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ケビンの書~真実・3~

「………………!」


 コレットがナシャータに指を指して、口をパクパクさせてる。

 まぁ急にナシャータが出てきたら、びっくりしてそうなるか。


「コレット、落ち着くんだ。息を整えろ」


「――っ……ふぅ~はぁ~……」


 グレイの奴はやっぱり全然動じてないな。

 俺の知っているグレイとイメージが合わんなー。


「あ~……なんじゃ。昨日ぶりじゃな、あははは……」


 何のんきに挨拶をしているんだか。

 今はそんな事なんていいから、早く手紙をグレイに!


「そうだな、俺は会いたくはなかっがな。で? その鼻につけている洗濯ばさみはなんだ?」


「これには色々と、ふっかいふっかい訳があるのじゃよ……」


 ナシャータが一つ星の奴をすごい睨んでる。


「? 何か俺を見てるような気がするっス」


「……ああ……そういう事か……」

「……あ~……なるほど……」

「……ですな……」


「え? え?」


 当の本人は分かっていないようだが、周りは理解したようだ。


「まぁそんな事よりも、ふぅー……っ俺が時間を稼ぐ、お前たちは今すぐ脱出を!」


「っはい!」


『あっ! まずい!』


 コレット達に脱出されると、色々と取り返しのつかない事になってしまう!


『ナシャータ! コレット達を止めろ!』


「え? ……あっ! お主等、ちょっと待つのじゃ!」


「おっと、お前の相手は俺だ!」


 おい、グレイ! そんな格好をつけなくていいよ!

 頼むから邪魔しないでくれ!


「転送石――」


『阻止しろおおお――』


「――っ! グラビティーフィールド!」


「――起どっ、きゃっ!?」

『――おおっ、ぐへっ!?』


 なっなんだ? 急に体が重くなって、地面にたたきつけられたぞ。

 この中で唯一立っているのはナシャータのみだ。


『……ぐぐぐ! 駄目だ……全く、動けん……!』


「……はう~……ごしゅじん……さま……」


「……なっ……なんだ、こりゃ……」


「……体が……重い……」


「……動け……ないっ……ス」


「……です……な……」


「うぐぐぐ……周辺の……重力を……重く……したのじゃ……これは……範囲、魔法じゃから……わしにも……被害が出る……じゃから……これは使いたく……なかった……のじゃがな……」


 お前も対象になるのかよ、自分にも効果が出る魔法って使い勝手が悪すぎる。

 だが、この中をゆっくりといえ歩くとは、さすがというべきか。


「……ほれ……お前は、これを……小娘には……こっちじゃ……」


 ナシャータがグレイへの手紙と、コレットへの手紙を2人の前に置いた。

 これで一応渡せたと判断していいのだろうか。


「……紙……だと? ……くっ……つか……何で、俺は……1枚だけ、なんだよ……」


 だってグレイに対して、そこまで書く事がなかったんだもん。

 今の俺の現状をさらさらっと書いただけだからな。


「……そんなのは……知らんのじゃ……とにかく……読むのじゃ……」


「……こんな……状況で……読めって……か? ……無茶を……言いやがる…………ああ? ……えっ? ……まじかよ……!? ……おい! ……早く、これをとけ! ……ちゃんと……見せろ!!」


「……逃げぬの、なら……」


「……逃げねぇよ……! ……だから、早くしろ……!」


 おお、とりあえずは引き止める事には成功したようだ。


「……わかったのじゃ……解除っと、ふぃ~やれやれなのじゃ」


『――っ体が軽くなった!』


 さっきの体の重さがウソの様だ。


「――ぷはっ! あ~助かった……って、グレイさん?」


 グレイの奴が、俺の手紙を拾い上げて凝視している。

 書いた内容は伝わっているのだろうか? うーむ、心配だ。


「…………」


「あの、その紙に何が……」


 男相手なのに何かドキドキする。


「……やっぱりな……これはケビンの手紙だ」


『!』


 やった! 俺の手紙とわかってくれた!


「えっ! これをケビンさんが!?」


「ああ、この独特な字は間違いなくケビンの字だ。ただ、少しだけ綺麗なのが気になるが……」


『って、おい!』


 少しだけってなんだよ!?

 かなり綺麗に丁寧に書いたんだぞ、それ!


『……いや、今はそんな事より俺の状況を理解して貰えたからいいとしよう』


 いやーそれにしてもさすがグレイだ。

 長年、冒険者を共にやっていた事だけはある。


「でも、ちょっと待ってくれ……俺でもあいつの字はすぐに読めないんだ、解読していかないと……。えーと、何々……」


『……』


 解読って……。

 何か? 内容じゃなくて、字だけで俺が書いたって判断したってわけ?

 なんだろう、わかってくれた事には嬉しいが……ものすごく複雑な気分。


「2人にだけずるいっス! 俺はないっスか?」


「ないのじゃ!!」

『ねぇよ!!』


 何で知らない一つ星の奴に、手紙なんて書かないといけないんだ。


「……そんなに強く言わくてもいいじゃないっスか……」


「……ん? ……んん!? おい! ドラゴニュート!」


 グレイのあの感じ。

 やっと手紙が読めたみたいだな。


「わしはナシャータと言うんじゃがな」


「そんな事はどうでもいい! ここに書かれているのは本当の事なのか!?」


 本当の事なんだよな。

 まさに、事実は小説より奇なりってな。


「そうじゃ……と言っても、お主は信じるのか?」


「チッそうだった、お前には2度も騙されたしな」


「あの~なんて書いてあったんですか? 私の方は全く読めなくて……」


 コレットに通じてないのが悲し過ぎるぞ。

 よし、決めた。この件が終わったら字の練習をするぞ!


「……なら本人に出て来てもらおうか。そこにいるんだろ、ケビン!」


『「えっ!?」』


 ちょっ! そんな急に出てこいと言われても、まだ心の準備が――。


「ポチ! ケビンの奴を蹴り飛ばすのじゃ!」


『はっ!?』


 ナシャータの奴、さっきの仕返しのつもりか!?


「は~い! おりゃ!」


『いや、まっ! ――げへっ! っこら! 蹴るとしてももっと優しくしろよ、バラバラになったら……』


「「「「……」」」」


『……』


 めちゃくちゃ見られている。


「いやいや! 出て来たのはスケルトンじゃないですか!」


 げっコレットがメイスを構えた!


『わー! 待ってくれ!』


 今殴られたら確実に意識が飛んでしまう!


「武器を下げろ。どうやら、そのスケルトンがケビン……って、何で前歯が1本無くなってんだ、お前……」


『え、前歯? ……あ、本当だ! 1本無くなっている!』


 いつだ? いつから俺の前歯が無くなっていたんだ!?


「……歯? ……あっ!」


「どうした、コレット」


「イッイイエ、ナニモ! アハ、アハハハハ!」

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