「早速入っていきましょう」
「うん! どんなモンスターが来るか楽しみ!」
:あれ? 明日香お姉たんは?( • ̀ω•́ )✧
:どこ行っちゃったんだろう?(*´ω`*)
早速哨戒モードに入ったのだろう。
カメラから完全に気配を絶っていた。
おい、俺の魔力が勝手に50も減ったんだが?
上限が2000万あるとはいえ、回復手段がない今、予定にない出費は勘弁してくれ。
:本がいっぱいあって、図書館って感じ( ・᷄ὢ・᷅ )
:図書館以外の何者でもないじゃん、それ( *˙ω˙*)و グッ!
:三人並んで歩けないのを察して外れちゃったのかな?_(:3 」∠)_
:明日香お姉たん…… ٩(›´ω`‹ )ﻭ
:そして飛び交う魔法( ・᷄ὢ・᷅ )
:危ねぇ、こっちまで飛んできた(*´ω`*)
:あれ? でもみうちゃんたちには飛んできてないっぽい٩(›´ω`‹ )ﻭ
「魔法は全部私が弾くよー」
にゅっと顔だけ出した志谷さん。
顔だけ出すな、怖いだろ?
:ぎゃーーー、首だけお化け!_(:3 」∠)_
:怖い怖い怖い( *˙ω˙*)و グッ!
:ホラー演出やめて( ・᷄ὢ・᷅ )
:今ちょっと漏らした_(:3 」∠)_
:オムツ履いてきた!(*´ω`*)
「明日香お姉たん! すごく助かるよ!」
「むしろこんなことぐらいしか出来ないけど」
「それがここではすごく役に立つと、みうちゃんはそう言ってるの。今までのあなたがどのように扱われてきたかは知らないわ。けれどここでの評価はかなり高い、自信を持って頂戴」
絶賛何もしてない理衣さんが高評価を述べる。
志谷さんは恥ずかしがり屋なのか、にへらと笑って姿を隠さずに画面に収まるように居座った。
そうそう、勝手に抜けられても編集するこっちが大変なんだから抜けちゃ困るよ。
普通に、そして俺の魔力を吸わずに過ごしてくれ。
飯ならいくらでも奢るから。
どうやら隠密モードは俺以外からも魔力を吸い上げるみたいだな。そして魔法吸収は盾に当たらずとも、志谷さんの近くに飛んできただけで捕食されるようだ。
本人は「今日はいつもより疲れなくて絶好調!」だの語っているが、今まで絶不調だったのは周囲から吸える魔力が
相方さんはマジで志谷さんから離れて正解だったと思う。
理衣さんほどの無尽蔵の魔力とかでもない限り、相手を疲れさすだけだからな、この能力。
それの巻き添えも俺が喰らう感じだ。
もっと離れてもらっても大丈夫ですか?
:よかった明日香お姉たん帰ってきた( ・᷄ὢ・᷅ )
:オムツ履き替えた!(*´ω`*)
:不思議バリアーで魔法も怖くないぞ!( *˙ω˙*)و グッ!
:あれ? この三人魔法耐性高すぎない?_(:3 」∠)_
「初めに言ったように、三人が活躍できるように選んだ場所なので。タンクの志谷さんには文字通り物理と魔法のタンクを。みうは実態のない相手ですが、少しでも手数を増やそうと槍を、理衣さんは他二人の稼いだ時間で魔法を、という感じですね。今回は志谷さんがいるので理衣さんのお守りはしなくていいぶんみうがいっぱい動ける感じです。お得ですね」
:お兄たん、本音出てる( ・᷄ὢ・᷅ )
:この妹大好きマンめ!( *˙ω˙*)و グッ!
:それ以外にもここは狭くてカメラアングルへのこだわりができないとか?(*´ω`*)
:それだ!( • ̀ω•́ )✧
大正解。
一階層は特に狭い普通の図書館だ。
テーブルや本棚が壁になって、空を飛んだり壁抜けできるゴーストタイプなんかにはうってつけの狩場なんだろうなぁ。
だからこそ探索者たちは魔法を連発して少しでも逃げ場を無くそうとしているんだろう。
先に魔力枯渇しないか心配だ。
特に今回は志谷さんがいるからな。
「あ、道に本が落ちてるよ! 元に戻しとことっと」
みうが積み上げられてる本に近づいた。
:ええ子やな( *˙ω˙*)و グッ!
:幼い頃に片づけなさいと教育されたんじゃないかな?_(:3 」∠)_
:教育の賜物やな( • ̀ω•́ )✧
:片付けられない子は、それのなにが悪いのって考えだから( ・᷄ὢ・᷅ )
:お片付けは1番最初に教えるマナーなのはどこも一緒か(*´ω`*)
:お片付けに気がつけてえらいね( *˙ω˙*)و グッ!
「あ、手伝うよ」
「ありがとう、明日香おねえたん!」
:姉妹でお片付け( *˙ω˙*)و グッ!
