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稽古 8

 次の自己紹介は松池だった。松池はあまりしゃべらないようなタイプで、見た目も飄々とした感じだ。龍田と違って、自分から前に出て行くような性格でないことは、雰囲気で分った。

「松池進と言います。自分は空手ではなく合気道をやっていました。大学では主将を務め、その点では高山さんと一緒です。最初、伊達先生は空手がベースなんで自分には向かないかなと思っていたんですが、武の道はどこから入っても同じようなところに行き着くよと言われ、安心したことを覚えています。実際、先生の動きを見ていると、投げ技などは自分が教わった先生よりも滑らかで無理がなく、本当に自然に行なわれます。これでも空手かな、と思ってしまうほどでした。でも、内弟子としていろいろ教わっていると、十分それも空手の範疇だし、突いたり蹴ったりするだけと思っていた空手の奥の深さを知りました。もちろん、活殺自在のもう一つの柱である整体術のほうにも元々興味があり、武と癒しの両面から学べる今は、最高に幸せです」

 高山は、空手以外の人が内弟子として修行していることに驚いた。だが、松池に言った伊達の言葉と、実際に内弟子として経験した話を聞いて、武の道は空手だ合気道だということではなく、身体の使い方を意識すればいろいろ応用できる可能性があるんだ、と理解した。

 松池の自己紹介の後、最年少の堀田の番になった。人懐っこさは龍田と同じだが、堀田は年が若いせいか、ピュアなイメージが強い。高山のほうをしっかり見て、話し始めた。

「僕は堀田賢といいます。19歳です。高山さんと同じで、僕の場合は高校生の時ですが、やはり伊達先生の本を読み、高校を中退して内弟子になりたいと押しかけました。でも、まだ高校生、未成年ということで断られました。先生から卒業しても気持ちが変わらなければ、もう一度ご両親に相談し、できれば一緒に来てください、と言われました。高山さんの場合は一人で先生と会われたということですが、僕の場合は高校卒業後、父と一緒にもう一度お会いすることになりました。父の前で内弟子のことをいろいろ尋ね、一旦家に戻って再度家族で話し合いましたが、僕の意志が固かったため、両親は許してくれました。高山さんや他の方と違って社会経験はありませんが、活殺自在ということを目指したいという気持ちは誰にも負けないつもりです」

 若いわりにはしっかりした意識と主張する堀田の話に、高山はうなずいた。同時に、堀田が高校生で内弟子を考えたことに驚いた。そして、自分の場合は卒後2年経っての決断だっが、堀田は高校卒業後すぐに入門した、という行動力にも驚いた。

 高山は自己紹介からいずれも個性的で、魅力あるメンバーだと感じた。

 同時に、これからこういう仲間と一緒に稽古をするのかと、ますます期待を膨らませていた。

 その後、2時間以上宴が続き、話は大いに盛り上がった。

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