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第82話 先輩、素材を入手する

『今はとにかく、宴までに兵士が欲しい。待遇は変えられないがそれでも良ければ産んでくれ』

「待遇は変わらないんだ。まぁ変にプレッシャーがかからない分いいけど」

「ほんと」

「昔は産め産めうるさかったからね」

「ねー」

『そこは少し無神経だったと思ってる。今はのびのびと産卵できるスペースを用意してるぞ。ナオ、案内してやってくれ』

『いいの?』

『子を産んでくれる相手はいくらでも欲しい』

『お母さんは?』

『アキラが一番だ』

『じゃあ、いいよ』

『いい子だ』


 こうやって側から見ればきちんと親らしい振る舞いだね。

 昔は知らないけど、この反省ぶり。

 大塚君の影響だろうか?

 こっちに連絡をよこさなくなって心配してたけど、彼なりに頑張ってはいたようだ。


<コメント>

:宴って何?

:その宴をするまでに兵隊を揃えてた?

:宴=地上制服じゃないといいな

:あー、ドラゴンの価値観ならあり得るか


『こっち。一応お母さんには礼儀を払ってね?』

「りょ」


<コメント>

:返事かっる

:この人、ついさっきまで同胞を殺して回ってました

:お前ら! 人類の味方なのか敵なのか

:これは作戦だから

:普通にグロ注意だったろ?

:インドの人たちを救うためなんだよなぁ

:じゃあお前が代わりにやれって言われてやれるのか?

:それはごめん被る


「みんなの面の皮の厚さが露呈されたよね」

「初めからじゃないですか」


<コメント>

:ひでぇ

:でも実際そうだろ?

:どっちが悪いかと言われたら、確実にりゅう族なんだけど

:こうやって近くで見たらただ不器用な女の子のように見えなくないってのがまた

:なお、特性は最悪です

:入り口に蓋をして一生関わり合いにならないで生きてくのが幸せかなって

:なお、相手は気分で地上を攻めてくる模様

:もう殺すしかなくなっちゃったよ

:現地では喋ってないのに、司会進行で普通に喋ってるの違和感だよな

:それ


「そんなの、スペアボディの活かしどころさん以外何もなくない?」

「本当ですよね」

「実際そう」

「うむ。こんな日が来るとは思いもしなかったな」


<コメント>

:あれ?

:もしかして

:みなさん

:スタジオ入りしてる?


「それでは今回の特別ゲスト! ミザリーさんこと猫丸ミミ先生だー」

「わー、いつもお世話になっております」

「どうもどうもー」


<コメント>

:は?

:は?

:は?

:ウッソだろ、先生、にゃん族だって話はあったけどそんな曰く付きの存在だったのかよ


「ちなみに、今回使ってるボディ、槍込真栗は僕の父のものです」

「どーもー槍込真栗だ。息子に助けてもらわなかったら本当に人生詰んでたので助かったよ。あ、今は息子のボディに入ってるので何かと間違えられるといけないからサングラスを着用しておく。これからはパパと呼ぶように。先輩パパでもいいぞ」


<コメント>

:おいおいおい

:こんなところで爆弾投げ込むなよ

:つまり先輩はにゃん族ってこと?


「違うよ?」

「でも先輩、猫耳が似合いますよね。むしろ骨格はどちらかといえばにゃん族のものなのでは?」

「ないない。このモデルはそもそも君が作ったものじゃないか」

「これは一本と取られました」


<コメント>

:うがぁあああ! 先輩が俺を惑わしてくるのはにゃん族の魔性だったからか

:しかし本人は頑なに否定しており

:えっ えっ、これどこまで嘘でどこまで本当なの?


「全部嘘に決まってるじゃん。槍込って名字が珍しいから親子ってことにしてるだけ」

「いえーい。引っかかった引っかかった」

「そもそも、僕の父親がこんなにフランクなわけないじゃん」

「ねー?」


<コメント>

:めっちゃ仲良くしてるけどな

:確かに槍込なんて苗字は珍しいが

:少ないだけで親子はないか

:ネットに転がってる情報のほとんどはガセだけどな

:でも先輩が言うと妙に現実味を帯びてくるから厄介なんだよ

:事実、レシピは本物だったからな、尚更


「ちなみに、猫丸先生が母親なのも嘘だよ」


<コメント>

:なんだ、本気にしちゃったじゃないか


「本当の息子のように愛してるのは事実だけどねー」

「それ、僕の稼ぎが目当てのクズな所業じゃないよね?」

「顔が売れてから身に覚えのない親戚筋からの連絡が途絶えませんもんね」

「本当にさ。ミミ先生もそのうちの一人なんだよね」

「てへ、ばれちったか」


<コメント>

:なんだかんだ利権関係でズブズブなのよ

:でもまって、親子関係が嘘でもそれ以外は真実?


「信じるか信じないはあなた次第」

「試される倫理観。息子よ、この煮卵美味しいな。どこのブランドだ?」

「ダメ、教えたら買い占めるつもりでしょ? ただでさえ生産ライン少なくて確保するの大変なんだから。実の親でも教えないよ」

「ちぇー」


<コメント>

:なんて?

:こうやって話を聞いてる分には家族っぽいやり取り

:え、どこまで本当なの?

:教えて有識者


「一から百まで全部台本だよ」


<コメント>

:もう何も信じられない!

:この配信の全てを疑ってかかれって言われてるような気がした

:でも実際、りゅう族は可愛かったなぁ

:うん、言うほど凶暴な感じはしなかった

:煮卵美味しそうに食べるなぁ

:側が一緒だから親子にしか見えない

:ほんそれ

:やっぱり親子なのでは?

