温室からママが持ってきた果物はリンゴだった。
ーーこの世界にもリンゴがあるんだ。
「エルバ、これはね。いまママが温室で作っている、リリンゴという果物なのよ」
「おぉ、リリンゴか……なつかしいな。若い頃は樽一杯のリリンゴをかじったもんだ」
「パパはリリンゴ大好物ですものね。だから、いまは数は少ないけど、温室で作っているのよ」
このリンゴ、いやリリンゴは、パパのためのリリンゴなんだ。
そうだ。
博士、リリンゴについて教えて。
《野生リリンゴの改良版ーー改良リリンゴといいます》
野生リリンゴ?
改良リリンゴ?
《魔族の森に実る、野生リリンゴは栄養価が高く生食できます。改良リリンゴの詳細は不明》
魔族の森? 不明? 博士の説明がいつもと違っていた。これは改良リリンゴで、ママが魔族の森に実る野生リリンゴを品種改良したものなのか。
《すみません、改良の為に野生リリンゴのタネはありません》
そうなんだ。
博士からリリンゴのタネをもらうには、原種の野生リリンゴを見るか、発見するしかないんだ。
「いま、リリンゴを切るわね」
そう言ってママはリリンゴの皮をむき、薄くイチョウギリにして、みんなのシュワシュワにいれてくれた。
甘い、リリンゴの香りがするシュワシュワを一口飲んでみる。
(美味しい! シュワシュワの中に甘いリリンゴの果実がとけ込み、ほんのりリリンゴ風味になってる)
「パパ、ママ、アール君、リリンゴのシュワシュワ、とても美味しい」
「エルバ様のおっしゃる通り、リリンゴ入りのシュワシュワは美味しいです」
「あら。ほんとうに美味しいわ」
「最高だ! リリンゴ入りのシュワシュワ、うまい! キリチゴ、バナナン、いろんな果物をシュワシュワの中にいれてみたいな」
コメ雑炊に続いて、リリンゴ入りのシュワシュワがウチの定番になった。