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第100話 先輩、発表する

「どうもー、最近6つ子のパパになった先輩とー?」

「それを産んだ後輩による錬金ちゃんねる、始まりまーす」


 そんなわけで、準備が整ったので配信開始。

 前回から一ヶ月くらい開けてるわけだけど、いい加減レシピに進展があると信じて、今日はレシピ公開日とする。


 まだ熟練度が上がってない?

 それは君たちの責任で僕には関係ないよね?


 というか、全員がその熟練度に至るのを待ってたら、加速度的に増えて、研究をした僕の産廃レシピの発表場所がなくなってしまう。

 まだまだ公開したいレシピはいっぱいあるんだ。

 他人の熟練度上昇を待ってられるか。

 ここで発表するね!

 ぐらいの気概を持って始めた。

 後悔はない。


<コメント>

:詳しく

アメリア:は?

美作あかり:わーおめでとうございます

大塚秋生:ごめん、なんて?

小早川晶:ここは祝うところよ、秋生

:誰にも何も伝えてないのかよ

:いつもの

:まぁ事実的な百合婚だし

:両方その気になれば卵を埋めるもんな

:埋めるな、産め

:誤字じゃんか

:その誤字で勘違いする人出ちゃうだろ

:爆速で流れる誤字を追える人が?


「いまぁす!」

「今回から少々の遅延をログにかけさせてもらってます。今まで打ち込んで即反映していたわけですけど、おばあちゃんでも目で追えるような速度になってますね」


<コメント>

:余計な機能サイレントでつけるな

:これがサイレント修正ってやつか

:サイレント修正は告知しないから違うぞ?

:なんでそんな設定にしたの?


「うちの子供たちが読んで学習するためですねー」

「ねー」


<コメント>

:え、まだ赤ちゃんだよね?

:違う、卵

:おそらく一週間くらいで孵化する

:そして生まれてきた子は15歳くらいの見た目をしている

:なお、性能もそれくらいある模様

:あ、そうか

:にゃん族は戦士を増産するためにすぐにそれくらいできてくれなきゃ困るからか

:人間とあまりにも違いすぎる生態系

:俺でなきゃ見逃しちゃうね

:俺も見逃してた

:私も

:おいどんもでごわす

:ワイともそう思います


「オヤジ、ワイトってなんだ?」

「さぁ、なんだろうね。コメント欄はそのままの意味で受け取らない方がいいと思うぞ」

「そっか」

「今のは三女の真矢ちゃんですね。ちょっとヤンチャな感じで可愛いですよね」

「僕は育児してないのにぐれてるって方がショックでかかったんだが?」

「個性です。みんな似たり寄ったりの顔ですから、これくらい強い方が覚えやすいですよ?」

「そうかなー?」


<コメント>

:なるほろ

:こうやってたまに参加するのね

:立ち絵まで用意されてるの周到で笑う


「今、虫ケラが我に嘲笑をしたように見えたが。貴様の差金か、愚物」

「こら、神輝。お父さんに愚物っていうのはやめなさいって言ったでしょ!」

「ふん、まだ父と見定めてないからな。母がそこまでいうなら今回は大人しく引き下がるが。そう長くはかかるまい」

「草」


<コメント>

:なんやこいつ

:めっちゃ尊大

:俺様系かよ

:先輩も苦笑してるじゃん

:この二人の間から、どうして?

アメリア:こいつムカつくなぁ、ぶっ飛ばしていいか?

ローディック:私もムカついたわい、先輩に愚物であると?

コーディ:世の中を知らないガキなんてこんなもんさ

:偉人たちは先輩に出し抜かれてるからなぁ

:それを踏みつけられたら誰だってキレる

:喧嘩を売る相手を完全に間違えたな

:まぁ先輩はこんなスタンスだから

:見た目でも舐められてる件


「まぁ、貴様も11人いるからな。そこだけは高く評価している。だが、母を泣かせるようなことがあれば我は容赦せん。あまり不快にさせるなよ?」


<コメント>

:お、これは

:デレた?

:もしかして、ただ口調が荒いだけで根っこは優しいのか?

:ヤンキーが猫拾っても過去の罪は帳消しにならない件

:性格で損するタイプかー

:これは捗りますね

:二人出た、あと四人か

:最初にぶっ込みをかけたのはヤンキー少女に俺様少年

:どんな子が出てくるか気になりますねぇ


「え、別に自己紹介とかさせないよ?」

「そうですよ。なんで紹介する前提なんですか? たまに顔出しますけど、その時に紹介すればラッキーくらいに思っててください」

「そうそう、このチャンネルはあくまでも錬金術師の育成を後押しするためのもので、うちの家族団欒を反映させる目的は持ってないから。そこ、勘違いしないでね」

「では次のニュースを発表します」

「おねがーい」


<コメント>

:草

:それもそうだけど

:序盤からクセの強いの出しといて、あとはシークレットなのかよ

:そりゃ、配信に生活空間映すのは御法度でしょ

:なお、先輩たちの拠点はもう割れてる模様

:誰も出入りできないVR空間な

:出入りはできるよ、大量の『にゃん』を支払えば

:まだそこまで出回ってない新通貨じゃん

:日本の錬金術師がんばれ

:今は完全に海外に出遅れてるからなぁ

:こんなに優遇されてるのに、どうして……?

