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第93話 先輩、話をまとめる

「はい、みなさんクリアしましたね。ここで結果発表をしたいと思いまーす」


 わー、ぱちぱちぱち。

 他の参加者がグロッキーな中、僕は自分だけで場を盛り上げる。

 まるで勝負になってないが、そこは初手ドーピングをかました僕が悪いので、いかにドーピングが強いかを知れただろう。


<コメント>

:勝負になってない気がする

:これが知力勝負か

:最終的にみんなクリア日数足りなくて全滅ルートだもんな

:これをクリアしたイケドラって何者?

:まさしく英雄だよ


「そうだね、普通に産卵が嫌で逃げ出してきたのに、産卵しながら僕に素材提供してくれたのは英断以外の何者でもないよ。息子さんだって何度も目の前で血まみれにされて、縄張りに戻ったら戻ったで今度は狂っていく様子を見せられる。僕はそんな目にあってまで人類救済に貢献してくれた大塚くんを尊敬してるよ。僕だったら多分そこまで協力できない」


<コメント>

:ほんそれ

:ゲームだから多少の痛みは緩和できるけど

:リアルはもっと大変なんやろな


「産卵は一回で衰弱する程度だよ。コアパパはそれを絶え間なく強制してくるのでお嫁さんたちからは嫌われてるね」


<コメント>

:それを産んだ後に俺たちに送る?

:無理やん

:アキオがいるから

:秋生も産卵してたんだろ?

:最悪やん

:もはや執念の賜物だろ

:先輩との約束の効力が強かったんだなぁ

:自分が戻らないと地上が大変なことになるって強迫観念もすごかったろ

:腹を痛めて産んだ自分の子供やん

:それを手渡す?

:手渡せんやろ


「なんならドラゴンの血肉も素材として提供されたよ。それが自分のか、アキオのかはわからないけどね」


<コメント>

:うわあああああああ

:産卵後に瀉血を!?

:無理無理無理

:死んじゃう死んじゃう死んじゃう

大塚秋生:そうだよね、でも父さんはこれで人類が救われるならって躊躇いなく自分の尻尾を切り落としてたよ

:なくても大丈夫ってそうはいかんやろ!

:本人のかぁ

:秋生も何か提供したのか?

大塚秋生:僕は卵だけだね


「最初の卵は生まれてこない可能性が高く、大塚くんはそれを見越して送ってくれたんだろう。高い自己回復能力を持つりゅう族だとしても治すのには体力も気力も必要だ。意識を手放しているうちに状況はどんどん深刻になる。いつ正気を失うかわからないからね」


<コメント>

:そうやん! りゅう族の呪いもあった

:その中でこれだけのことを?

:インドの奴らは助けられたくせしてまだ被害者ヅラしてるのか

:これは流れ変わってきたなぁ

:イケドラはもっと誇っていい!

:むしろアキラさんて呼ぼうぜ

:イケドラだなんて固有名詞で括っていい存在じゃねーぞ

:それな

:俺たちの国もワンチャン間に合わなかった可能性もあったからな


「いやー、美談だねぇ」

「実際のところ、あれをナーフされた状態でクリアするのは無理よ?」


 母さんが苦言を呈してくる。

 サルバさんも同調していた。

 ローディック師に関しては「呼ぶゲスト間違えてないか?」と言わんばかりの表情だ。

 そこはほら、人類代表として、ね?


「そう言うと思って、熟練度と成功率をナーフされてないエクストリームモードも導入してあるんだ。やってみる?」

「そういうの待ってたわ。サポーター役は飽きちゃった。本人のスペックで戦えるのかしら?」

「うん。その代わり登場モンスターは一撃でこちらの体力を削り切る攻撃力を有しているけどね。そこら辺調整してないから本当に一撃で終わるよ」


 ブレスなどの面制圧されたら一巻の終わりだよね。


<コメント>

:まさしくエクストリームってか

:一乙モードとか呼ばれそう

:普通にCに上がったばかりのやつがBの攻撃耐えられる時点で優しかったんだな

:普通に無理ゲー難易度なのに、優しく見えちゃう不思議

:アキラさんの代わりに凡人の俺らが入って大丈夫なわけないやろ!

:ほんそれ

:それでも挑戦する人がいるんやろうなぁ

:クリア時の報酬は?

:あ、それ聞きたい


「一律20万にゃんだよ。けどモードにごとに報酬が出されるから、別モードで優勝すれば一気に40万にゃん獲得できる。当然本戦には僕は参加しない」


<コメント>

:エクストリームクリアでも20万にゃん?

:もう一声!

:ほとんどが縛りゲーみたいなものだしな

:ノーマルですら無理ゲーなのに

:でも先輩が参加しないなら、まぁ


「これは国単位で支払われます。各地域ごとじゃなくて悪いけどね。それと月一更新。翌月はまた違うハイスコアラーに贈呈されるので前の月で上位ランキングには入れなかった人も期待していいよ」


 一位は20万にゃん。

 二位は10万にゃん。

 三位は 5万にゃん。


 と区切って支払われる。

 それで何を買うかはその人の自由ってね。


 僕たちはあくまでも専用通貨の発行と、それで買えるサービスの提供しかしない。


 あとは人類の皆さんの良識が問われる問題だ。

 どこかを一方的に贔屓するのではく公正に支払い、サービスすることで中立を維持する算段だ。


 国が広すぎて上位ランカーが三人しか選出されないのは不公平だ?

 インドとかアメリカとかは広いものなぁ。

 でもそれで今まで旨い思いしてきたでしょ?

