「はい、じゃあ次の企画の発表に入ります」
<コメント>
望月ヒカリ:待ってました
:後輩ちゃん、ずっとそこで?
:番組主催者と司会という立場を放棄してるやん
:いつもだろ?
:それもそう
:いつも先輩を間近で録画してる係だから、後輩ちゃん
:今回は企画盛りだくさんで嬉しいね
:企画というなの暴露大会だろ?
:なお、アーカイブ化はされない模様
:国の代表になったことで、ここぞとばかりに暴露してるだけ
:文句があるなら転移陣の許諾取り消すけどな
:個人のスペアボディの許諾もな
「何やら良からぬ噂で盛り上がってるけど、流石にそんなことはしないよ? ね、後輩」
<コメント>
望月ヒカリ:そうですよ。先に国の代表と警察機関に報告。クレームの数に応じて地域ごとの転移陣の許諾を剥奪するだけで、いきなり国単位で転移陣の許諾を剥奪はしません
:なら良いか
:よくない
:突然転移陣使えなくなったら、その地域の誰かがクレーム入れたってことぉ?
望月ヒカリ:そうなりますね。なお、月に一回警察からどこの誰がクレームを入れたかの発表もあります。書類送検されないからと気楽に考えてると痛い目に遭いますよ?
:これ、想像するよりもはるかにタチの悪い法律だぞ?
:普通に私刑に走る奴多そう
:まさかそれを狙って?
:……後輩ちゃん?
大塚秋生:ちくわ大明神
:なんだ今の
:なんだ今の
:誰だ今の
:なんだ今の
:誰だ今の?
:なんだ今の
:あぁ!話題が流れた!
:くそ! 今の切り抜きしてたやつおる?
:ちくしょう! 名前以外のワードで検索しても固定されるのずるいだろ
:しかもそのワード発表後は10秒間コメントがそれに固定される呪い付き
大塚秋生:まさかそんな効果があるとは思わなかった
小早川晶:何も知らされてないの?
大塚秋生:都合の悪いタイミングで打ち込むと面白いくらい話が流れるとは聞いてたけど
:次から使うの禁止な!
大塚秋生:さっきのは僕じゃないよ?
:え、じゃあ誰が?
望月ヒカリ:そんなことより次の企画はー?
:……後輩ちゃん?
ナイス後輩! 秋生を偽装してうまいこと話を流してくれたな。切り抜き殺しの異名を授けよう。
今回はアーカイブ化しないから緊急措置として色々用意してくれたのだ。
配信開始のほんの数秒で無茶に応える技術力!
頼りになるね!
「それでは次の企画に入ります。その前にゲストの登場です!」
「ようやく出番じゃな」
「さすがヒー君! 出番が来るまでいっぱい笑わせてもらったわ」
「後出しジャンケンがエグすぎる。御愁傷様と言わざるを得ないな」
<コメント>
:うさみみ博士!
:ローディック師!
:それとミミ先生?
:あともう一人はサルバちゃん?
:研究者トリオの登場だ!
:サルバって誰?
:ミミ先生の相方でうさ族の代表
:え、すごい人やん
:ミミ先生はニャン族のお姫様らしいけどな
:意外!
:それは俺も思う
「今文句つけたやつ、漫画に悪役として登場させるわ。ヒカリちゃん、個人情報の抜き出しは?」
<コメント>
望月ヒカリ:すでに
:おいバカやめろ
:堂々と犯罪するな
大塚秋生:ちくわ大明神!
:なんだ今の
:誰だ今の
:なんだ今の
:誰だ今の
大塚秋生:今のも僕じゃないよ!?
:誰だ今の
:なんだ今の
小早川晶:風評被害待ったなしね
清水優希:あ、早速トレンドに載ってるわ
:ほんとじゃん
:どんまい秋生
大塚秋生:こんなことなら出演OKするんじゃなかったーーー
後の祭りというやつである。
でも実際、大塚君をはぐらかす役には立ってたろ?
お前もノリノリで使ってたじゃないか。
それを再利用されたくらいで目くじら立てるなよ。
「鉄壁のガードねー」
「話題がどんどんズレていくから本来禁じ手なんだけど」
「ずらすことで切り抜きを欺いてる人のセリフではないな」
<コメント>
望月ヒカリ:先輩はナチュラルに人を煽りますからねー
:その後処理の方法がエグすぎるってだけで
:今までなぁなぁでやり過ごしていた皺寄せが来ただけや
:後輩ちゃんは先輩ガチ勢だからな
:俺たちに対して相当鬱憤が溜まっていらっしゃる
:直接言えよー
「それで今回の企画はー!」
どどん! という音楽と共に画面内にテロップが流れる。
<コメント>
:さっき話してたイケドラナワバリ帰還タイムアタックのでもプレイ?
