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第83話 先輩、話を聞く

「はい、こちらの準備も整いました。素材の販売の方をね、始めていきたいと思います」


<コメント>

:金とんの!?


「え? 僕の代わりにドラゴンの卵を産んでくれる人が!?」

「いません、誰もいませんよ。いつもの集りです」

「なーんだ」


<コメント>

:最高の煽りで草

:そりゃ金は取るでしょうよ

:なんでタダでもらえると思ってるのか

:これがわからない

:いまだにNNP関連で転売できると思ってる輩が多いからな


「安産型ドラゴンボディは安くても40億からなので、それが買える人なら誰でもウェルカムだよ」


<コメント>

:費用バカ高ぇ!

:そりゃ、呪いも受けずに産卵で体壊れないってなったらそれくらいするでしょ

:なお、呪いは受ける模様

:受けるっけ?


「受けるねー。転送陣と精神保管庫は別売りになるので、100億現金でポンとくれる起業家が望ましい」


<コメント>

:俺たちがそっち側に回る時はなさそうだ

:ちなみにいくら?

:それ気になる


「ドラゴンの血が1ℓ10万、ドラゴンの殻が1kg30万」

「だいぶ安く仕入れられるようになりましたよね」

「道中のドラゴンの血を全部抜いたからね」

「それをしなかったら千倍はしましたもんね」

「ねー」


<コメント>

:高、くはねぇか

:あの悪逆非道なシーンを入れてもまだその値段なのか

:そもそも倒せる人間が少なすぎる

:倒せるけど、採血にまで気を回せない

:先輩ほど安定して採血できる道具も管理場所もないのが実情で

:それ

:できないやつに限って声ばかりでかいよな

:マジで迷惑だから消えてくんねぇかな

:問題は消費ばかりで、ドラゴンの数が増えてくれないってことで


「それに関しては問題ない。何のために僕らが敵地に潜入して卵を産んでいると思っているんだい? ドラゴンの卵の殻の入手? 確かにそれもあるが、僕が殺して回ったドラゴンの数を増やすためである。こっちで数は調整するから、倒すのはそっちでお願いするね」

「その際、各国のSランク探索者に向けて採血ピスト類の貸し出しを行います。弾丸は都度購入してもらう形になりますが、採血した血液を高値で購入させてもらいます」

「至れり尽くせりだよね」

「ここまでお膳立てしても、渋る人がいるんだから不思議ですよね」

「ねー」


<コメント>

:確かにこれはチャンスなんだよな

:あまり実感は湧かないけど

:各国がダンジョン種族に備えてる

:先輩も体張ってくれてるし

:俺たちがここで足踏みしてるだけじゃないってことを見せてやろうぜ!

:おう!

:そうだよな、これを機に俺らに稼がせてくれると思えば

:問題は値段でなぁ

:いや、国のピンチに貢献できる機会ってそんなにないぞ?

:そうだよ

:問題はそれで稼いで良心の呵責が許されるかってことやな

:被災者から後ろ指刺されそうでな

:だからって無償ではやりたくないし


「君たちは選択の余地があるから良いじゃないか。僕なんてできるからやれって搾取の限りを尽くされてるんだぞ? 正直どこかで線引きしたい。そこで僕は己の身を挺してのドラゴン潜入任務を買ってでた。それこそ他の誰かに任せられない任務だ。今や完全に裏方に回ったが、それで地上のピンチが完全に払拭されたかと言えば、そうでもない。僕の手が回らないところは君たちにお任せしたいんだよ」


<コメント>

:そう聞けば、まぁやってやらんでもないが

:先輩と同じ品質を求められてもな

:今は一人でも錬金術師を欲してる時だもんな

:問題は熟練度なんだよな

:後少しが届かない

:後少しまで届いてるやつがいるのがもうすごいよ

:鍛治や魔道具でこれほど100に近いやつがいるのは稀よ?

