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第86話 先輩、ルールを決める

「まぁね、事情を汲み取りかねるけども」

「まぁウチとしてもある程度のアフターケアまではしますけど」

「流石に全部解決しろはね」

「ちなみに各国からの受領印はいただいてますので、もう国として認められてまぁす!」


 後輩がババンと王国として認められた書院を配信の右上に記載する。今後配信のたびにこれを掲げていくのだそうだ。


 今度から個人ではなく国が相手だ。怖いか? という脅しも兼ねている。


<コメント>

:つよい

:でも実際規模はどれくらいなの?

:地上のどこで国を興すかだよな

:それ


「王国の所在地は今まで通りハワイです」

「けど、今後加速度的に増えるのも見越して、本拠地はダンジョン内にしようと思ってるんですよね?」

「そうそう。僕たちも別に地上を侵略したいわけじゃないから」


 ここで一度注意勧告。

 僕たちは国を起こす以上、責任を取る姿勢であるが、ダンジョンで起きたすべての責任を取るわけじゃない。


 今回引き取ると戦前した三種族(にゃん族、うさ族、うろこ族)が問題を起こした場合は責任を負うが、ダンジョン内でのトラブルは今まで通り個人間での問題となると強く釘を刺した。


「これからうちでは三種族を国民として養っていくけども、他種族の起こしたトラブルはうちに持ってこられても困るよね」

「それとうちが国を興す前に起きた事象もですよね」

「うん、流石にインドの件は僕は無関係だ。なんなら復興において一番の貢献者であると自負している。だからって永遠に援助できるかって言ったら個人じゃ無理そうだから国を興したってわけ」


<コメント>

:今後も明らかに足元見て上から発言するの目に見えてたしな

:残当

:ダンジョン内トラブルは今後も自己責任か

:実際、国を興したところで今まで通り?


「僕たちは何も変わらないよ」

「責任問題が今後国を巻き込むことになるってだけですね」

「相手を犯罪者に仕立て上げることも容易ってことだ!」


<コメント>

:独裁国家反対!

:ただでさえ犯罪には厳しいからな、先輩たち


「犯罪者と関わり合いになりたくないし、そんな自分勝手な奴らの尻拭いをしたくないからだよ」

「正論ですね」


<コメント>

:それもそう

:そいつら含めて自分の身内かって問われたらな

:俺は知らんぷりする自信ある

:俺も

:ワイも

:おいどんも


「と、まぁ随分話が脇道に逸れたけど改めまして」

「今後、にゃんにゃん王国での催しも当チャンネルで発表していきますね」

「もともと個人の立場が一人歩きしてできた国だからね」

「先輩の国ですよ、もっと気楽に」

「ならそうだなー、うちのルールに従えないなら転送陣の使用許可剥奪とか?」

「はい、可決!」


<コメント>

:おい!

:初っ端からとんでもないルールが可決されてしまったぞ?

:私たちに異議を唱える権利はないんですか?


「異議を唱える権利はにゃんにゃん王国国民にしか施されてません」


 お茶の間裁判である。

 母さんや父さん、イルマーニさんは全員可決。

 実質家族内裁判でしかないが。

 いろいろな立場からの視点も踏まえての異議申し立てができるようになっている。

 今後、うろこ族やうさ族の代表も交えて会見でもするか。


「君たち部外者は指を咥えて見ているしかないのだよ」

「ある意味で、部外費の国政を全世界生配信しているのを温情と受け取ってほしいですね」

「ねー」


<コメント>

:実際二人の間で取り決められてるルールなんよ

:第三者は絶対いる

:クォレは独裁国家

:間違いない


「それと、地上で暮らす国民にはこのブレスレットが提供されます」

「このような見た目をしております」


 デン、と効果音付きで画像が添付される。


<コメント>

:謎の既視感

:これ、探索者に貸出されてるアイテム所有権と一緒のやつじゃ?

:それだ!

:可愛い猫ちゃんのマークが付いてますねー

:これはコレクター欲が刺激される一品です


「このブレスレットの色で、生活グレードが一気に変わります」

「ルールとマナーを守って正しく地上で暮らしましょうと、そういうことですね」

「ちなみに色には何段階あるんですか?」

「いい質問だね」


 僕は用意していた画像を配信画面に貼り付けた。

 内容はこうだ。


 黄金=王族

 白銀=部族長

 琥珀=戦士長

 青=一般兵

 黄=市民

 黒=囚人


<コメント>

:市民とは?

:囚人もグレードあるのか

:犯罪者予備軍とかは?


「え、そんなのないよ。罪が軽くても重くても囚人になって地上エリアからダンジョンに飛ばされるね」

「そこで服役して、地上で生活して問題なしとなったら市民権が得られるんですよね」

「うん、得られるのは市民権だけで、兵士として上にはいけなくなる仕様だけどね」


<コメント>

:兵士とか物騒すぎない?

:生まれた時から戦闘民族だから

:あ、そうか

:たった一回のミスで人生棒に振るのか

:むしろ無理して地上で暮らさなくていいまであるからな

:そうじゃん


「その通りだよ。僕の温情で地上で暮らすことを許可してるだけで、少しでも我欲が湧いたら地上からいつでも排除する権利がこちら側にある。そういう意味で難民とかは今後受け入れる方針はない」

「異議なし!」

「意義あっても押し通すよ。どうせこれからにゃん族は加速度的に増えるじゃない」

「数が増えるからこそのルール決めでもありますからね」

「その通りだ」


<コメント>

:増える?