:あー、サポート向けだから呼んだの全員研究者なのか
アメリア:悔しいぞ
:アメリアちゃんも泣いていらっしゃる
:アメリア嬢にサポート役は無理というか
:あれは予備知識が膨大だからな
「ですねー、大塚君もボロクソ言われてるけど熟練度120ある強者ですから」
「あら、すごいじゃない」
<コメント>
:は?
:えっ
:だって先輩を顎で使ってた胸糞の輩だって
「秋生を生かして縄張りに帰還するために必死で熟練度あげたんだよ。泣けるよね」
「なのに散々嘲笑って帰したのか?」
そこはほら、本人に了承取らずに生配信してたから。
明るみにしたらそれこそ色々バレちゃうじゃん?
僕としては彼には平穏に生きてほしいんだよ。
それはそれとして後輩の報復先も残しておくためにはね、黙ってるのが一番なんだ。
<コメント>
:イケドラも努力してたんだな
:元の熟練度はいくつあったの?
「もともと90くらいはあったよ。なんだかんだエクスポーションを作れるくらいは優秀な人材だったんだよね、彼」
<コメント>
:それがどうして闇落ちなんか?
:同じ部署に先輩がいたからや
:人は一度楽を覚えると努力したがらなくなる
:もう全部先輩に任せとけばいいやってなったんやろ
:多分同世代に俺らがいても同じ提案してると思うわ
:草
「僕はいつでもウェルカムだよ。後輩の報復を恐れないなら、とつくけどね」
<コメント>
望月ヒカリ:私は大学時代の後輩なので、見つけ次第殺処分です!
:ひぇっ
:こわっ
:こんな人に権力持たすな
:努力の結果だからな
:だいたい一般人に先輩の尻拭いができない
:完全にやらかしてるの先輩の方だもんな
:それを可愛くすることで目逸らしした後輩ちゃん
:愛ゆえにってやつだよな
:今回のアタック、後輩ちゃんこそ出るべきなのでは?
望月ヒカリ:この中に混ざるのは流石に……
:だよなぁ、熟練度200超えてる奴らばっかだし
:そうなの?
:ミミ先生とサルバ嬢は異次元の科学力を持ってる
:でもローディック師は魔道具技師じゃん?
「最近熟練度が200を越えてな。魔道具の方はそろそろ300に到達しそうじゃわい。今から転移陣のレシピに取り掛かっておるが……まるでできる気配は見せんな」
<コメント>
:ウォーーー
:これビッグニュースじゃね?
:人類の至宝! 人類の至宝!
:いつもこういうニュースは後輩ちゃんが流すのに
:あれ、もしかしてこれって特に大した話題ではない?
:嘘だと言ってくれよぉ
:錬金術の方が熟練度300いるっていうオチはやめてくれよ?
:ありそう
その人類の至宝、うさ族の手下だけどね。
バラしてないから知らなくても当たり前だけど。
「はい、そんなわけでですね。今回は僕を含めたこの四人で、噂のゲームに取り掛かっていきたいと思います。優勝賞金は『にゃんにゃん王国のアバター取得権』と『10万にゃん』の贈呈となります。果たして誰が優勝するか! アキオを介護しながらのチャレンジが今始まります!」
<コメント>
:おいおいおいおい、番組企画!
:にゃんを配るって言ってもそんなに大量に?
:ゲスト……はほとんど身内、どころか先輩の優勝が目に見えるからでは?
:草
:強気な報酬の裏はそんなカラクリが!
:いうて先輩、界隈の権威だしなぁ
:普段はその可愛さで俺を惑わしてくるのに
:今介護って言ったか?
:聞こえた
:本当に向こう見ずな戦い方してたのか?
大塚秋生:僕は探索者として真っ当な戦闘をしてた
:なら違うか
:お手並み拝見と行こうか
:ワクワク
「まずは取得アイテムと、アキオのスペックの紹介ですねー」
<コメント>
:可愛い
:可愛い
:ちゅき♡
大塚秋生:ぐあーーーーー!