:そこは先輩の導きのおかげや

:配信で公開されるレシピが悉く厄ネタだったけど

:それを乗り越えたものもいるのも事実

:ネタだと思ってたらみんな割と真面目に

:でもこれ、政府は数を集めてるけど、お支払いの方はしっかりしてくれるんよな?


 僕は何も答えず、にっこり微笑む。

 確かに世界のピンチだよ。

 でも僕は今までに感謝の言葉以外に何も貰っていない。

 救助の催促だけやたらと聞く。

 良い加減にね、自分の尻くらい自分で拭いてほしいなって。

 そう思うわけ。


 正直父さんの復活のためと思って無償労働していたけどね。

 復活したんならもう良いよねって。

 ここで身を引こうかなって。

 あとは任せたぞ、おまいら。


<コメント>

:スゥーー

:これ、もしかして政府の誘いに乗ったらアウトじゃね?

:どうしてそう思うんだよ

:いや、俺たち何度も日本政府に騙されてきてるし

:物だけ集めて支払いは後回しの可能性が

:ありそう


「それはさておき」


<コメント>

:おい、さておくな

:俺たちの今後はどうなるんだよー


「いやいや、まだ何も終わってないからね。産むだけ産んでようやく信頼を得られて、ここから探索だから。そろそろ現地に精神を戻す頃合いかな?」

「頑張ってくださいねー」

「頑張るのはもう一人の僕かな」

「息子よ、この日本酒はどこのメーカーだ? 父さんはすっかりこれが気に入ってしまってな」

「ヒー君、パパったらあなたそっくりの行動ばかり。やはり血は争えないわね」

「あー、はいはい。台本通り台本通り」


<コメント>

:もうこれ台本無理だろ

:やっぱり家族、先輩はにゃん族なんじゃ?

