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第32話 全人類エルフ化計画

スキル獲得後、ダンジョンに赴く。

軍の制圧力は凄まじかったとここに記しておく。

やはりプロ、対人戦においては比類なき強さを発揮し、ゴブリンなどものの数ではないと言った感じだ。


道中の工程はもはや作業感すら漂っていた。

俺たちはほとんどついていくだけ。

ついていくついでに食事までいただいた。


そこでの食事は質素なものだった。

本当に必要な栄養素さえ取れればいい様な固形物、水分の摂取といった感じ。

そんな人の目の前で我がクラスの担任(引率で来た)桂木はアイテムバッグから取り出した出来立て熱々ラーメンを啜る外道プレイを実行。


みんなの視線が先生に集まっても、心臓に毛が生えてるのか微動だにしなかった。

しまいには凝視する軍のお偉いさんに「どうかなさいました?」だなんて惚ける始末。

保育園で人の嫌がることはしちゃダメと習わなかったんだろうか?

甚だ疑問である。


「桂木先生の教育者としてあるまじき姿に遺憾を示してるんだと思いますよ」

「何!? 俺の行動になんの問題がある!」

「昼間っから酒飲んでる引率とか見たことねぇっす」

「リスナー受けを狙ってたってそれはねぇわ」


おい、木村。ちゃっかり配信すんな。

一応これ国家機密だからね?


食事を終えたらゴブリン掃討に切り替える。

しかしホブゴブリンの登場で雲行きが怪しくなってきた。

やはり体格差の関係もあるのか、実弾兵器の効きも悪くなってきている。

激化するトラップゾーンも頭を抱える要素の一つ。


そこでようやく俺たちにお鉢が回ってきた。

要はスキル使いとしての本質である。

プロの方にお見せするのは恐縮なんだけど、頼まれた以上はやるしかない。


「ではお手本をお見せしますね。風よ、凍てつけ。アイスブレイク!」


岡戸が呪文を唱えると空間そのものが凍りついた様に体感温度が5℃程下がった。

至近距離でくらったホブゴブリンは完全に活動を停止し、汚いオブジェに早変わりである。


圧倒的パワーも氷の彫像になってしまえば活かしようがない。

そんなスキルの可能性に注目してもらい、汚いオブジェは伊藤の剣の錆になった。

死体はダンジョンに放置しとけば勝手に吸収される(千年樹の養分になるらしい)ので、放置して大丈夫だが、殺意マシマシのトラップの方については再び岡戸のアイスブレイクが大活躍。


仕掛けごと凍らせて罠を発動させなくなるなど、スキルの工夫次第で攻略難易度を下げる事が理解できたと思う。


ただ最後の関門(ゴーレム)については「戦車でも無理」との事。

核を打ち込むのが手っ取り早いが、そんな事をすれば近距離で被爆するので実行すべきではないと分かるはずだ。


だから俺たちがスキルのプロとして活躍、見事沈黙化させると大きな拍手をいただいた。

なお、今回の過程で参加した軍隊の皆さんには食後のデザートとしてうちのクラスから「千年樹の実」が提供され、エルフ化させられ世間の矢面に立たされたのは言うまでもない。


せいぜい頑張ってくださいね?


あ、ダンジョンへの転移についてはウチのとーちゃんが立ち上げた事務所を通してからお願いします。

えっ二ヶ月待ちだって?

それぐらい行きたい人が多いんですよ。お偉いさんだからって横入りはダメですよ?

今は一般人が武力を持つ時代なんですから実力行使が通用するとは思わない方がいいですよ。


ちなみにうちのとーちゃんの覚醒スキルは『マネジメント』

スパコン並みのPCがスキルとして取り込まれ、対象への情報を纏めて配信し、且つ厳密に取り締まるマネージャー的存在になった。


なお厳密には俺のマネージャーと言うよりは家族を守るためのマネージャーである。特に仕事先で上司からの圧力が酷く憔悴してたからね。息抜きで異世界に連れてったらそのスキルが生えた。

ちなみに家族旅行だからかーちゃんにも生えている。


かーちゃんの覚醒したスキルは『銀行』

貯金の残高を確認でき、銀行に直接赴かなくても手数料なしで引き出し、送金が即時可能。

複数の銀行、ネット銀行にも対応しており、なんなら仮想通貨も対応している。なお、普通ならば入手不可能な異世界の通貨も『為替』の能力で変換可能だ。レートはその時々で変わる様で、今じゃ金貨=日本円でいくらになるかわかるらしい。


試しに財産の幾つかを与えたら目が飛び出るほど驚いていた。

マナリーフ獲得した時の報酬を人数分で分けて、さらにそのうちの一部でこの驚き様である。一体いくらになったのやら?


ちなみに両親もエルフ化済み。

俺一人だけ奇異の目で見られるのは耐え難いとその姿を変貌させてくれたが……実際は若返りと長寿に惹かれたとかじゃないよな?

そうであって欲しいと思いつつ、俺の家族だからなぁと諦観の念。


こうして身の安全は確立され、本格的に夏が近づいてくる。

夏休みだ!



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