:秋生のダメージは更に加速した
:魂だけ入ってたとは言え、あれで探索するのはなぁ
:さらに魔法少女の変身アイテムで強気に
:公開処刑とはこのことか
:まだ戦闘してないのにダメージ受けるな
:精神的ダメージの方がえぐいよな
:ここから更に世界中で配信されて秋生の使えなさが露呈していくわけか
大塚秋生:僕は普通、僕は普通!
「実際にCランクの秋生にSランク相当のドラゴンと戦わせるからね。よく健闘してる方だと思うよ。足手纏いなのは大塚君の方だから、立ち回りも上手く検討してくれ」
<コメント>
:は?
:バトルウェーブみたいに安全圏からアイテム供給するだけじゃないの?
:基準『バトルウェーブバーサス』
:あっ
:これサポーターが同行するのか?
:難易度ウルトラどころじゃねぇな
「最初はBランクモンスターしか出ないから魔法少女の力でなんなく倒せると思う」
<コメント>
:高い高い高い
大塚秋生:僕は最近Cに上がったばかりで実力的にはD上位くらいなんだよね
:CになったばかりのやつにBをぶつけるな!
:難易度エグくない?
:クリアすら難しいぞ
:え、これをクリアしたの? イケドラ
:まじもんの英雄やん!
:なお、期間内にゴールできてなきゃインド復興もできてなかったという
:こんなの背負わされてたのか、あの人
:俺、ちょっとイケドラに対する考え変わったかも
「特に何も教えてなかったけど、別ミッションでりゅう族の長をたぶらかしてこい。期限は設けないけど、成功報酬として人間だった頃の素体をスペアボディで贈呈するくらいは言った」
<コメント>
:それがあったからこその頑張りか
望月ヒカリ:娘さん(ドラゴン)に実の息子の魂を封した脅しが効きましたね
:よく考えればとんでもねぇ爆弾つけてやがる
:失敗したら子供が二重の意味で苦しむのか
:人の心とかないんか?
:息子がノリノリで女装している場所も見せつけられてるぞ
:そうじゃん
大塚秋生:女装じゃない!
:などと当人は申しておりますが
:女の子のボディで変身したから魔法少女になったんじゃね?
:いや、作為的に魔法少女にしてるっぽい
大塚秋生:ちくわ大明神!!
:なんだ今の
:誰だ今の
:誰だ今の
:なんだ今の
:なんだ今の
:なんだ今の
:くそ、こいつ使いこなしてやがる
:めちゃくちゃ活用するじゃん
小早川晶:秋生、あなた……
:さっきまでは困惑してたのになぁ
本当にな。
これからもアクシデントは起こるだろうから、受け取っておいて正解だったろ?
「さて、始める前に大塚君のクリア戦績を発表しておこうと思います」
<コメント>
:お
:気になる
:いっぱい死んだやろうなぁ
:これはやむなし
「戦績は、死亡:3回 戦闘:120回 逃走:2341回。期間までにかかった日数は死亡ペナルティで9日かかってるのでトータル12日です!」
<コメント>
:は?
:思いの外死んでない
:逃走回数の方が多いのはしょうがないとしても
:意外と戦ってるな
大塚秋生:実際にダンジョン内、縄張り付近はどうしても戦闘が避けられなかったんだよね
:そういう感じか
:でもよく逃走仕切れたな
「大塚君は記憶力が良くてね。ナワバリの周辺地図を記憶してたんだ。当然プレイヤーにもマップをつけておくから安心してほしい。なるべくなら大塚君がどのような経路を通ったかを知ってほしいからね。タイムアタック要素として、大塚君のシャドウをつけるのでそれを基準に頑張ってね?」
「討伐にばかりカマけていられないわけか」
「地上ではインドが制圧される時だからね。早ければ早いほどいいよ。あとはりゅう族の呪いに抗いながら、僕にアイテムを送りつけるのもタイム測るから。それによって血清やワクチンの作成にも影響出るからね」
<コメント>
:は?
:そこも込みで?
:え、それも含めてタイム測るの?
「もちろん。バッドエンドはインド滅亡だから、みんな死ぬ気で頑張ってね! ではスタート!」
画面の上にインド滅亡まであと何日、というわかりやすい目標が記されている。
その間に大塚君がどこまで進んだのかの情報も書き込まれる。
序盤で先に行っても、サポートとしてどれほどのポーションを仕上げたかが肝になってくるこのレース。
意外と戦略性の高いミッションになっていた。