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稽古 13

 次の日の夜、高山は空手の一般稽古に参加した。前回は見学だけだったが、今回は稽古をさせてもらえることになっていたのだ。高山はこの日の稽古に大きな期待をした。

 最初に見た稽古がこれまでとかなり異なっており、それを今度は実際に教われるのだ。内弟子として入門した高山にとって、これ以上の興奮はない。

 午後7時少し前、はやる気持ちの高山は道場に着いた。出席者を数えてみると、前回よりは少なめの人数だ。初心者は少ない。

「これなら稽古のレベルは上がるかな」

 高山は密かに期待した。

 伊達の道場ではみんな揃って準備運動をやることはないので、稽古前の少しの時間、自分なりに身体をほぐして藤堂を待った。

 高山も股関節の柔軟性を高めるため、開脚を中心としたストレッチをやっていた。

 時間通りに伊達が道場に入ってきた。

 みんな一斉に挨拶をする。

 道衣姿の伊達は昨日と異なり、道場見学の時に見た武道家然とした雰囲気だった。

 稽古が始まる。全員整列し、正座の後、正面に礼。その後に互いに礼をした。

 内容は基本のその場稽古から始まり、移動稽古へと続いた。ここまでは前回とほとんど同じだ。ただ、前回に比べて出席者の平均ランクが上の分、行なう数が多かった。

 約30分、休憩無しで行なわれた。時間的には短いものだが、細かな部分を意識しながら行なう稽古は、これまで使ったことのないところまで使うためか、実際に身体を動かした時間以上の疲れを感じていた。

 思った以上に汗をかいたところで、休憩となった。

 汗を拭きながら高山は、御岳に尋ねた。

「御岳さん、これから何をやるんでしょうね」

「ウチの稽古は毎回違うからね。たぶん高山君のやってきたところでは、多少は違うかもしれないけれど、毎回だいたい同じパターンでやっていたでしょう? でも、ここはその日の出席者や、全体の流れを見て、稽古内容がかなり異なるんだ。前回は人数も多かったし、高山君に全体の雰囲気を知ってもらおうということで、浅くいろいろな稽古をやったと思うけど、たぶん今日は、何かのテーマを決めて、じっくりやると思うよ」

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