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第88話 先輩、やる気を出させる

「はい、というわけで本題です」

「ずっと喋りたがってましたもんね。一体何をお話しするんでしょう?」


<コメント>

:これ、後輩ちゃんにお話通してないの?


「さっき聞いた話を裏で11人の僕と考えていたんだけどね」


<コメント>

:スペアボディの同時運用ならではの思考能力か

:普通は思考がごちゃごちゃになるやつ

:先輩ってやっぱりすごいのでは?

:そうだよ

:あとかわいい

:そうだよ


「とりあえずむくみ取りポーションを新通貨『にゃん』で販売するのはいいけど、問題はそれをどこで入手するのかで揉めると思ったんだよね」


<コメント>

:それはそう

:両替とかできないんですかね?


「そうだね、とりあえずは一応それの代替え案として、今後NNPでは【品質S】の商品に限り『にゃん』での両替をしていこうと思います。錬金術師応援的なね。変換『にゃん』は難易度に応じる感じで」

「それはいいですね! NNPでも品質の高い商品は何かと入り用ですし」


<コメント>

:お?

:これは錬金術師優遇社会きたか?

:低い難易度だと当然獲得にゃんも低いと


「超圧縮系の納品は難易度の3倍の買取額を検討しています」


<コメント>

:それなら、まぁ

:俺たちにもにゃんにゃんむくみ取りポーションの入手も可能か

:いうてそれほどほしいか?

:転売はできない

:じゃあいらんか

:にゃんと何かを交換できればなー


「それに関しては各国で欲しがることも加味して、他国に任せようと思います。僕は新通貨『にゃん』を発行、NNPが錬金術の高品質商品を『にゃん』で建て替える。あとは他国に任せる感じです」


<コメント>

:これ、俺たち重労働を課せられる前振りでは?

:あっ

:嫌な気づきをするな

:もっと夢を見ていたかった

:NNPの店舗は日本にしかないの?

:お、そうだな


「そういうと思って、ヴァーサスのショップへの転移システムを後で追加予定です。そこから専用窓口に飛べます」


<コメント>

:専用?

:各人対応なら混雑しなくていいか

:VRならではの拡張機能か

:ええやん

:これで探索者と生産職にも『にゃん』が出回るか

:一般人は?

:今やヴァーサスは全人類入場可能だから

:そこで頑張ってもろて

:にゃん族に優しくする係か

:そう考えると皆にチャンスがあるのな


「あと『にゃん』は仮想通貨ですのでVR空間内でしか使えません。トールの所に任せて不正に増やされても困るので、管轄は後輩がします」

「頑張ります!」


<コメント>

:残当

:あそこは社長の個人思想が強すぎる

:社員のため、で無理を押し通す社長がいるとな

トール:何でっすかー!

:おや、ご本人

:今までのコラボを思い出してみろ

:自分の胸にきけ

:あの、スペアボディを失った人は?

:え、もう消失したんか?

:いや、この場合は人間のまま死にたい連盟の

:あー

:自業自得乙!

:社会がこんなふうになるって知らなかったのよぉおおお

:先輩を信じなかったお前が悪い

:そういやダンジョン思想教団とかもいたな

:そういえば先輩のとこにもうろこ族がいたよね


「いるけど、うちは先述した通り犯罪者予備軍は取り扱わない方針なんだ。だってあの人たちって言っちゃ悪いけど、人類捨ててりゅう族に鞍替えする趣旨で迷惑行為働いてるでしょ? 僕としても双方に悪感情をばら撒く人たちとは距離を置きたいかなって」


<コメント>

:草

:そりゃそうよ

:でも加入してないうろこ族被災者もいるから


「そういう人はダンジョン内で更生してからなら市民権を与えてもいいよ」


<コメント>

:微塵も信じてなくて草

:その程度の変異で済んだのに被害者ヅラしてるからだろ

:先輩いなかったら全滅なのになぁ


「本当にそう。僕たちは最善を尽くした。体も張ったし、君たちのためにりゅう族に単身乗り込んだ大塚君の犠牲があってのその程度で住んでることを忘れないでほしい」


<コメント>

:これ実際、先輩が人類の味方じゃなかったらどうなってたんだ?

:転移陣なし、Sランク探索者即時調達なし、低品質ポーションでの援護

:インドどころか他国への侵略も秒読みやったろ

:最悪Sランクごと乗っ取られた

:うろこ族の侵攻で地球上から人類の半数はいなくなってた可能性

:まず間違いなく地図上から国が消えてた件


「呼んだか、槍込」

「あ、出番まだだから来ちゃダメだよ大塚君」

「なんかそんな気配したから来たのに、どういうことだよ」


 画面の端からりゅう族姿の大塚君が現れる。

 そう、彼らの家族はうちで匿っている。

 と、言ってもスペアの方だけどね。

 コアパパはなんだかんだ大塚君を気に入っているので、手放したがらないんだ。


 そこで僕はスペアの用意をした。

 ナワバリの外の様子を気にしてる彼を、ドラゴン娘のままゲストとして迎え入れる準備をしている。


 今回もゲストとして呼ぶと言って待機してもらっているのだが、名前を呼ばれて出てきてしまった形だった。


<コメント>

:きゃわわ

:りゅう族、その生態系を無視すればかわいいんだよなぁ

:これが経産婦ちゃんですか

:うそやろ

:合法ロリ

:これで成人してるんだよなぁ

:なお、空気感染して呪われる模様

:血液感染のうろこ族が優しく見える

:こんな見た目で害悪種族なのタチ悪いわ

:地上に進出してきたらお持ち帰りされそう


「なんかこいつら気持ち悪いな。俺はれっきとした社会人で子持ちの既婚者だぞ? 成人男性に向ける視線じゃないだろ」

「言っても聞かないから、この人たち」

「ぐへへ(REC)」

「彼女からの視線が一番きついぞ?」


<コメント>

:後輩ちゃん、ブレない!

