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選挙という戦い 14

 選挙戦が始まり、4日が過ぎた。高山と堀田はいつも通り、朝8時には選挙事務所にいた。これまでの4日間を振り返り、何もないことにホッとする部分と、腕の見せ所が無いことに物足りなさも感じていた。

 同時に、選挙戦の様子も気になっており、そういうことも話題になっていた。

「今日で選挙戦5日目か。そろそろ流れが見えてきているんでしょうが、どうなんでしょう?」

 堀田が高山に言った。

「選対本部長に尋ねてみようか」

 高山が言った。

 事務所内で今日の予定の打ち合わせをしている本部長のタイミングを見計らい、2人は声をかけた。

「お忙しいところ、すみません。今、若林先生の状況はどうなんですか?」

「うん。昨日の調査では問題の権藤候補がトップだ。先生は2番手になっている。だが、その差はわずかで、後半戦でひっくり返すことも十分可能だ。残り3日間、よろしくお願いします」

「はい、頑張ります」

 2人は威勢良く答えた。

「それで、これからの選挙妨害というと、どういうことが考えられるんですか?」

 堀田が本部長に質問した。

「まあ、間接的なところでは誹謗中傷のチラシを巻くとか、先生の支持者へ電話をかける、といったことだろうね」

 本部長の言葉に、2人は「自分たちの役割は?」と考えた。

「若林先生に直接何かする、ということは考えられませんか?」

 今度は高山が質問した。

「有り得るね。立会い演説の時、聴衆を装って場を乱すケースだ。野次を飛ばしたりすることが多いけれど、場合によって物を投げたり、選挙によっては候補者を襲ったりする例もあった。今回の場合、対立している候補の評判が良くない分、いろいろ対策は練っておかないといけない。2人に活躍してもらう場面もあるかもしれないので、その時はよろしくお願いします」

 高山と堀田は顔を見合わせた。半分笑みを浮かべたような、そして良い意味の緊張感も走った。

「いよいよ来るかな」

 堀田が高山に言った。

「いよいよ腕の見せ所になるかもね。お互い、心してかかろう」

 そう言うと、本部長に一礼し、2人で今後のことを細かく打ち合わせるため、事務所の隅のほうに移動した。

 若林が権藤を僅差で追っているから、より確実に当選しようと何かしかけてくる可能性が高くなったと考えたのだ。

 今日は選挙も後半にさしかかったため、これまでよりも多くの聴衆が集まることが予想されている。不審者の発見やその防止も難しくなるだけに、より一層気を引き締めようと互いに気合いを入れた。

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