216. 後輩ちゃんは『打ち合わせ』をします
そして1月下旬。オレと彩芽ちゃんは週末の『ましのん』の配信に向けて企画の打ち合わせをしている。そう、この前彩芽ちゃんが企画してくれた『Fmすたーらいぶ学力王選手権』だ。
ちなみにFmすたーらいぶでは、コラボ依頼はスケジュールを見て、ライバー同士がある程度自由に決めていいことになっている。今回の『ましのん』は公式ユニットなので、複数人呼ぶ場合は事務所からマネージャーを通して許可が必要になっている。
そして今回みたいに問題やら準備が必要な場合は事務所の運営スタッフがフォローしてくれている。ただ今回の企画は彩芽ちゃんが考えたものなので、オレはほとんどフォローをするだけで基本的には彩芽ちゃんが決めている。
「颯太さん。当日の問題が……運営さんからきました……」
「うん。後で確認しよう。参加してくれるライバーさんは決まったんだよね?誰が出てくれるの?」
「はい。1期生はポアロ先輩、2期生はさくら先輩、3期生はココアちゃん、4期生はえるるちゃん……です」
「おお……ある程度予想通りだな……」
とか思ってしまうのは失礼か。せっかく彩芽ちゃんが考えてくれた初企画だから面白くなるといいな。
「そう言えば……4期生は全員出演したかったそうですよ?その中でも特に……八神えるるちゃんのマネージャーさんが張り切ってて。今回選んだみたいです」
「4期生はまだデビューしたばかりだから、企画に参加したりコラボすることで知名度が上がるからな。マネージャーさんも色々大変だな」
「私なら……出たくない……ですけど」
「またそんなこと言って。今はオレがマネージャーだから、ある程度は我慢してもらうよ彩芽ちゃん?」
「えぇ……でも……颯太さんと一緒なら……頑張ります」
顔を赤くしながら承諾してくれる彩芽ちゃん。こういうところ本当に可愛いな。というか……今までも『ましろん先輩』と一緒ならと言ってくれていたか。そう考えると彩芽ちゃんってオレにめっちゃアプローチしてたのか?
でも『ましろん先輩』だとオレなのか姫宮ましろなのか分からなかったからな……それでも彩芽ちゃんの精一杯のアプローチだったんだろうけど。そもそもオレも聞く勇気がなかったしな。
「さて……じゃあ問題の方も確認しておこうか」
「はい」
今回の『Fmすたーらいぶ学力王選手権』に参加するライバーの問題を確認する。教科は国語、数学、社会、理科、英語の5科目の問題で各100点満点。合計500点満点で行われる。内容は中学生卒業レベルだが……改めて確認してみると難しいんじゃないかこれ?
「なんか普通のテストみたいだなこれ?懐かしいな……そう言えば彩芽ちゃんは高卒だっけ?」
「はい……高校卒業して、地元の企業を転々として……今に至ります……はい」
「彩芽ちゃんは成績良かったの?」
「普通だと思いますけど……なんでですか?」
「いや……やってみる?」
そう言うと彩芽ちゃんはオドオドし始める。なんだろう……なんかオレが嫌なことしようとしているみたいな目で見るのやめて欲しいんだが……
「颯太さんも……やるならやります」
「え?いや、オレはいいよ。ほら!これは彩芽ちゃんの企画だろ?」
「む。これは『ましのん』の企画です」
頬を膨らまして怒る彩芽ちゃん。なんかそんな彩芽ちゃんも可愛いな。そして結局お互いの面子のため、テストはおこなわないようにした。
とにかく、週末の『ましのん』配信を頑張らないとな。