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解決 21

 高山は大木の攻撃が中断した時、中段回し蹴りを出そうとした。すると大木が反応し、間合いを詰めようと前に出た。蹴りに合わせてストレートを出すつもりだったのだろう。たしかに回し蹴りは、うかつに蹴ると正中線ががら空きになることがあるので、そこを攻撃されたらKOされてしまう。そのタイミングは十分知っているようだ。

 大学時代、成瀬との異種格闘技戦的稽古の際にも、空手の蹴りのタイミングに慣れてきた時、良い感じでカウンターをもらった経験が高山にはあった。大木の間合いを切ろうとするタイミングやイメージは、それによく似ている。おそらく、先ほどの動きを本気でやっていたら、場合によってうまく合わせれ、KOされたかもしれない。

 そこで今度は前蹴りを出すふりをした。膝を前方に引き上げ、蹴らずに前に置いたのだ。先ほどのような反応はない。直線的な蹴りに対しては、防御や反撃にあまり慣れていないのかもしれない。あるいはTVで放送されている格闘技の中継では、前蹴りはストッピングとしての使われ方が多いため、攻撃としては効かないと思っているのかもしれない。いずれにしても、直線的な蹴りに対する認識が不十分と高山は考えた。

 昔、成瀬とは最初の試合の時のように、構えから通常と異なる形で行う方法もあるが、前蹴りに対する反応の様子から、それを活用しようと考えた。

 高山は構えをやや下げた。腰を落とし、右拳を腰に据え、相手からの上段攻撃をかわしてカウンターの中段突きを狙っている形にした。上段に隙を作ったのだ。

 大木はフットワークを使いながら、高山の様子を見ている。高山はほとんど動かず、榊が間合いに入ってくるタイミングを計っている。しかし、榊はすぐに飛び込んでくる気配はなかった。

 そのまましばらく同じような状態が続いた。

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