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215. 『姫。妖精の森に潜入します!ゲリラオフコラボ』配信③

215. 『姫。妖精の森に潜入します!ゲリラオフコラボ』配信③




 ゲリラオフコラボは順調に進んでいる。3期生から集めた『双葉かのん』に対するメッセージも好評だ。


「今のところ2問しかあってないけどw次最後だけど大丈夫かのんちゃん?」


「ましろん先輩が文面直しちゃうから難しいんですよwココアちゃんじゃないとほぼ分からないですけどw」


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『それはそうw』

『でも次答えればサインだから』

『頑張れ~』


「……これが最後だからね?頑張って当ててみてねかのんちゃん」


「もちろんです!サインのためなら意地でも答えますから!」


 彩芽ちゃんは配信が始まった時の緊張はない。普段通り……Vtuber『双葉かのん』をみせることができている。だからこそ……この最後のメッセージに意味がある。


「これは『デビューが決まった時のかのんちゃん』についてだね?」


「え?それ最初にやりませんでした?」


「最初のは『初対面の印象』でしょ?まぁ……かのんちゃんなら当てられると思うよ?」


 そう言って最後のメッセージを画面に出す。


『かのんちゃんは普段から意思表示をすることが苦手な子でした。そんなかのんちゃんはデビューが決まった時、『憧れのましろん先輩と一緒なんだよ!今までで一番嬉しい!』と私に向けたあの笑顔は今でも忘れません。慣れない一人暮らしで頼れる人がいるのか心配でしたが、今では素晴らしいFmすたーらいぶの皆さんに支えていただき、毎日充実した生活を送ることが出来ているようで安心しています。これからも素敵な配信を楽しみにしています』


「え……あの……その……」


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『これって……』

『姫のサプライズじゃね?』

『まさかの姫のドッキリ?』


 彩芽ちゃんはリビングにいる両親の方に振り向く。そこには笑顔で見守るお母さん。そして真っ直ぐ彩芽ちゃんを見るお父さんの姿。


「心配してくれる人がいるのは嬉しいことだよねかのんちゃん?あのカレンダー見てみて?赤い丸があるでしょ?あれね……かのんちゃんが雑談配信した日なんだって。応援してくれて嬉しいよね?」


「……。」


「せっかくだから、かのんちゃんからこのメッセージを送ってくれた方に気持ちを伝えようか?」


「でも……あの……」


「かのんちゃんなら出来るよ。……『双葉かのん』なら」


 彩芽ちゃんの顔は涙でぐちゃぐちゃだ。でも、その涙は悲しみのものではない。喜びの涙。彩芽ちゃんはご両親に深くお辞儀をする。そしてそのまま画面に振り向き自分の気持ちを話していく


「……ずっと迷惑かけてばかりでごめんなさい……私のこと……心配してくれてありがとう。でも……安心して。私……Vtuberのお仕事……『双葉かのん』が好きだから、これからも頑張るから……応援してくれたら……嬉しいです」


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『これは感動するわ』

『見習いフェアリーも応援するぞ!』

『かのんちゃんと頑張る!』

『良いものを見せてもらった』


「きっと思いは伝わったんじゃないかな?なんか最後はエモい感じで終わりにしよう。今日はゲリラだったんだけど、みんな観に来てくれてありがとね!それではまた次回の『ましのん』でお会いしましょう!バイバイ!」


 そのまま配信を切る。オレは彩芽ちゃんにティッシュを渡す。その泣き顔はとても可愛らしい女の子のものだった。そして彩芽ちゃんの元に両親が近づいてくる。


「お母さん、ご協力ありがとうございました」


「いえいえ。彩芽の楽しそうな姿が見れて良かったわ」


「彩芽」


「お父さん……あの……」


「……お前が辛くないなら、頑張ればいい」


「うん……ありがと……」


 一件落着かな?なんとか彩芽ちゃんのお父さんに認めてもらえたので良かったな。


「神崎君。彩芽は不器用だが、優しい子だ。これからも困らせたり色々と気苦労をかけると思うが、彩芽のことをよろしく頼む」


「はい」


 こうして、彩芽ちゃんのVtuberの仕事も認めてもらえたのだった。


 それから1週間がたち、いつものようにオレと彩芽ちゃんはリビングで仕事をしている。あのゲリラオフコラボは切り抜きやら、配信のアーカイブで公開されて大きな反響を得ることになった。まぁ当然だけど。


「……恥ずかしいです」


「記念だからいいんじゃない?」


「あの……サイン……書いてもらってません……」


「え?あー忘れてた……。それよりVtuberの仕事が認めてもらえて良かったね彩芽ちゃん?」


「はい……颯太さんのおかげです」


 いつも通り可愛い笑顔をオレに見せてくれる彩芽ちゃん。この笑顔を守れたのは嬉しいよな。


「次は……颯太さんの番……ですね?」


「え?」


「Vtuberの仕事は……認めてもらいました……颯太さん頑張ってください。私のお父さんは……怖いですよ?」


 そして今度は意地悪く微笑む彩芽ちゃん。それって……そういう挨拶ということだよな?まだ早い気がするが……まぁ……その時が来たら覚悟を決めないとな。と思うオレがいるのであった。

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