:ありうる

:先輩も女の子なのを否定してるけど女の子だしな

:そう言われたらそうなのか?


『ここだぞ。おかあさーん、新しいお嫁さーん』

『はぁ? あいつ、堂々と浮気とか……また話し合いをする必要がありそうだな』


 奥からのそのそ歩いてきたのは音信不通になった大塚君と秋生だった。


 ただし、僕に見覚えはないように警戒心を強めてる。

 まぁ今の僕は僕じゃないし。

 母さんやイルマーニさんも見覚えがないことだろう。


『あんたらがアイツの後妻か、ご苦労だったな。アイツから何を言われたかわからないが、一応ここにはここのルールがある。それを今から教えるな』


 一応、ルールなどを作って生産体制を管理はしているようだね。責任者時代の意識は残ってるっぽい。

 産んだ卵を奪って自分のものにする! みたいな悪しきルールだったらどうしようもないけど。


『ある程度は平気かな? 一応ここには前にも世話になったし』

『そうなのか?』

『一度逃げ出したんだ。でも状況が変わった』

『逃亡者か。無理もない、ここの環境は劣悪だしな。でも俺が強く言い聞かせて出産ペースも穏やかになった。前ほど環境は劣悪ではないと言えるな』

『そりゃありがたい』

『アキオ、お客さんに新しい寝床を開けてやってくれ』

『わかった。お姉ちゃんたち、こっちだよ』

『ありがとね』


<コメント>

:なんか配信側の声遠くなった?

:いや、言語が変わってる

:もしかして乗っ取られ?

:でも配信はそのままだな

:これ、どう言うこと?


「オートパイロットモードです。とっくにボディからは撤退してるよん」

「臭いをつけられた時に意識がシャットダウンする仕組みですねー」

「そうそう」


<コメント>

:そう言うことか

:やっぱり危険な相手じゃねーか!

:え、軽くおしゃべりしただけで乗っ取られるの?

:こわっ

:あの子の卵を産みたいとか生言ってすいませんでした

:こんなの、会話も無理じゃんよ


「乗っ取られはしないけど、警戒はされるから一時避難だよ。ボディは完璧にりゅう族に適応されてるから、精神は長居できないんだよ。ここからは長期戦になるかな?」


 アキオによって案内された場所は穴倉の一番奥の部屋。

 部屋を出入りするのに一番困る、出歩くにも他の住人の顔色を伺う必要がある場所だった。


<コメント>

:部屋の奥か

:これ、どうやって素材入手するんだ?

:最初から交渉とか無理じゃんこれ

:な

:乗り込んだら乗っ取られて、産卵部屋に軟禁とか

:さすが無理ゲー難易度


「あー、そこは大丈夫。僕たちのボディには仕掛けがしてあってね。産卵そのものはりゅう族の長からの匂い付けがない限り触発されないんだ。それまでは普通に精神は耐えられる仕掛けだよ。でも産気づいたらまずいよね」

「めちゃくちゃ産卵体質になるんでしたっけ?」

「そうそう。今まさに僕のお腹に三個ぐらい卵が生えてきてる」


<コメント>

:そういう

:無から生み出されるのか

:匂いで卵が生える?

:害悪で草

:一回産んだらもうその場から離れられないやんけ

:やはり子供を産むだけのマシーンにされるんじゃん

:産むペースすら個人に委ねさせてくれないのか


「そこは心配ご無用、実は今回赴いた3人のボディには転送陣が仕込まれていてね。自由行動を阻害されることは把握済み。全員がお腹にある刺青に力を込めるだけで僕たちの研究室に素材が届くって寸法さ」


<コメント>

:あー、なんか見覚えのあるマークが刻まれてると思ったら

:淫紋やんけ

:むしろ産気づく度に素材が?

:積極的に身動きできるためのトリックか

:これ、却って他のりゅう族に疑問視されない?

:めちゃくちゃ違和感しかないだろ


「そこも一応おまじないと称してこのシール(転送陣)を貼って対処するつもりだよ」


<コメント>

:取り外し可能なのかよ

:自分たち以外からも貪り取るつもりマンマンで草

:そりゃ一つでも脅威は減らしたいでしょ

:理にかなってるのか、家庭を崩壊させたいのか

:人類復興のために家庭崩壊RTAするってこと?

:先に滅ぼすべきなのは人類のような気がしてきたぞ


「何はともあれ、こうして素材は入手できたので、市場に配送しますねー。皆さんは教えたレシピで呪い進行遅延キャンディを量産してください」


<コメント>

:りょ

:先輩が体を張ってくれてる間にってことね?


「そうそう。僕もこれ以上お金にならない仕事請け負いたくなくてさ。これからは素材運搬業で楽していこうかなって」


<コメント>

:おい

:最後本音漏らさないでもろて


「実際、この素材の供給を僕が止めたら人類は詰みなんだよ? そこら辺は配慮してくれないと」

「はーい、ではこの実況は垂れ流ししつつ、私たちは休憩に入りまーす」

「これから適当に二十個ほど産む場面もあるけど、なんか大きいのを生み出すみたいな画像なのでそこはモザイクかけとくね」


<コメント>

:ブルーレイを買えばモザイクは外れますか?

:うーん、特殊性癖

:これ、人類の滅亡がかかってる案件なんだよな?

:いつの間にか美少女の産卵プレイシーン集になってる件

:全画面モザイク必死だけどな

:これ、行ったのが先輩じゃ無かったらどうなってたんやろ

:聞くまでもないだろ

:産卵マシーンになって、死んだらドラゴンの餌だぞ

:カマキリかな?

:ドラゴンなんだよなぁ

:やはりこの種族滅ぼした方がいいのでは?

:そうだよ

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