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第92話 先輩、RTAする

「そんなわけで始めるよー」


<コメント>

:期待

:ワクワク

:果たしてインド滅亡は阻止できるか?

:目的そこなの?

:そうだよ

:他に何が?

:卵産むなんて聞いてない!

:お前がお母さんになるんだよ!

:じゃあ盗むか?


「りゅう族のお嫁さんは大塚くんしかいないから、代わりはいないぞ? 今回はそれのタイムアタックなのだー。ワハハ」


<コメント>

:詰んだ

:自ら望んで卵産みに帰ったのか、イケドラ

:その上で肉体汚染を甘んじて受け、産卵

:話聞いてなかったのか?

:それは私生活の延長であって目的は別だぞ

:そうやん

:目的なんだっけ?

:りゅう族の長を誑かして支配すること

:無理ゲーじゃねぇか!

:実際死ねって言ってるもん

:地上に混乱を招いたんだから当然!

:内容知らない時は適当言えたもんな

:じゃあ俺らが実際にそれをやる当事者になったら?

:それを今回遊ばせてくれるわけかぁ

:文句言ってる奴らを黙らせる手段だろ?

:いや、実際遅れたから被害出たって言ってる奴は多いから

:じゃあ、お前やれよという代弁をしてくれるわけか


「え、普通に楽しそうだなって思って実装したんだけど」


<コメント>

:違った!

:この人実は何も考えてないな?

:肉体汚染と産卵が楽しいとは?


「みんな知らないものを恐ろしいと思う風潮だからさ、体験して楽しさを学んでもらおうと思って。そこはゲームなんだしさ、リアルに体験した大塚くんより幾分かマシだよ!」


<コメント>

:あ、痛覚まんまじゃないのか

:そりゃそうだよな

:話聞いてる限り苦行でしかなかったから

:まぁゲームならなんとかなるのかな?


「ちなみに熟練度は当時の大塚くんを再現してるので遊んでる人が彼の熟練度を超えてても、大幅ナーフされまーす」


<コメント>

:普通はナーフどころか超絶アップなのよ

:初手熟練度90スタートか、楽勝だな

:死んだ時に熟練度上昇イベントを挟むのかな?


「え、違うよ。熟練度の方じゃなくブランクの補正が入るので成功率が大幅にダウンするってだけだよ。これは大塚くんの体験を再現するゲームだからね。絶望を知るといい!」


<コメント>

:そっちかーーー

:お前、それは実装すべきじゃないだろ!

:悪魔かな?

:熟練度ナーフと成功率ナーフはな

:死亡時に改善されたり?


「実の息子が血まみれになるのを死に物狂いでなんとかしようとしたのが熟練度アップと成功率アップの秘訣ですかね」


<コメント>

大塚秋生:父さん、僕に何も知らせないでそんな苦労を?

:秋ちゃん、何も知らされてなかったんや

:またしても何も知らない秋生

:秋ちゃんはやめて差し上げろ

:もう女の子認定してるやん

:アキオは女の子で、秋生は男。OK?

大塚秋生:OK! ズドン

:ぐわー

:急に牙向いてくるやん

:先に鈍器で殴りかかったのは俺らなんだよなぁ

:言葉は暴力だって教わらなかったか?

:言葉は時として暴力に勝るだっけ?

:核心をついた言葉は凶器にもなりうる、だよ

:つまり秋生も女の子になりつつあった?

大塚秋生:ああああああああ! ちくわ大明神!

:なんだ今の

:なんだ今の

:なんだ今の

:なんだ今の

望月ヒカリ:ちくわ大明神マスターになる日も近いですね

:そんなのマスターしたくないやろ

:明後日の方向に話を飛ばすマスターかな?

:爆弾情報多いもんな、このチャンネル


 コメントが盛り上がってる間に、スタート。

 画像内にそれぞれの画面が出る。


 僕は早速持ち込んだ薬品でドーピング。

 敏捷、器用、幸運を上限突破させておく。


<コメント>

:初手ドーピングである

:アイテム持ち込みアリなのかよ!


「ありだよ。設計したのは僕だからね、そういう抜け穴は作ってある。今回持ち込んだのはどちらも『2万にゃん』はくだらない覚醒ポーション。ステータスの上昇が見込める優れものだよ。これも王国のショップにおいておくね」


<コメント>

:違った、商品説明のコーナーだった。

:しかし20万稼がせて、そこから出費させるか

:ゲームを見て実際にどれくらい効果が出るかだな

:アキオには服用させられないの?