:仲睦まじいな( • ̀ω•́ )✧
シャッターチャンス! とばかりにフラッシュが焚かれる。
と、その瞬間片付けようとした本の一冊が勝手に動き出した。
浮遊し、パラパラと捲られる頁。
そして描かれた魔法陣からは魔法が発射され、
「みうちゃん!」
「きゃーーー」
ると思った瞬間、ボシュンと魔法は不発した。
そのまま力無く本は床におち、戦闘終了!
「あれ?」
「魔法撃たれるかと思ったー」
「実際打たれてたわよ。あの至近距離でやられたら、他の探索者が怒るのも無理もないと思うわ。本を見るだけで発狂するんじゃないかしら?」
「ほんとだよ。今度からは槍で突いて動かなかったらお片付けするね!」
:お片付けは優先するんだ?( • ̀ω•́ )✧
:かわいい( *˙ω˙*)و グッ!
:お利口さんだね( ・᷄ὢ・᷅ )
:突くときは穂先の付いてないほうでね?(*´ω`*)
:あー、本は高いやつあるから_(:3 」∠)_
「えっ そうする」
コメントに反応するように、急に態度を改めたみう。
お値段が高いと弁償できないと思ったんだろうか。
ここはダンジョンで相手はモンスターだというのに律儀なものだ。
:これは穂先で突き破る気満々でしたね( • ̀ω•́ )✧
:突き破れる本だけが清い本だーとかいうつもりかな?( *˙ω˙*)و グッ!
:どこの暴君だよ、それ(*´ω`*)
そのあと見つけるたびに槍の柄で叩いて動かないかの反応を見ながら整理整頓を心がけた俺たちは、突如として開かれた見渡す限り本、本、本の空間に転送されてしまう。
しかし今までとは打って変わり、広さは段違いだ。
まるで俺たちから距離を置くように本棚が遠ざかっていくような錯覚すら覚えた。
「どこ、ここー」
「こんな場所に連れてこられて、本当に戻れるんでしょうか?」
「噂は本当だったのね」
:噂?( • ̀ω•́ )✧
:世良江の図書館の七不思議のやつかな?( ・᷄ὢ・᷅ )
:黄色い衣の子供の噂?_(:3 」∠)_
:おいバカやめろ( *˙ω˙*)و グッ!
「指定の時間、指定の本棚で、順番通りに本を置き換えると見知らぬ図書館に案内される。そこには世界のアカシックレコードが保管されており、それを見たら人が一生で得る知識以上の情報が流れ込んできて、頭が」
ポン、と擬音をつけて理衣さんが握っていた拳を開いた。
「頭がおかしくなっちゃうの?」
「そう言われてるわ」
「他にも七不思議では子供の声が聞こえてきたって」
:近所に住んでる子かな?( ・᷄ὢ・᷅ )
:図書館は大声でお話ししちゃダメだからね( • ̀ω•́ )✧
:子連れNGの図書館多いよな(*´ω`*)
:そうね、できれば遠慮してほしいわ
混ざり込むメッセージ。
普段から顔文字付きで投稿しているからこそ、不思議と顔文字のないコメントに意識が集中する。
背後から、子供の声が聞こえた気がした。
キャハハ。
一度聞こえ出したら、あちこちから聞こえてくるようになった。
何かを引きずる音と共に、それはこちらを伺っている。
普通なら絶叫を上げる場面で、みうは一切動じずに隠れてるその子の手を引っ張った。
「ねぇ、そんなところに隠れてないで一緒に遊ぼうよ!」
:え?
「え?」
コメントの主は、その子供と同一人物だった。
黄色いレインコートを被った少女が、みうに連れられてカメラの前に現れる。
顔こそ少女のものだが体のバランスが著しく悪い。
顔の位置が右に左にぶれている時点で肉体の作りが人間のそれではないように思う。
「あなた、ここがどこかわかってる?」
しかし理衣さんは気が付いてないのか普通に質問をした。
:えっと?
喋る器官が体に付属されてないのか、こちらのコメント機能を介して語りかけてくる。
なにやら困り果てている感じだ。
それもそうだろう。普通なら発狂もんなのに、うちのメンバーときたらどいつもこいつも神経が図太くて、一向に発狂する気配を見せない。
俺を含めて、である。
:ここは私のお家。あなたたちは迷い込んできたの
:その、私が怖くないの?
「全然!」
「むしろこんなにかわいいのに、なんでそんなオドオドしてるんですか?」
「ええ、あなたみたいなかわいい子だったら歓迎するわよ。ね、陸君?」
「まぁ、仕方ないか」
「と、いうことで君は今日のゲストね? お名前は?」
:ハスター
やべぇ神性が混ざってきてるじゃんよ。
まぁ今更か。
この中には化身もいるし、今更それが増えたところでどうってことはない。
みう達がパニクってるんなら問題ないが、本人たちが受け入れるって言ってるんだから俺が文句を言うのも違うよな。
「ハスターちゃんか! あたしはみう!」
「明日香だよー」
「理衣よ。今日からよろしくね?」
:なんだかわからないけど、よろしく?
その日、俺たちの配信に新しいメンバーが加わった。
逆にコメント機能が全停止を受けるほど、殺風景になった。
どうしてくれんだ、これ。
完全に放送事故だろ。