 強者の特権を振り翳してきたはずだ。

 だから後出しジャンケンには応じないことにしている。


 もう僕は自由だから。

 誰の指図も受けないぞ☆


<コメント>

:あ、それなら

:ワンチャン俺らにも希望はあるか

:政府が勝率維持しろとか圧力かけてきそう

:言うて美容ガチのお金持ちが専属のゲーマー雇い入れるやろ

:普通に使い捨ての転送陣が1億で買える!

:にゃん=いくらになるかだよな


「それは僕の方では何もしない。どういう価値をつけるかは君たち次第だよ。国土の大きい場所では数億円規模になるかも知れないし、国土の小さい場所では便所紙のごとく浪費されようともね。僕はそこに一切関与しない。発行して、報酬を渡すだけだ。後輩、これも国のルールに書いてくれるかな?」


<コメント>

望月ヒカリ:はーい

:ノリが軽い

:こんなに軽くルール決めんな

:いや、でもこれを決めとくのは大事だよ

:中立って意外なところで崩れるから

:金に靡くようじゃ中立はやってられんしな

:豊かな国力あってのものでしょ

:それなー


「新興国にそんな国力あると思う?」


<コメント>

望月ヒカリ:あるのは技術力と暴力だけですからねー

:水と油みたいなものやん

:それをまとめてマヨネーズにしたのが先輩なのよ

:マ ヨ ネ ー ズ w w w

:言い得て妙

:実際やってることはすごいからなー

:いつでも俺らから便利機能奪えるぞって奴らが国力無いは笑う

:それは国の力じゃなく先輩個人の力や

:先輩個人の力つよすんぎw


 そうだよ。

 けど僕はか弱いにゃんこドラゴン。


 か弱いにゃんこドラゴンてなんだ?

 まぁともかく。

 僕個人は弱っちいけど科学力と愛らしさを武器に地上に安寧とダンジョン世界の統率を測る力を有している。

 それは今後とも活用していく所存である。


 ちなみにエクストリームモードは死屍累々だった。

 僕はナワバリまで行けたけど、コアパパの威圧に屈してダウンしたよね。

 それまで即死攻撃なのはもうズルじゃん。


 調整したの誰だよ。

 僕だよ!(ガチギレ)


 これは当分クリア者出ないだろうなぁ、と高みの見物を決め込んだ。


 エクストリームモードは本人のスペックで戦える計算上、アイテムの持ち込みは禁止!


 そんな状態でクリアできたんならその人はもう勇者だ。


 クリアできるもんならしてみろという挑戦状でもあるけど、まぁ別にこっちは報酬を用意して支払うだけでいいからね。

 気楽なもんである。


 結局、支払いを渋って購入されない方が都合が悪いのだ。

 今はまだ、時間稼ぎとして支払いは渋っているけどね。


 準備が整い次第解除……するのもつまらないな。

 当分はそこでの仕入れで、順次違うイベントを開催する感じでいいか。


「はい、そんなわけでですね。今日の配信はここまでです」

「皆さん、これからも先輩とにゃんにゃん王国の活躍をご期待くださいね!」


 あ、後輩こっち戻ってきた。


「そういえばレシピ公開してなかったな」

「そこはサブスク的なもので公開でいいんじゃ無いでしょうか?」

「うーん、それだとネタが持たないぞ?」

「そっちで公表したのを、順序公開していけば?」

「ああ、サブスクで見てる人は知ってるけど、支払ってない人は知らないレシピの公開となるわけか。支払うにゃんは?」

「月々1000にゃんほどでしょうか」

「安いなぁ」

「それを安いと思うかどうかは各国の国土にかかってくるでしょうが」


<コメント>

:十ヶ月でむくみ取りポーションが買えてしまう金額や

:安いと思えるかはどれほど『にゃん』を稼いでるかによる

:でもそれ目的に観にくる錬金術師も多いし

:今じゃ圧倒的に美容ガチ勢が上回ってるから

:レシピ公開されてるのに未だ安定供給できてないのがおかしい件

:おかしいのは先輩の技術力です

:超濃縮ポーション品質Sを目隠しで作れるようになるまでの熟練度は?

:200〜

:一見さんお断りってレベルじゃねーぞ!

:そんな相手と同僚になったら俺でもアキラさんのようになってしまうわ

:俺も

:ワイも

:だからって犯罪を犯していいってわけじゃ無いけどな

:そうなのよ

:ある意味人生狂わせた第一人者でもあるわな


「と、いうわけでレシピの公開はにゃんにゃん王国にサブスクしてくれる人限定になりました!」

「ある程度発表し終えたら配信の方もしますのでー」

「以上、今日はちくわ大明神に全てを持って行かれた先輩と?」

「その設定をした後輩でした!」

「シーユー!」


<コメント>

:乙

:乙乙

:今回も情報盛りだくさんでしたー

:なお、アーカイブ化はされない模様

:草

:お前らの切り抜きにかかってるんだぞ?


「あ、今回の切り抜きは一人当たり5分までと制限させてもらいます。たくさんの切り抜き師のご参加をお待ちしてます!」


<コメント>

:は?

:は?

:は?

:は?

:は?

:は?

トール:は?

:は?

:は?

:は?

:あの情報量で?

:番組時間は?

:あ、消えてる

:逃げるの早いな

:本当に消えちゃった

:なんでここのログだけ残ってるんだよ!

:俺たちの戸惑う姿で一杯やるためか?

:クズゥ!

:後輩ちゃんの技術力も頭おかしいんだよな

:それ

:先輩をうまいこと隠れ蓑にしてる

大塚秋生:ちくわ大明神!

:なんだ今の

:なんだ今の

:なんだ今の

:なんだ今の

:なんだ今の

:なんだ今の


 以降、同じ書き込みが延々と続いた。

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