:国が優遇してくれないからだぞ♡

:日本国オワタ/(^o^)\

:もう俺らが錬金術師になった方が早いまである

:早くはないよ

:熟練度100の壁が高すぎる

:他職から乗り換えは本当におすすめしないぞ

:まず素材の購入費で全財産が消えるところからスタートや

:借金を抱えて成長を感じる、それが錬金術師

:楽して稼げてたら苦労はしないのよ

:なお、成功確率というのがありまして

:全財産投入して、全部失敗は普通に起こり得る現実

:大丈夫、熟練度は上がるよ

:なお、上がったところで成功率の上昇は微々たるもの

:ほぼ執念で取り組んでるんだぞ、世の錬金術師は

:先輩がおかしいだけ定期


「世の怨念が聞こえてくるようです」

「ははは、こんなもん笑い飛ばせなきゃ錬金術師としては将来見込めないぞ? 大体素材なんて買うから高くつくんだ。なんのために『炸裂玉』のレシピを渡したのさ」

「あれは敵対モンスターを消滅させるためのものですからね。それに価値を見出そうとする浅はかさが熟練度停滞の原因かと思われます」

「それに、作りすぎちゃったら『溶解液』で金属に加工! ジャンクに持ってけばそこそこの金額が回収できるって寸法さ」

「すでに序盤で金策に行き詰まった時の道は示していたんですけどね。ここでお金がないと嘆かれるとは思ってみませんでした」

「特に今100の壁で詰まってる人の熟練度って90は超えてるわけでしょ? それで金属作ったら一体どんな金属が出てくると思う?」

「さぁ、私は試してないですね」

「ずっと前に放送した金属が目の前に現れた時、人は成長を感じると思うんだ」


<コメント>

:ちょっと急用思い出したわ

:俺も

:どこかで牛のフン取り扱ってなかったか

:雑草も結構な数必要だ

:あー、清水がもう売り切れてやがる!

:くそ! 他のショップ回るぞ!

:だから買おうとすんなって

:これが現地調達を怠った錬金術師の末路か

:今が乗り替え時ってこういうことなのかもな

:毎回ここで重要情報開示するから、探索者たちがこぞってその商品を抑えるんだよな

:潤う所得

:なお、どれもこれも中間素材としての価値が皆無な件

:全部嵩張る上に、素材要求数が高くてな

:潤うのは酪農家の懐だけじゃね?

:それ

:むしろ分なんて余るほどあるからな

:そこに需要ができたら無料回収どころか金額つけて売り出すぞ

:その光景が目に見えるようだ

:まぁ、溶解液なんて一回作ったらもう必要ないけどな

:それ

:ここで欲を掻くとその皺寄せが全部自分に向かうの、最高に先輩のレシピって感じがする

:あー(苦笑)


 なんか酷いことを言われてるけど、ここで発表されてるほとんどがそういうレシピって事前に発表してるんだけど。

 もしかして記憶にない?


「なんだか大変なことになっちゃいましたね(ズズッ)」

「君は随分余裕そうにお茶を飲むね」

「だって他人事ですもん」

「まぁなんにせよ、次のニュースだ。先日りゅう族のナワバリで事件があったのを知ってるかな?」

「先輩、初出です」

「まぁそうだね」


<コメント>

:なんで聞いたし

:間者が入り込んでれば知ってるかなって鎌掛けか?

:Sランク探索者はナワバリ付近まで行けるんだっけ?

:バーサスの上位は探索者定期

:スペアがあってようやくって話だろ

:近づけるけど、気の荒い親衛隊にコロコロされる模様

:魔境で草

:ナワバリの奥までは知らないんだよなぁ

:先輩からの供給があって初めて理解を示せたようなもんだぞ?

:あれ、そう考えると先輩の功績デカくね?

:でかいよ

:なんでそこらへんのVみたいに扱われてるのかわからんくらいの傑物だぞ

:世界の権威なんだよ

:あまりにも日常風景の中に映っちゃいけないものが多すぎるだけで

:雑談まじりに血清を作る男

:ほんの15分でインドを救った男

:武力だけあっても、誰もあれを救えないんだよ

:なんで先輩って舐められてるのか、これがわからない


「それは僕にもわからないことだな。それで事件の内容だけど」

「はい、先輩が敵陣営に攫われた件ですね」

「そう、それ」


<コメント>

:は?

アメリア:は?

:は?

:は?

:コアパパは大丈夫そう?

ミザリー:ダメそう

大塚晃:流石に地上進攻まではしないみたいだから大丈夫だ

:ほっ

:いや、全然安心できないが

:むしろなんで先輩はそこまで余裕なんだよ


「なんでって、スペアがあるからだが?」

「なんなら敵陣営の懐に潜って、新素材だーって浮かれてるのが先輩です」

「敵の巫女にスペア配る前提で素体確保したもんね。さすが僕だ」

「それでですね、今回の事件の解決を見越して、にゃんにゃん王国では第二回添い寝杯の開催を決行しようと思いまーす」

「イエーイ、ドンドンぱふぱふ」


<コメント>

:あまりにも軽い対応

:え、このタイミングで?

:これは流石にリスナー置いてきぼりだろ


「もともと、ただのニュースと企画の発表でしかないので、そこにリスナーの対応は含まれてないよ」

「ですよねー、今起こったこと、それから起こそうとしてることの発表でしかありません」

「まぁ、にゃんにゃん王国としての催し物だね。悪いけど、今回はりゅう族さんかという意味合いで、地上人の参加はNGとさせてもらうよ。イベントとして企画はするけど、その本質は検証だ。ここいらでりゅう族のスペックを測っていきたいからね」

「無事にスペア確保まで行けたからの発表です」

「と、いうことで本題のレシピ発表に行くよー」

「イエー」


 後輩が手を叩く。

 僕もノリノリで発表した。

 けどコメント欄は全く違うことを話題にしてコメント数を加速させた。

 おい、なんだよ。

 せっかく難易度100越えのレシピの公開だぞ?

 もっと喜べよな。

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