:所詮、公式が否定してるだけだからな

:なんかこの家族見てたら、急に俺はちっぽけな人間じゃないかって

:気のせいだよ、強く生きて錬金ニキ

:実際、親がダンジョン種族だって知ったら気が気じゃないだろ

:それはそう


「違うよ?」

「ヒー君、そろそろ戻るわよ」

「姫」

「あーはいはい。それじゃあちょっと準備するね」


<コメント>

:このにゃん族からの受け入れられようよ

:これはもう言い訳無理でしょ

:先輩は先輩の戦いがあるんやなって

:俺、少し真剣に錬金術頑張ってみるよ

:そうだな

:俺が次のポスト先輩になってやるんだって


 頑張って。

 僕は次の時代を担う錬金ニキにエールを送った。

 そして、精神をナワバリに戻し。


『起きたか』

『おはよー』

『随分と呑気だな』

『産卵は慣れてるからね。でも、心配してくれるんだ?』

『今は少しでも数が欲しいからな。宴が近いんだ』


 僕が最初に起き出して、次に母さんとイルマーニさんが起き上がる。

 まだお腹はゴロゴロする。

 が、それは転送シールを貼ることで何とか緩和。

 すっかり散乱体質になったものだなと思いながら、僕は大塚君の言葉の意味を測る。


『宴?』

『ああ』


 大塚君は言葉を続ける。

 りゅう族には四つの部族がおり。


 爆炎のコア、銀雹のエネル、風刃のビューネイ、霧毒のオービルが存在する。


 その特徴はブレスに出ており、それぞれが睨み合って縄張りを広げているという。

 なるほど、りゅう族と言えど一枚岩ではないと。


『パパは大丈夫なんだよね?』


 頼ってきておいて何だが、殺しすぎて縄張りが小さくなってきているとなったら大変だ。


『問題はない、と言いたいが子供が減っている事実。こういう時メスドラゴンはもっと強い卵を産んでやれなかったことを悔やむばかりだよ』

『そうだね。僕たちもパパの戦力になれるように頑張るよ』

『頼むな?』

『お母さん、餌の時間だよ』

『今行く』


 会話の最中、遠巻きに声がする。

 ナオ、と呼ばれるまだ人間の特徴を持つ子供がやってきた。

 大塚君は奥に引っ込み、ナオがトコトコやってくる。


『お姉ちゃんたち、もう卵産んだんだ?』

『まぁね。言ったじゃん、減らした分は増やすつもりでいるって。こんなので詫びになるかわからないけどさ。パパの匂いを纏ってから、またここに溜まってきてるんだよね』


 お腹をさする。実際ゴロゴロして気持ちが悪い。

 産んでしまおうかっていう選択肢が常に頭をよぎる。


『たくさん産んで、罪を償わなくちゃね』

『とりあえず、200匹は産みたいかな』


<コメント>

:その産んだドラゴンはまた探索者に打ち取られる予定です

:それを知らないドラゴン娘の健気な姿よ

:かわいそう

:俺ら、こんなほのぼの家族から子供を奪い続ける責任を負わされるんか

:胃が、キリキリしてきた

:先輩の罪って、いつ償えるようになるんやろなぁ

:これ、償う気ないやつでしょ

:生まれてこない卵の多さよ


 それは言っちゃダメなやつだよ。

 コアの縄張りを垂れ流しで配信中、奥から焦げた肉を担いだ大塚君がやってくる。


『ご飯だぞー。よく焼いたが、生肉がダメなやつがいたら言ってくれ。パパはちょっとばかし気が利かなくてな』

『おお、ここじゃなま肉がデフォルトかと思ってた。うん、これは美味しいね。何かハーブみたいなの使ってる?』

『お、わかるか?』

『歯ごたえが心地いよね』


 なお、くっそ硬いが、強靭なドラゴンのボディでなら噛み砕くことができる程よい硬さだった。

 味の方は、適当に煽てとく。

 僕に大雑把な味の違い謎わかるわけもない。


『うまいな』

『ふむ、これは悪くない。私は生でも良かったが』

『生がいいやつはこっちにもあるぞ。血抜きしてない方が良かったか?』

『注文が多くてすまないな』


 イルマーニさんだけが血の滴る生肉に貪りついていた。

 流石にゃん族である。

 僕と母さんはそれを白い目で見ながらお腹いっぱいにした。


 ふー食った食った。

 なんか急に眠くなってきたな。


<コメント>

:先輩、食って寝たら太るぞ?

:卵産めば栄養は全部卵に行くのかな?

:多分

:生肉がうまそうには思えなかったが

:それもそうよ

:この食生活で精神壊れないのはどんなズボラだよって

:ちなみにお味の方は?


「口直しに泥水を啜るレベル」


 そして僕は今、煮卵を啜っている。

 それを日本酒でクイっとね。

 隣で父さんと一緒に晩酌してる。


<コメント>

:最悪な味ってわけね

:寄生虫を気にしなくていいなら、俺も生で肉食いたいわ

:でも、卵を産む気はないんでしょ?

:産まなくても生肉食える環境こい!

:自己責任なんだよなぁ


『なんだ、眠くなったか?』

『少しね。パパに催促されちゃった』


 お腹をさする。それだけで大塚君は察してくれた。

 もうすでにお腹の中には卵がゴロゴロしてる。

 この中のどれを産むかを選んでいる。

 他の? まぁ研究所行きだよね。


『あんまり無理して産まなくていいぞ?』

『でもここにくる時』


 いっぱい殺した。

 不可抗力とはいえ、コアの私兵だった。


『気に病んでいたか?』

『少しね』

『ナワバリの案内をしたかったが、少し我慢できるか?』

『お、もう気を許してくれたの?』

『他の部族のものが、いつ攻めてくるかもわからんからな』

『そういうこと』


 僕はゴロゴロするお腹を抑え、歩くのに余分な卵を転送しながら縄張りの主要部分を聞いて回る。


「マップ制作班、解析よろしく」

「はーい、マップ出します」

「優秀」


<コメント>

:後輩ちゃん、優秀やなぁ

:他部族よりも先に人類に情報漏洩してる件

:草

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