検査が終了した次の日から、治療が始まった。
当日の朝、御岳は病室で看護師がやってくるのを待っていた。朝食は食べたが、あまりおいしいとは思わない。とりあえず、胃に流し込んだ、という感じだ。
それは今日から行う放射線療法に対して、具体的にどういうことを行うのだろうとか、副作用は、といったことが心配だったからだ。覚悟は決めているものの、やはり今から、というと、それなりに緊張する。
そういう思いをしながら待っていると、担当の看護師が部屋にやってきた。他の入院患者の場合、今日は治療を行うわけではない。だからみんな、のんびりした雰囲気だ。この部屋では御岳1人、そわそわした感じになっている。
御岳が移動用のベッドに移る時、同室の患者たちは口々に、心配ないよ、といった言葉をかけていた。御岳は軽く会釈をして、病室を出た。
放射線治療をする部屋は地下にある。病室から地下に移動する時エレベーターを使うが、何か地底の底まで連れて行かれるような変な気分だった。
部屋に入ると別のベッドに寝かされた。周りにはよく分からない機械が置いてある。その仰々しい様子に、御岳はちょっと圧倒された。
しかし、治療は淡々と行われた。
御岳が具体的に動いたりすることはない。それこそ、まな板の上のコイ、といった感じで、ただベッドの上に横たわっていただけだ。時間も大してかかっていない。終わってみれば、何をやったのだろう、といった感じだった。
治療終了後、御岳はここにやってきた時と同様、ベッドで病室へと運ばれた。
病室に戻ってくると、楠田や東が口々に、どうだった、と尋ねた。御岳はただ寝ているだけで、何をされたかよく分からなかった、と答えた。
「だから心配ないって、言っただろう」
楠田が言った。
「はい、そうですね」
御岳は特段、苦しい思いをしなかった分、こんなものかという気持ちも出て、明るく答えた。