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第63話 新しいメンバー

 翌日。予定通り探索配信を始める。

 今回は秋乃ちゃんを連れてのアタックなので勝手知ったるダンジョン赤無デパ地下ダンジョンに戻ってきた。


「熊谷さん、またお願いします」


「坊主たちが帰ってこないと張り合いなくてな。相変わらず弱いモンスターしかいないがよろしく頼むぜ」


「クマおじちゃん、ただいまー!」


「おう、おかえり。配信見てたぜ。嬢ちゃんも変わらず大躍進してるみたいじゃねぇか」


「えへへ」


 真正面からの賛辞に、みうも堪らず笑顔を漏らす。


「また、世話になるわね」


「おう、理衣さん。あんたはあんまり強い魔法を使わないでくれよ? またエラーが起こっちまう」


 過剰戦力という意味では前回の炎上系ストリーマーも理衣さんも似たようなものだと暗に示している。


「大丈夫よ、そのための秘策も連れてきてるから」


 理衣さんはチラリと志谷さんを見た。

 熊谷さんは意図が掴めず、首を傾げる。

 じっと見ていたのに気がついて、志谷さんが早速自己紹介を始めた。


「私はお初かな? シャース! 一応赤無周辺を縄張りにしているEランク探索者、志谷明日香だよ! メインチャンネルはフードファイターの方だから探索者としての名前はあんまり売れてないんだけどね!」


「おう、よろしくな。そっちの子は?」


 志谷さんの挨拶を適当に流し、熊谷さんは俺が推してる車椅子の少女を見やった。


「新メンバーです。みうと同様にスキル持ちで、瑠璃さんから許可を得ています。それと喋ることができないので、返事ができなくても気を悪くしないでください」


「許可が出されてるんならなんも心配しねぇけどさ」


「秋乃ちゃんはねぇ、とっても優しい子なんだよ!」


「ほう、嬢ちゃんがそこまで褒める子なんてそうそういねぇな。わかった。おじさんもこれ以上深く聞かないさ。それで、今日の武器と依頼はどうする?」


 竜の潜む藪に手を突っ込む勇気はないと白状した熊谷さんは、いつもの(ちょっと怖い厳つめな)営業スマイルで受付を開始した。


「やっぱりあたしにはこれがちょうどいいかも!」


「エストックか。今日は槍じゃなくていいのか?」


「今日は秋乃ちゃんがいるからね! あたしの俊敏な活躍を見せてあげたいんだ!」


 口でシュッシュと言いながら、みうは素振りの練習を始める。

 かつて同じような状況から復帰したみう。

 秋乃ちゃんの希望になるのだと自らを鼓舞している。


 初めて使っていた頃に比べ、随分と成長を感じた。

 なんだかんだもう数ヶ月。

 すっかり様になってきた。


「私はこれをチョイスしてみました!」


 志谷さんは左に大楯。右手にブーメランを提げていた。


「命中率のほどは?」


 俺は率直な意見を述べる。

 もしこれでみうとかに当てたら放送事故じゃ済まないからな?

 みうが【よく食べる子】で回復できるとかの話じゃない。

 俺はお前を許さない。飯抜きの罰まで考えているほどだ。


「センパイはもう少し私を信用してくれてもいいと思うなー?」


 信用できるわけないだろ?

 前回は初手ダブルシールドとか頭の悪い装備でドヤっておいて。

 それってつまりは武器の扱いにこなれてないって白状してるようなものじゃないか。それが今回とってつけたようにブーメランを選んだ。

 命中率に自信があるか気になるのはきっと俺だけじゃないはずだ。


『軌道は触手で操作できるから平気だよん』


 そこ、しれっと念話を飛ばしてくるな。びっくりするだろ?

 うちの父親や契約相手も俺の都合を一切考えずに念話を飛ばしてくるやつばかりだ。これだから神話生物ってやつは嫌いなんだ。

 しかし触手でコントロールを操作できるなんて便利でいいな。

 俺もちょっと本格的に触手術を習うべきか?