「今回はNPCだからね。こっちの人気次第では秋生の方にも入り込めるモードの実装もされるかも」


<コメント>

:そっちの難易度も高そうだな

:秋ちゃんのシャドウも出てくるのか

大塚秋生:<◯> <◯>

:怖いって

:目だけで圧力与えてくるな

:そりゃ、自分がモデルになるんじゃ気が気じゃないよな

:第一モンスター発見である


「敵モンスターのステータスは画面上部に開示されまーす。そこはゲーム的だね」


<コメント>

:比較情報やめろ

:嘘、味方の戦闘力低すぎ!?

:これ、勝てるか!?

:腐ってもBランクなんだよな

:初手でBと戦わせるな

:相手のランクって、そのランクのフルメンバーで挑むものだから

:実質ソロでやってるようなもんだろ


「初手でBランクというが、一番弱いのがこれなんだよね。と、いうことで秋生の変身バンクを挟んで戦闘行くよ」


<コメント>

大塚秋生:ち く わ 大 明 神 !!

:なんだ今の

:なんだ今の

:なんだ今の

:なんだ今の

:なんだ今の

:なんだ今の

:くそ、肝心な情報が書き込めない!

:素体がりゅう族だからいまさら恥ずかしがるもんでもないだろ

:見た目ロリなんですがそれは

:十分眼福でした

:女装姿よりもダメージでかいんですがそれは

大塚秋生:<◯> <◯>

:切り抜き殺しやめろ!

:仕込みの準備よすぎで草

:これ、本当に思いつきでの配信か?

:多分それ含めて後輩ちゃんの仕込み

:またしても何も知らない先輩

:たまげたなぁ


「秋生強いなぁ、一瞬で二体屠った時は感動ものだった。怪我もなく無事切り抜けられて大塚くんも今頃きっと慢心してただろうね。これなら余裕だって」


<コメント>

大塚秋生:リコさんに教えいただいた賜物ですから

:リコちゃん?


「うん、僕のスペアの一つだね」


<コメント>

:あっ(察し)

:秋生も先輩に脳を焼かれた民だったか

大塚秋生:リコさんはやっぱり女性だったんですね

:あー、うん

:そうであるとも言えるし、そうでもないというか

:本人だけが否定してるけど

:きっとそういう思い込みで生きてきたんだよ


「おい、こっちに飛び火してくるのやめろ! ちくわ大明神!」


<コメント>

:普通に書き込めるな

:あれ、もしかして先輩には効力ない?

:後輩ちゃん……?

望月ヒカリ:先輩はまだ自分の性別を誤解してるので

:ああ、いちばんの志願者は後輩ちゃんだものな

:唐突なハシゴ外し

:味方だと思ってた身内が一番の敵なのは笑う

:もしかして今まで万能武器だと思われたちくわ大明神は

大塚秋生:僕専用装備だった?


「ずるいだろ、そんなの! 僕にも使わせろよー!」


 バタバタみっともなく騒いでたら疲れた。

 ゲームしよ。

 いそいそとプレイに戻る。


<コメント>

:うわぁ、急に冷静になるな!

:明らかに他の参加者より遅れてたからな

:能力ナーフされてるのによくやる

:ウサギとカメかな?

:うさぎと猫の間違い

:草食動物に肉食動物が負けるはずないやろ!

:負けてるんだよなぁ

:スペックは劣っても知力では勝てるいい証拠

:そしてAランクモンスターとエンカウントである

:二戦目から!?

:他の二人は逃亡を選択

:そりゃそうよ

:でも先輩は、戦闘一択だぁ!

:勝てるのか?


「オリジナルチャート発動! それは僕自身が魔法少女になることだ! いでよ、三種の神器! 魔法のコンパクトケース!」


<コメント>

:変身バンク付き

望月ヒカリ:REC

:ブレないなぁ

:見飽きてるだろうに

望月ヒカリ:私には大塚さんの表情差分を集める仕事があるので

:中身先輩でもか?

望月ヒカリ:むしろ尚更集めるチャンスでは?

:あれ、これは俺たちがおかしいのか?

