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稽古 1

 二度目の内弟子入門願いを申し出、再度熟考させられた高山だが、両親や会社の了解も取り付け、正式に伊達のもとに入門することになった。残務整理を終えた高山は、伊達の言いつけ通り上京する日を連絡し、約束の当日、これからの住まいとなるアパートに着いた。

 アパートは高山に代わって、事前に伊達が手配しておいた。鍵は数日前に郵送で受け取っていた。

 新居は事務所のそばにある。通いやすいところに住むことで、無駄な移動時間を省くためだ。他の内弟子も同じ趣旨で事務所のそばに住んでいる。

 荷物は午後に届く予定だ。まず部屋の中に入った。6畳1間で、風呂もついている。部屋も思っていたよりきれいで、住み心地も良さそうだ。

「これからここが俺の住処か…」

 感慨深げに思う高山だった。

 だが、本来の目的は内弟子修業だ。普通の引越ではない。思いに浸っている時間はないのだ。

 しかし、そうはいっても自分の夢を叶えるための新生活だ。どうしてもいろいろなことを考えてしまう。そうこうしているうちに1時間ほど経ち、荷物が届いた。

 早速現実が始まった。届いた荷物を箱から出し、とりあえず生活できよう部屋の中を整理した。残りは少しずつやっていけば良いし、もともと大した量はないので、手際よく作業が進み、手の空いた時間に伊達に電話を入れた。

「先生、今朝東京に着き、荷物もだいたい整理できました。夕方、ご挨拶に伺おうと思いますが、いかがでしょうか?」

「分かった。ちょうど今日は一般部の稽古があるので、それを見ていくといい。内弟子修業は部屋の整理やアルバイトがきちんと決まってから参加すればいいので、まずこれまで学んだ流派との違いを理解するため、見学しなさい」

「押忍(オス)。では、6時に伺います」

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