:それでこそ後輩ちゃんや

:壁の中に逃げ込んだのはそういうプレイをするためかー

:新たな被害者の誕生である

:隠し撮りやめろ!

:このチャンネルは一体どこに向かってるのか

:これはアーカイブ化拒否も残当

:犯罪歴が刻まれちゃうからな


「そんな! 私は幼女を愛でたいだけなんです! 決してやましい気持ちはありません!」

「ダウト!」

「異論なし」

「きゃーーーー」


 後輩はボッシュートされた。

 やましい気持ちしかないやろがい!


「えー、今回は後輩があんなことになることを予測しきれなかった僕が悪いので、企画を前倒しして話を進めていこうと思います」

「俺の番か?」


<コメント>

:やだ、このドラゴン娘ワイルドすぎる

:流し目えっち!

:これが既婚者の風格

:それに比べて先輩はのほほんとしてる

:対比がいいなぁ

望月ヒカリ:REC

:後輩ちゃん……

:この逞しさ、見習いたい!

:見習いたいか?

:やっぱりやめよ

:それがいい


「調子が狂うな」

「しばらく慣れるまで我慢してもらう形だけど」

「ああ、俺はずっとナワバリに篭りきりで地上の状況を知らないからな。俺が潜ってる間どうなってたんだ?」


<コメント>

:すごい、かわいいのに仕草がイケメンのそれだ

:あれ、普通にかっこいい人なのでは?

:ガワの可愛さを覆す風格


「まずはインド近辺のダンジョンからうろこ族なるものが現れた」

「俺が潜ってる間か?」

「うん。まだ見つかってないから探しにきたんだろうね」

「そっか。俺の探索の遅れがそんな場所に影響が出てたか」


<コメント>

:あれ、もしかしてうろこ族の侵攻ってこの人が原因だったり?

:そうだよ

:先輩の配信見てないんか?

:だから単独で潜入して帰るまでのミッションを課せられたんや

:なかなか見つからないから痺れを切らして地上を探しに

:すれ違いだったんか


「いや、でも匂いが切れてたから道中襲われたでしょ?」

「ああ。まとわりついてる時は鬱陶しかったが、なくなればここまで不安になるものなのかと。道中で何度も死に戻りしたよ」


<コメント>

:は?

:は?

:は?

:探してるのに襲われるのか

:どういうこと?


「これは大塚君とコンタクトを取ってから知ったんだけど、りゅう族の呪いが空気感染の可能性を示唆したじゃない?」


<コメント>

:その頃はまだ解明されてなかったんか

:そりゃそうだよ

:なんならうろこ族に侵攻されてから血液感染してくるって知られたから

:なお、侵攻後数時間での解明です

:これ他の研究者に真似できたか?

:まさに11人の先輩の所業

:その頃先輩は添い寝杯運営中でした

:完全に蚊帳の外で草

:俺らが騒いでようやく耳に入ったからな

:そこから数時間で解明、血清を配布は常人じゃできない

:けど被災者は恨み節全開、と

:ここ、切り抜きしといて

:まじ重要情報をアーカイブ化しないつもりだったのかこの人


「ところで添い寝杯ってなんだ?」

「なんか僕と添い寝すると感情が昂って妊娠するらしいよ?」

「意味がわからん」

「僕もわかんないけど、これはりゅう族の匂い付けの儀式と一緒みたいだ」

「あー、あれか。お前の種族も匂いで発情させるのか?」

「さぁね」


<コメント>

:今えっちな話してる?

:にゃんにゃん王国の生態系の話はしてる

:ただの添い寝にそんな深いわけが?

:え、にゃん族の国民になりたいです!

望月ヒカリ:国民の権利は10億にゃんからになりますー

:高い!

:ここに理想の百合国家があると聞いて!

:くそ、どうして俺は男なんだ!

:百合の間に挟まる男は処刑!

望月ヒカリ:にゃん族のアバターは全員メスになれますよー

:今から錬金術始めるかー

:俺も

:ワイも

:おいどんも


「なんか話が脱線したけど、りゅう族の匂い付けっていうのが急激に肉体を支配。男は女の子に変質。そこからりゅう族としての変化が始まる、でよかったかな?」

「いや、俺はお前から送りつけられたポーションで若返って女体化したんだが?」

「何それ知らない」


<コメント>

:草

:草

:あれ、じゃあ女体化はしない?

望月ヒカリ:そんなこともありましたかー

:こいつが犯人だ!

:まごうことなき邪悪

:男を女体化させる悪魔がいたぞー

:焼け焼けーー!


 コメ欄が一致団結した瞬間だった。


「焼き払え!」

「焼き払ってしまえ!」


<コメント>

:先輩ww

:イケドラも参戦した

:いっぱい苦労したんやろうなぁ

望月ヒカリ:私が死んでも第二第三の私が……

:スペアボディってこういうとき厄介だよな

:殺しても生き返るからな

望月ヒカリ:以前までの私はダメでしたが、今度の私は完璧です

:完璧なロリコンの間違いでは?

:ロリコンはどれだけ取り繕っても悪だから

:つまり、一度女体化するポーションを使うと感染も早い?

:呪いも適応次第で死ぬか死なないか決まるから

:あ、これ適応しないと死ぬのか

:スペアのおかげで生き返られるって感じ

:死んでも感染は止まらず、精神も貫通して汚染させられる

:害悪やん

:そうだよ


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