:後輩ちゃんにとっては一挙両得なんだろ

:業が深すぎるっぴ


「魔法少女NYAONドレスアーップ!」


<コメント>

:ドラゴン魔法少女、並び立つ

望月ヒカリ:パシャ、パシャ、パシャー

:後輩ちゃん、食い入るようにカメラを連写

:ブレないなぁ

:先輩もノリノリである

大塚秋生:すごい! 僕もあれぐらい動きたい、どうすればいいんだろう

:ここにも感化された若者が一人

:確実に脳を焼かれてますね

:なんと言っても武装が一人だけ遠距離攻撃な時点でずるい

:秋生は近接なのになぁ

:急にチームワーク上げてきた

大塚秋生:ずるいなぁ、その場所は僕のものなのに

:お?

:ちょっと曇ってきたか?

:まさかNPC(自分)に嫉妬してる?

小早川晶:秋生……?


「勝利!」


<コメント>

:パチパチパチ

:圧勝である

:いい感じの切り抜きできました

:これは明日の一面を飾るな

:トレンドはいまだにちくわ大明神が強いけど

:先輩は戦い方にも花があるからな

:恥じらってる秋生と動じない先輩の対比がいい

:年季の差かなぁ?

:嫌な年季だなぁ、おい


 その後も僕は快進撃を続け。

 時間経過で切れたドーピングを補充しながら最短距離で目的地へ。

 しかしそこから難易度が一気に上がる。

 ナワバリが近くなればなるほどりゅう族の警戒度が上がる仕組みのようだ。


<コメント>

:先輩、マップ見て?

:そこは中心にいちばん遠いルートだから

:抜け穴はないよな?

:そんなもん実際のダンジョンにあるわけ

:そこへ取り出したるはー?

:炸裂玉!

:確か90でも普通にダンジョンの壁に穴を開けるっていう

:ナワバリの中心で!?

:兵士級いっぱいくるだろ!

:おいバカやめろ


「ゲームなんだからこれぐらい自由でいいんだよ!」


 僕は忠告を無視してダンジョンの穴に壁を開けた。

 穴の向こうは産卵室。

 中にあった卵は爆発の余波で消滅したけど、その分は僕が卵を産めばいい。

 お腹にぺたっと『シール式転送陣』を貼り付けて、騒ぎを聞きつけたコアパパと再会。匂いをつけてもらって産卵をしてここでタイマーストップ。記録は4日と13時間だった。

 まだインドは襲撃されてない。

 うろこ族地上進行前で終了、地上は平穏が訪れたまま。


 しかし、この攻略チャートは実際に大塚くんが死に物狂いで勝ち取ってきた情報あってのもの。

 僕が単独で赴いたところでこれ以上かかっていたことは事実であることを忘れてはならないだろう。


<コメント>

:やりやがった、先輩やりやがった!

:堂々と新記録樹立すな

:結局一回も死なずにゴールしたな

:持ち込みアイテムが強すぎるっぴ!


「それについては他のみんながゴールする前に説明しちゃいましょうか。後輩、テロップ用意して」


<コメント>

望月ヒカリ:今編集作業に忙しいのでご自分で

:草

:先輩まで急にあごで使うようになり始めたな

:どっちが優先なのかわからんぞ、これ


「しょうがないにゃあ。その時のために僕はスペアを有している」


 画面の端っこで気怠そうにカンペを上げる僕のスペア。

 そこには持ち込んだドーピングの内訳があった。


 覚醒ポーション(筋力)_ 2万にゃん

 覚醒ポーション(知力)_ 2万にゃん

 覚醒ポーション(敏捷)_ 2万にゃん

 覚醒ポーション(精神)_ 2万にゃん

 覚醒ポーション(器用)_ 2万にゃん

 覚醒ポーション(幸運)_ 2万にゃん

 魔法の変身コンパクト _10万にゃん

 シール型転送陣(使い捨て)1億にゃん


 総額、一億とんで22万にゃんである。

 金を稼ぎにきているリスナーには悪いが、こちらは売り手。

 勝つためには売り上げに貢献してもらわないとね。


 もちろん、公式に僕は参加しないが。

 うちの王国民は自由に参加する。

 配布されたクレジットを使いたい放題な王国民と、リスナーが競い合うわけだ。


 今から見物だなぁ!

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