「な!」
「あれを受けて無傷だって?」
「無傷ではないよー、ピンチだったのは事実だし」
「科学力の差というやつさ。最初から勝負にはなってなかったがの。さてお色直しと行こうか」
「まかして! サーちゃんをとびっきりの美人さんにしたげるからね!」
「頼むぞ?」
そんな茶番を見届けつつ、僕は手元のスマホにとある場所経由でアイテムが届くコールを聞いた。
「先輩、どうしたんです?」
「あ、旅に出てた彼らからアイテムが届いたみたいだ」
「お、これはホームビデオを回しますか?」
「今は大会に集中しときなさい」
向こうの魔法少女チームと比べるのはあまりにも酷だろう。
それに秋生のあんな姿を見て、婚約者がどんな感情を抱くかなんて考えたくないし。
まぁ全国放送してるし、今更といえば今更だけど。
「あ、でも。あの子たちに見せなければ問題ないか」
「ですねー、ちょっと身内に見せる内容じゃないですし」
<コメント>
:なんの話?
:今女の子たちが頑張ってるところでしょ
:さてはこの運営、大会を無事に回す気がないな?
:この二人が運営の時点でそれは高望みすぎる
:いうだけ言って配信切るやらかし勢だからな
:告知で10分とかザラだぞ
:そのうち9分が茶番だしな
僕たち錬金術師が自分の研究胃がんに時間を取ることってまぁまぁないんだし、普通だよ、普通。
と、言うわけで秋生たちの探索の場面を別窓で解説。
危なげなく変身して戦えてる様子が見て取れていた。
「今回はこっちの別働隊からアイテムが送られてきた感じですねー」
「随分と同族殺しも慣れてきたって感じですね」
「言い方」
<コメント>
:あ、これかぁ
:そういや先輩関連だったね
:番を説得しに行くチャレンジだっけ?
:スペアボディを担いでいくとはいえ、俺ならやりたくないな
:最初に人類裏切ったやつだし残当
:死刑囚を死地に向かわせるやつじゃん
「あー、それについての説明は難しいんだけど、どうもダンジョンの縄張りボスは他種族を強制的にメス化させて、それで素質があったやつを番にするらしいんだ。彼の場合は境遇から察して被害者だと思って見てほしい。だから僕も協力したし、武力で制圧する以外で一番丸い決着になるから彼に託した」
<コメント>
:えっ
:そういう経緯があったんだ
:どうにか女の子かだけさせてくれませんかね?
:ダメです強制ドラゴン化です
:じゃあいらねーわ
:いや、それにしたって無茶すぎでわ?
:だからこその残機生スペアボディなんよな
:あれ、もしかしてこのボディ案が俺らに回された?
:その可能性は高いな
:なお、こっちは先輩が関わっておらず、向こうは関わってる
:本格的なスペックが比べ物にならないのか
「現状、その被害者と見られるうさ族、にゃん族と関わる機会があってね。今回の大会出場は僕の方から掛け合ったものなんだ。にゃん族は乗り気で参戦してくれたんだけど、うさ族は今の今まで出場を渋っていてね。急に参戦受諾をしたもんだから、こちらもルール変更を余儀なくされてしまったんだ」
<コメント>
:あー、そういう経緯なのね
:じゃあうさ族は人類の仲間なの?
:今は協力関係にあるだけってことじゃない?
:まぁそうなるか
「一応、仲間と見てくれていいよ。そして、その仲間は今後増える傾向にある。りゅう族というのはそれだけ厄介で、ダンジョンの他種族を強制メス化させている、呪いの根源みたいなやつなのさ。そんなのと表立って敵対したら、全人類総メス化待ったなしだよ? その上でドラゴン化だ。だから僕は人類の未来を彼に託してる。そのつもりで君たちにも応援してほしい」
<コメント>
:男がいなくなったらそれこそ絶滅するじゃん
:あれ、これ結構人類ピンチじゃね?
「ピンチだって散々宣告してるんだけど、政府がその事実を握りつぶしてるんだよね。まぁ事実が知れ渡る前にスペアボディが配布されて良かったじゃん」
「無料でメス化したい方は、是非ダンジョンに赴いてくださいねー」
「本体がドラゴン化した場合の責任は流石に取れないけどね」