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227. 姫は『ずるい』そうです

227. 姫は『ずるい』そうです




 そして翌日。昨日の『Fmすたーらいぶ学力王選手権』の反響やらをSNSで確認しながら、朝配信の準備をしていると、廊下からドタドタと言う足音が聞こえ、勢い良く扉が開かれる。


 もちろんそこにはスマホを片手に握りしめ、寝癖がついたままの彩芽ちゃんの姿があった。


「おはよう。体調良くなったんだな。良かった」


「あっあの……」


「どうかした?」


「切り抜き……上がってて……観たんですけど……」


「うん。彩芽ちゃんの企画すごい反響だったな、もしかしたら公式企画になるかもしれないね」


「それは……嬉しいんですけど……」


 ん?なんだろうか……いつものコミュ障陰キャ女おつみたいになっているが……。


「焼き肉……」


「焼き肉?あー……学力王になったら、ましろの奢りでかのんちゃんと焼き肉ってやつか。ごめん。咄嗟に思いついたからさ」


「私……えるるちゃんと2人とか……しかも歳上なんですよ……絶対無理ですって……」


「いや、大丈夫だよ。相手は後輩だし、そもそもえるるちゃんだけは、かのんちゃん……彩芽ちゃんと焼き肉行きたがってたよ?」


「そう……ですけど……」


 彩芽ちゃんは口をもごもごさせながら、何かを言いたそうにしてはやめている。


 でもまぁ確かに、コミュ障陰キャな彩芽ちゃんがまだ会ったこともない後輩と焼き肉にいくのは気を使うだろうし行きたくないのは分かる。


 しかし、今年は色々挑戦してほしいし、いずれは何かしらコラボしていくことを考えれば、少しでも仲良くなっておいた方がいいだろう。これは先輩として、マネージャーとしてのアドバイスだから。


「せっかくの機会だし、彩芽ちゃんはまだ4期生と会ったことないんだし。それにえるるちゃんから誘ったりするのは気が引けるだろ?これは先輩として誘ってあげようよ彩芽ちゃん」


「そうやって……他の女の子のこと……」


「そんなことないよ。配信でも言っちゃったからさ?頑張ろう彩芽ちゃん」


「言ったのは……颯太さんです……」


「……いや『姫宮ましろ』だよ?かのんちゃん……彩芽ちゃんは親衛隊隊長なんでしょ?」


「その言い方は……ずるいです」


 そう言って頬を膨らます彩芽ちゃん。可愛いな。


「ほら。朝配信の準備するから、終わったらえるるちゃんに連絡しよう。オレも横にいるから」


「分かりました……」


 どうやらOKしてくれたみたいでよかった。とりあえず朝配信の準備を始めることにする。……彩芽ちゃんの決心が揺れると困るな。


「……そうだ。良いこと思いついた」


 そして朝配信が始まる。いつものように雑談を交えながら、ふと思いついたことを話すことにする。まぁ多少強引だが、これも彩芽ちゃんのためだ。


「そう言えば、かのんちゃん元気になったみたい。本当に無理はしないでほしいよね。『ましのん』配信できなくなると困るもんね?」


 コメント

『元気になって良かった』

『配信楽しみ』

『ましのん好き』


「ありがとう。Fmすたーらいぶ学力王選手権の第2回には参加できると思うし。あと焼き肉の件ね。えるるちゃんが学力王になったからさ、『かのるる』で楽しんできてほしいよね?え?ましろが言ってるんだから、絶対かのんちゃんは行くよ?親衛隊隊長だもん」


 コメント

『圧がw』

『姫の言うことは絶対だからw』

『隊長頑張って』


「圧じゃないよwほら、かのんちゃんはゲリラオフコラボの時、ましろがメンヘラでもいいって言ってたしね?『どうしてましろの言うこと聞いてくれないの?』って。もし聞いてくれなかったら泣くかも」


 コメント

『言ってたw』

『メンヘラ姫悪くない』

『泣かないで姫』

『姫の涙は見たくない』


 こんな感じで言っておけば大丈夫だろう。どうせ彩芽ちゃんもリアタイでこの配信観てくれているだろうしな。もしかしたら、えるるちゃんも観てくれてるかもな。

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