 そんなバカなことを考えながら装備と依頼をサクッと終える。

 今回はリスナー参加型の採掘多めで、他はぼちぼちモンスターの討伐をする感じで開始する。


「みんなー、お久しぶり! みうだよー!」


:こんみうー( • ̀ω•́ )✧

:こんみうー( ・᷄ὢ・᷅ )

:こんみうー( ・᷄ὢ・᷅ )

:懐かしのエストックみうちゃんだ!(*´ω`*)

:きゃわわ_(:3 」∠)_


「理衣よ。今日もモンスターを華麗に一掃してみせるわ」


:理衣おねえたんきた!( *˙ω˙*)و グッ!

:お姉たん、今日は眠くない?( ・᷄ὢ・᷅ )

:お兄たん、お姉たんのお世話いつもお疲れ様です( • ̀ω•́ )✧


「そこ、陸くんは私の専用シェフなんだから、お世話するのは普通なの。嫌々やってるのとは違うのよ。ね、陸君?」


「瑠璃さんから頼まれてますからね」


「ほらみなさい」


 なぜかドヤ顔で、鼻息を荒くする理衣さん。

 お姉さん風を吹かせたい子供みたいな反応にリスナーたちはほっこりした。


「シャース! 続投が決定した志谷明日香だよー」


:明日香おねえたん!( *˙ω˙*)و グッ!

:今日はダブルシールドじゃないんだ?( ・᷄ὢ・᷅ )

:前が見えないからね( • ̀ω•́ )✧

:そういう問題なの?(*´ω`*)


「違うよー、敵が弱いからガードする必要がない場合手持ち無沙汰になっちゃうの! だから私も攻撃に加わろうとしたんだー」


:なぜにブーメラン(*´ω`*)

:謎のチョイス( *˙ω˙*)و グッ!

:魔法使いのいるパーティでわざわざ遠距離武器を?( ・᷄ὢ・᷅ )

:命中率に自信は?( • ̀ω•́ )✧


「先輩とおんなじこと言うじゃん。こう見えて腕に自信ありなんだよね! 遠くのモンスターが見えたら投擲でバサバサ〜って倒しちゃうから見ててね!」


:お兄たん、お世話相手が増えて大変そう( • ̀ω•́ )✧

:いや、多分笑顔だぞ_(:3 」∠)_

:草( *˙ω˙*)و グッ!

:お兄たんはロリコンだからね( ・᷄ὢ・᷅ )


「だれがロリコンじゃい!」


:ヒェ_(:3 」∠)_

:怖い怖い(*´ω`*)

:ロリ神様がお怒りじゃ( ・᷄ὢ・᷅ )


 リスナーたちは愛変わらず謎の連帯感でコメント欄を賑わせていく。


「それと今回は新メンバーを加えてのアタックだ」


 俺は秋乃ちゃんをカメラで映す。

 秋乃ちゃんは申し訳なさそうに微笑むと、ペコリとお辞儀をした。


:車椅子?_(:3 」∠)_

:そんな子ダンジョンに連れてきて平気なの?( • ̀ω•́ )✧


「この子はみうと同じでダンジョンの外にいる方が体調が悪くなるんだ。表の世界じゃ言葉も上手く話せなくてな。だから今日はこの子のリハビリがメインで、みうたちはその護衛を請け負ってくれたんだ」


:そんなことが…… ٩(›´ω`‹ )ﻭ

:みうちゃんもすっかりお姉さんだね( • ̀ω•́ )✧

:通りで理衣お姉たんが張り切っているわけだ( ・᷄ὢ・᷅ )

:明日香お姉たんが身動きを重視した理由がこれってこと?_(:3 」∠)_


 それはよくわからない。


「そんなわけで今日のメンバーは俺を含めたこの五人でお送りします。採掘もあるから皆さんにご協力を頼むかもしれませんが、その時はまたお知恵をお貸しください」


:はーい٩(›´ω`‹ )ﻭ

:はーい( ・᷄ὢ・᷅ )

:はーい( • ̀ω•́ )✧

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