193. 後輩ちゃんは『企画』を考えたそうです
新年を迎え、今日は元旦。昨日の夜は近くの神社に初詣に行き、その間もお互いに手を繋いでいたのだが、そのことが嬉しくて、幸せであまり眠れなかった。だから少し寝不足である。
今日は16時から1期生の公式配信、17時からは姫宮ましろの新年の初演説配信がある。とりあえずディスコードを開き、各ライバーから新年の挨拶が来てるので、それに返事を返す。昨年は事務的に返していたけど、今年は関係性も変わった。みんなからのメッセージを見るたびに心が温まるような気持ちになる。とりあえず1期生にはチャットを送ることにする。
ましろ:「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。今日の配信よろしくお願いします」
リリィ:「明けましておめでとう。ましろからチャットがくるなんて不思議な感覚ね?今日はよろしく」
ひなた:「ね。15時40分には、ひなたのルームに入ってね。ポアロちゃん大丈夫?」
ポアロ:「あけおめ。ことよろ。大丈夫だよひなちゃん」
ましろ:「元日から遅刻したらしばらく言えたのにw」
リリィ:「ディスコード貼り付けたらw」
ポアロ:「おーいw」
ひなた:「新年から変わらないねみんなw」
なんかいつものやり取りが始まったな。これが1期生の空気感なんだろうけど。
「今年は……色々なことに挑戦できるといいよな」
独り言を呟き、そしてふと思う。オレの正体を知ってるのは彩芽ちゃん、玲奈ちゃん、そして1期生。まだ在籍ライバーの半分に満たない。
オレが男だと知っても、他のライバーは変わらずに接してくれるだろうか。そんな不安がよぎってしまう。それでも、オレが目指すのは変わらない。彩芽ちゃんと共にトップVtuberに。そう改めて決意を固めていると、彩芽ちゃんが部屋にやってくる。
「おはようございます。颯太さん」
「うん。どうかしたの?」
「あの……次の『ましのん』の企画……考えたんですけど……」
「え?仕事は休みでいいのに」
「考えてたら……楽しくなって……それで……あの……ごめんなさい」
「いやいや!全然大丈夫だよ。『ましのん』の企画ならむしろ嬉しいし」
オレは彩芽ちゃんが一生懸命考えてくれた企画を聞いてみることにする。それは『Fmすたーらいぶ学力王選手権』というもので、1期生から4期生の1名参加で中学生修得レベルの5教科のテストをやるというものだ。
「どっどうですか……?」
「……うん。面白いんじゃない?あとは誰を呼ぶかだけど」
「出来れば……点数が悪くてもイメージが崩れない人がいいかも……です」
自分の企画が通ったことにホッとした様子の彩芽ちゃんだったが、すぐに心配そうな顔でそんなことを言い出す。確かに、テストで悪い点を取るとリスナーたちからは叩かれてしまうかもしれない。
まぁ……言い方悪いが頭が良さそうに見えない人を呼べばいいだけだからな。元々ハードルが低ければ、逆に点数が高いとイメージもだいぶ変わる。
「それじゃスケジュールとかを確認して、あとで色々考えようか」
「はい」
嬉しそうにして部屋を出ていく彩芽ちゃん。この前のクリスマストークリレー配信でさくらちゃんとコラボした時に、企画のことで悩んでたからな……コラボ出来たのは彩芽ちゃんにとって大きいのかもしれない。
本当に成長したよな。彩芽ちゃんももう先輩だもんな。と感慨深く思いながら、SNSのチェックをしたり、配信の準備をする。するといつの間にか時間は12時40分に近づいていた。
「もうこんな時間か。13時から4期生の配信が始まるな……スタートが4期生とは運営も期待してるんだろうな」
4期生は全員落ち着いてるよな。3期生が若すぎるだけかもしれないけど。オレはそのままパソコンで4期生の配信を観ることにする。