:そういえばダンジョン種族ってどうやって増えるの?

:そりゃおせっせしてに決まってるやろ


「実は僕たちにゃん族は、添い寝するだけで出産が可能!」

「にゃん族って実はメスしかいないんですよねー」

「ダンジョン種族はりゅう族の影響でほとんどがメス化しており、繁殖方法は多種多様。にゃん族の他にもうさ族なんかが添い寝で増える種族だと判明してるよ。あとはりゅう族もそうか。うろこ族は知らない」

「りゅう族の眷属なら同様では?」

「じゃ、そんな感じ!」


<コメント>

:軽いなぁ

:いつもの

:いつもの感じで今後の付き合い方が決定していくの怖すぎ

:添い寝、あっ

:あの大会、そういう仕組みなのか

:武力だけじゃなく、頭も良くないと先輩の子を産めない?

:いや、先輩以外でも増え放題ってことか

:そりゃ加速度的に増えるか

:悪知恵も働くから、再犯も予想がつく

:一見して厳しいルールかと思いきや

:そこまで見越してのことだったんですね!


 何それ怖い。

 確かに言われてみればその可能性だって十分あるか。


「そ、そうだよ。増えた国民の責任は僕が取らなくちゃいけないから。地上で被害を出したらだけどね」

「そういう意味では当分は鎖国ですかね」

「だねー」


 迷惑をかける予感が今からバチバチにするけど、なら開国をしなきゃいいだけである。

 さすが後輩、賢い。


「とはいえ、実際に国民になりたいって人も少なくないのも事実」

「アメリアさんとかですかね?」

「またはうちの国と仲良くしたい人とか」

「あー、諸外国の皆さんですか」

「そんな人たちのために、色の変わらないブレスレットの提供をしようと思います!」

「太っ腹!」


<コメント>

:それは英断だわ

:確かに鎖国してても外交はしていかなきゃいけないわけだし

:問題は何色かってことかだよ


「え、黄色だけど?」

「当たり前ですよねぇ」

「ちなみに黄色のブレスレット持ちには黄金以外のブレスレット持ち以外の攻撃を一切受け付けない効果を持たせておく」

「一応軽い挨拶でも死人は出ちゃう種族ですから」

「文化の違いって怖いよね」

「ねー」


<コメント>

:なら一般参加も平気やんけ

:どうしてそれを一般開放しないんですか?


「みんながみんなうちの国をよく思ってるわけじゃないからだよ」

「それなんですよねー。だからブレスレットを配るのはVR空間で、かつアカウント買取に10億にゃんを気前よく払ってくれる人のみに限定しようと思ってます」


<コメント>

:にゃんwww

:新通貨出してくるなや

:そりゃ国を興したんなら通貨は別か


「にゃんは今後開催する僕たちのイベントの商品にもしますので、うちの国と仲良くしたい人は奮って参加してくださいねー」

「今回のアーカイブ化はしませんので悪しからず」

「悪用してくるのが目に見えてるもんね。どうせ一億人以上の切り抜き師がいるから、僕たちは高みの見物」

「次回配信も特に決めてませんしね」

「いいよね、国家権力。上から命令されなくていいし」


<コメント>

:実際にこれは英断だろ

:でも実際、今の先輩を切れる国がどこにいるんだ?

:今や転送陣なしのビジネスは考えられないしなぁ

:デカくなる前に囲い込めなかった国が悪い

:囲い込んでもそのまま膨らみ続けて破裂したのが今回の件

:じゃあ誰も悪くないやんけ

:そうだよ

:にゃんはNPとは違う通貨なんですか?


「NPは『にゃんにゃんプラント』専用通貨で、探索者御用達。僕の国とは関係ありません」

「うちはただの出資者でしかないですからね」

「王国民になるのなら考えてもいいですが」


美作アカリ:なりまぁす!


「はい、一人確保。確保といっても、身内価格で入国させることはないから悪しからず」

「アカリちゃんにも10億にゃんを支払ってもらいますので、そのつもりで」


美作アカリ:がんばりまぁす!


「ただ、受け入れ態勢だけは整えてますので、入りたいって代表の方はこちらの専用フォームへご連絡ください」

「それまでは配信で国の様子なんかを放送しておこうと思います」


<コメント>

:代表だけでいいの?


「社員は一切入れないですが、会社の方針とかはお伝えできるし、VRでの集いなので時間をとりません」


<コメント>

:社員は入れないのかwww

:そらそうよ

:どうして鎖国状態の国に入れるって思うのか

:外に出しちゃいけない猛獣を飼ってるから鎖国してるんやぞ

:後輩ちゃんがシス管してる国の時点で負け確

:ハッカーたちでも迷うやろ


「ハッキングしてきたら、逆探知して囚人部屋へ一直線ですね。もちろんパソコンを持ってきてもネットは遮断されたお部屋です」

「後輩に勝負を挑むのは無駄なのでやめとけ」


 人の身のままで精神を同時操作できる傑物だぞ?

 生まれつきにゃん族の僕と比べたらそりゃ大したことないように見えるけどさ。


 後輩は後輩ですごいのだ。

 化け物ばかりのうちの家族に何食わぬ顔で張り合えてる時点でな。

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