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219. 姫は『看病』するようです

219. 姫は『看病』するようです




 オレは配信準備をするまで彩芽ちゃんの看病をすることにする。看病って具体的に何すればいいんだ? とりあえず、水と熱さまシートは昨日用意した。しかし食欲があるかどうか。体調が悪い時は食欲も落ちるしな……


 まぁでも食べないことには薬が飲めないから無理してでもいいから、なにか食べ物を用意しないとな……


「彩芽ちゃん。薬飲まないと、何か食べれる?」


「食欲は……ちょっとあります」


「そっか。じゃあなにか簡単なものを用意するから、ちょっと待ってて?」


 オレがベッドから立とうとすると、彩芽ちゃんがオレの袖を掴む。そして何か言いたげにオレを見つめる。え?何この可愛い子?こんなに甘えてくるなんて可愛すぎるだろ……彼氏として嬉しいけど!


「えっと……どうしたの?」


「お風呂……汗を流したい……です」


「ああ……うん。分かった、準備してくるね」


「はい……」


 そう言ってオレは彩芽ちゃんから離れる。危なかった……あのままだったら、多分オレ理性が保てなくなるところだった……いや、もうすでにちょっと危なかったけどさ?なんとか耐えれたよ。


 その後、彩芽ちゃんがお風呂に入っている間、キッチンで簡単なものを用意する。食欲があるなら定番のお粥でいいよな?消化にいいし、食べやすいし……うん。そうしよう。


 ということでオレはお粥を作り、彩芽ちゃんの部屋に持っていく。


「彩芽ちゃん、入るよ?」


「は……い」


 彩芽ちゃんの声はどことなく弱々しい。相当辛いんだろうな……とりあえずお粥を作ってきたことを話すと、嬉しそうに微笑んだ。どうやら食欲はあるみたいだ。よかった……


「彩芽ちゃんの好きな卵がいっぱい入ったお粥だよ。自分で食べれる?」


「……あ……あーんとか?」


「え?いや……」


 これは彼氏としてやるべきことだ。そしてなにより彩芽ちゃんのお願いを断るわけにいかない!オレはお粥をすくい、ふぅふぅと冷ます。すると彩芽ちゃんは口を開けるが、思ったよりも大きく口を開けて驚いている。でも目は閉じず少し恥ずかしそうにしながら待っているので、そのまま口の中に入れる。なんか餌付けしてる気分だな……可愛いからいいんだけどな。


「美味しい……です」


「うん。良かった」


 彩芽ちゃんはその後、お粥を完食し薬も飲んだ。そして再びベッドに入る。


「じゃあオレは仕事してくるから、ゆっくり休んでね?」


「はい……」


 そしてオレは彩芽ちゃんの部屋を後にして、自分の部屋に戻る。時間は14時を過ぎており、公式SNSから『双葉かのん』の配信休みが告知されていた。


 多くのリスナーから『大丈夫?』『ゆっくり休んでね』『早く元気になって』と暖かいコメントが寄せられる。リスナーさんたちも優しい人たちばかりで良かった……そのまま仕事をしようと、パソコンを開くと、ディスコードでメッセージが来ていた。相手はあるとちゃんとキサラさんからだ。


 あると:「姫先輩。もし大変だったら、あるとお手伝いしましょうか?」


 キサラ:「私、スケジュールあけてピンチヒッターしますか?かのんちゃんの代わりやりますよ?」


 と来ていた。本当に優しい人たちだ。それに彩芽ちゃんは愛されてるな。オレは『ありがとう。でも大丈夫だよ。自分のお仕事頑張って』と返事を送る。そのままSNSに『姫宮ましろ』からもメッセージを送っておく。


 姫宮ましろ@himemiyamashiro

『突然のことでごめんなさいm(__)mかのんちゃんはがんばり屋の妖精さんなので大事をとって休んでもらうことになりました。重い病気とかじゃないから心配しないで。また元気になったら『ましのんてぇてぇ』するから(^-^ゞ今日の配信は1人だけど、かのんちゃんの分まで頑張るのでぜひ観に来てくださいね~!』


 そのあとは、彩芽ちゃんに飲み物を持っていったり色々看病をしてあげた。そして時間は20時50分。今は最終調整も終わり配信まで待機中だ。


「なんか……不謹慎だけど、彩芽ちゃんの看病してて幸せだったな……普段とは違った甘えた感じで可愛かったし。いかんいかん、配信に集中しよう。せっかくの彩芽ちゃんの初企画だから成功させないとな」


 オレは気合いを入れ直して、配信を開始するのだった。

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